11月27日の昼下がり、私は虎ノ門ヒルズのホールで、500人の注目を一身に浴びていた。
わたしの役目は、気鋭の社長2人の対談を仕切るファシリテーター。
でも、いま、壇上には私しかいない。
500人の忙しいビジネスパーソンたちは、The Breakthrough Company GOの三浦崇宏さん、ONE MEDIAの明石ガクトさんに会いたくて、集まってくれた。
その期待を肌で痛いほどに感じながら、私はひとり、マイクを持って深くお辞儀した。
「すみません、ふたりがですね、自分たちの会社のイケてる動画でも流してくれないと出てきたくないっていうんです。それからですね、皆さんの盛大な拍手がないと登場したくないとも言ってまして...。
ちょっと困っちゃってます。
皆さん、わたしのことを助けてくれませんか...???」
遊びじゃねーんだぞ、という声が聞こえてきそうだ...自分の巻き込み力が試される。
スベるか?ウケるか?スベるか?ウケるのか...?
ドキドキしながら顔をあげた。
観客の皆さんは、笑顔で拍手をしてくれていた。
よかった...。この時私は、このセッションの大成功をすでに確信していた。
PR Tableさんが主宰したイベント「PR3.0カンファレンス」でGOの三浦さん、ONE MEDIAの明石さんのトークセッションのファシリテーターを勤めさせていただいた。
500人収容の会場は、立ち見の方が続出する大盛り上がり。このセッション用に用意していた「#三浦VS明石」というハッシュタグは、Twitterで東京エリアのトレンド1位を獲得するなど、記憶と記録に残るセッションになった。
冒頭に書いた登場の仕方は、登壇直前、舞台袖で明石さんから提案があったものだ。
「ハッシュタグも『三浦VS明石』だし、プロレス風に演出しようぜ」
ちなみに私はファシリテーターという立場ながら、お二人の真ん中に座るという異例のフォーメーションで挑んだ。
「南、真ん中座れよ。面白いよ」。これは控え室での三浦さんの提案だった。
テーマは「平成の先へ・・・時代を象徴するコンテンツってどうつくる?」だ。
今思い返すと、この登場シーンが、「平成の先にコンテンツはどうあるべきか」という問いへのアンサーになっていたように思う。
「つくること」と「届けること」
任された尺は80分。座りっぱなし、Q&Aもない一方的なトークセッションとしてはどう考えても長すぎる尺だが、三浦さんと明石さんなら何の問題もないだろう、と最初から思っていた。
実績があって謙虚さがある。メディア・コンテンツ業界で働く人なら、いま注目しないではいられない2人の共演だ。
それでも、一応ファシリテーターとして「トークの軸」だけは作っておきたい、と考えていた。二人のジャズ的な丁々発止に、たった一本、軸が通る。それだけで、聞いている人たちの「納得感」「腹落ち感」は増す。軸があれば、速いトークを聞いていても、自分の現在地を確認しやすいからだ。
提案した軸は、《「つくること」と「届けること」》。
明石さんの著書『動画2.0』の中で再三語られるキーワードであり、カンファレンスの大テーマであるPR(パブリック・リレーションズ)を考える上で、私がいま最も大事だと考えている論点だ。
明石さんは本の中でこんな風に書いている。
「かつての届け方と今の届け方の間には、大きな変化が起きている。(中略)
インターネット(配信)の素晴らしい点は、「作る」ことと「届ける」ことが分断されていないことだ。自分の努力や工夫次第で「作る」パワーがそのまま「届ける」パワーにシフトチェンジする。
いわば、メディアとコンテンツがSPA化する時代なのだ」(「動画2.0」176ページ)
ポスト平成のコンテンツとPRを考える時に、この軸なくして評価はできない。そう考えていた。
同時に、三浦さん率いるGOのキャンペーンが話題になりやすい理由はここにあると、常々考えていたからだ。
(社会的なメッセージを発信しピューリッツァー賞受賞も経験したケンドリック・ラマーの来日に合わせて、国会議事堂・霞が関の両駅に疑惑の「黒塗り文書」を揶揄するグラフィックを掲出したり、大人気漫画「キングダム」を「今一番売れてるビジネス書」と再定義して新刊をプロモートしたりと、GOは話題のキャンペーンを次々仕掛けている。)
トークは、平成に始まり平成で終わった代表的なコンテンツを"教科書"とし、ポスト平成のイケてるコンテンツ作りの糸口を探ることだった。
パンチライン続出...。
コンテンツを「つくって」「届ける」ことを渾然一体に設計しなくてはならないこの時代で、私たちはどんな心得を持つべきか、ふたりからは続々と「名言」が飛び出した。
●「今の時代、いい企画は『事件』か『実験』か『意見』」
三浦さんは、メッセージを伝えたいなら「事件」か「実験」か「意見」に仕立てよ、と提案。情報の洪水が起きているSNS時代。誰もが情報発信ができる、そんな中でメッセージを届けきるにはどんな演出が必要か?
