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2015年09月27日 00時33分 JST | 更新 2015年09月27日 21時08分 JST

世界に称えられた南ア戦勝利後の初戦 スコットランドファンの心模様。

「実はハーフタイムになってもまだ日本が怖くて仕方がなかった。」

「なんで日本を応援するって決めたかって?あんなに素晴らしい試合を見せられたら当然よ」

「日本は今回もキックを選ばないのか?!」

「親戚の子供が日本人のプレーをみてラグビーを始めると言い出したんだ。」

第2戦、敗北。

期待をしていたからこそ、試合の結果をニュースでみると、数字だけで喜んだり、がっかりしたりしてしまう。しかし、目に入った点差だけで「前回は最高で、今回は調子が悪かった」と片づけてしまうのはもったいない。

今回もプレー面については他の記事に譲り、小さな町グロスターがどんなふうに盛り上がり、また対戦相手がスコットランドであったことで、試合会場がどんな雰囲気に染まっていったのか。また、南アを破った日本を相手に、スコットランドファンが序盤どれだけナーバスになっていたのかについて、再び写真とともにリポートしていく。

結果は確かに残念だった。しかし勝敗にかかわらず、今回の試合でもたくさんの美しいものを目にした。ニュース記事で読んだ試合運びやテレビでみたピッチの中の様子だけでは伝えきれない、現地の様子をたっぷりと詰めたつもりだ。

前日は興奮からよく眠れなかった。

朝になってもなんだかそわそわしてしまい。「なにがあるか分からないから今のうちにおにぎりでも食べておこう…」とロンドンにいながら鮭おにぎりを自作して食べるという、陣痛を待つ妊婦のような行動に自分で笑ってしまった。

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この日のロンドンも、9月19日に行われた南ア戦を思わせる快晴。

これもこのあとに同じ喜びがやってくるルーティーンに思えていた。この日、試合会場に向かう日本ファン全員の気持ちは、一様に前のめりだった。

ロンドンから車で2時間程度の場所にあるグロスターは、コッツウォルズにも近い、こじんまりとした街。ハリーポッターのロケ地としても有名になった。前回はブライトンという海辺の街であったのに対し、今回はこんな新緑をこえていく。列車組は、皆同じ時間に乗って試合会場まで向かい、その便は応援列車と化したという。

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コッツウォルズはこんなところ。ハチミツ色の壁が美しい。

南ア戦での劇的勝利を経て、今回は移動中から日本を応援してくれると見られるファンを多く目にすることができ、あたたかな気持ちになった。

前回は、日本贔屓の格好をしている人を見つけると、「殿さま」の格好をしていたり、「浮世絵柄のシャツ」を着ていたりと、お祭り模様の派手な装いであることが多かったが、今回は日本人が購入しているのと同じようなグッズを身に着けている人が多かった。話を聞くと代表者がネットで買い付け皆に配ったのだという。仲間と事前にコンセンサスをとり、日本を応援するというやり取りが彼らの間でされていたかと思うと泣けてくる。

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「なになに、日本からの取材?もちろんさ!撮影してくれよ。いいだろ、このハチマキ。なんて書いてあるんだ?ナンバー1かー!最高じゃないか!」

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「えっ!!まじかよ?!文字がさかさま??うわわわわ。恥ずかしいじゃないか」友達を笑う左の男性も見事にさかさま。

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ショップでも、日本グッズは品薄。さくらのジャージはすでに完売だった。

かつて貿易の街として繁栄した小さな街グロスターに着くと、そこには日本国旗がたくさん掲げられていた。イギリスの定番であるパブに日本国旗を掲げている姿ははじめて見たように思う。

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この日、小さな街がラグビー一色に染まった。日本での試合が予定されている同じく小さな都市が4年後どうなるのかについても思いを馳せた。

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臨時で日本語の案内を掲げるBAR。

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地元のボランティアの人たちもいくつかの日本語を覚え、話かけてくれた。南ア戦のことを口にする人も多かった。

試合会場が近付くと、雰囲気がぐっとスコットランドらしくなった。

日本では、「イギリス」と一言で呼んでしまうことも多く、「イングランド」と「スコットランド」の違いについて意識をする機会は多くないかもしれないが、実は、両者では文化も意識も大きく異なっている。

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友人が「いいスカートですね!」と、声をかけると「違う、これはキルトだよ」と優しく、誇らしく訂正された。これが彼らの正式な民族衣装であり、ラグビーとの関わりも非常に深い。

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こちらも、スコットランドラグビーとはきっても切れない関係の、バグパイプ。この音がするだけでまるでスコットランドに来ているかのようだといっている人もいた。

元来スコットランド人は気さくでオープンな人が多いと言われており、これは私個人の経験だが、ロンドンのBARなどで飲んでいて気軽に話しかけてくる人はたいていスコットランド出身の人だったりする。この日の試合の前にも、「対戦の前に一緒に写真を撮らないか?」というお誘いをたくさんうけた。

緊迫した試合の前には、こんな交流がしばし行われていたのだ。

このように第2戦では、ブライトンの時の雰囲気とはまた大きくことなり、スコットランドの持つ、文化的要素がたっぷりとあった。試合の前後にあるこうした儀式も、ワールドカップの一