PRパーソンが直面する「自分のメッセージが埋もれてしまう」という課題に、具体的に、明瞭に知恵をシェアしてくれた。
●終わった後も、その人の中で体験が続いていく。それが最高のコンテンツ。
トークが映画「ボヘミアン・ラプソディー」のヒットの要因が及ぶと、三浦さんは「映像じゃなくてもはや体験だ」と評価。
明石さんは「終わった後もずっと、頭の中でクイーンの曲が流れ続けている。ずっとその人の中で体験が続く。それがエンゲージメント。それが最高のコンテンツ」と語った。
もちろん、聞いていた人によって、置かれている立場によって、心に響いた箇所は違うだろう。Twitterで「#三浦VS明石」を見ていただけると一目瞭然だが、あの場にいた方たちが思い思いに、ふたりの言葉を自分ごと化していたことがよくわかる。
さて、私は私で、台本なし・予定調和なしのこのトークの中でたくさんの気づきを得ていた。
大事なのは「Inspiration Per Time」
著書「動画2.0」の中で、明石さんは「映像」と「動画」の決定的な違いについて「IPT」という指標を提唱しつつ、説明している。
「映像から動画への変革において、最も重要なポイントは「情報の凝縮」にある。(中略)短い時間の中に多くの情報を詰め込むことで新しい視聴体験を生み出している。これがいわば、動画の本質を捉える鍵だ。
動画=情報の凝縮がある映像コンテンツ
その映像が動画であるかどうかは
Information Per Time=IPT
によって測られる」(「動画2.0」75ページ)
スマートフォン時代に、細切れでコンテンツを楽しむようになった人々の可処分時間にそっと忍び込むには、IPTが高いコンテンツであることが重要であると。
まさに今回のトークセッションは、80分という超長尺でありながら、IPTがかなり高いコンテンツとしてお届けできたのではないかと思う。
私が壇上に上がったその瞬間から、かなり多くの情報量と期待感が、秒刻みで発信されていた。(と自負させてください)
それでも最後の最後に、痛快な裏切りとして明石さんは言う。
「Information Per Timeって書いたんですけど、Inspiration Per Timeですね」と。
人を楽しませるコンテンツは、見る人、聞く人、受け取る人に、どれだけのインスピレーションを与えられるのか。与え続けることができるのか。
情報が飽和しきったこの時代に、インスピレーションを与えられるコンテンツをつくり、届ける。そのためには、自分たち自身が、コンテンツを作る側の私たちもインスピレーションを感じていなければならないと強く感じた。
数百人のお客さんを前に、壇上にいながらにして、自分が心から何度もハッとしていたという事実。きっと三浦さんと明石さんもときめいていたと思う。
こうして舞台のどちらサイドにいた人もインスピレーションを感じている状態こそが、ポスト平成につくりたい・届けたいコンテンツだと、自信を持って、言いたい。
続きは「ハフトーク」で!
二人から聞きたいこと、本当はまだまだあった。80分間喋り続けたけど、まだまだ足りない。
「つくる」と「届ける」を設計するための具体的な知恵、コンテンツビジネスをどうマネタイズしていくか、世界に通用するコンテンツをつくるには...?
聞きたいことは山積みだ。
というわけで...!
12月13日(木)夜10時から生放送するネット番組「ハフトーク」で、「#三浦VS明石・二回戦」を実施することになった。
当日話しきれなかったことや、新たに湧いた疑問、Twitterでいただいた質問なども積極的にぶつけていきたい。
茶番でもない、予定調和でもない。ロマンと希望に溢れたプロレスの続きを、またど真ん中で目撃することになる。私が感じるであろうインスピレーションを、視聴者の方にもきちんと届けられるよう、入念な調整を進めたい。
観覧希望者は、連絡ください。
「#三浦VS明石、二回戦」をどうしても生で見たい!という方を、数名限定でスタジオにご招待します。せっかくのバトルを、動画や記事でたくさんの人たちに伝えていきたいので、動画編集スキル、執筆経験がある人は大歓迎。(もちろん何かを作らなくてもOKです)
観覧希望者は、①氏名②メールアドレス③電話番号④観覧希望理由⑤同伴者(いれば)⑥過去に作った動画や記事のリンク(あれば)を書いて《marie.minami@huffingtonpost.jp》《yuki.nakamura@huffingtonpost.jp》の両方を宛先に入れて、メールをお送りください。
一緒にプロレスを盛り上げてくれる人、心から募集しています。
皆さん、私のことを助けてくれませんか...???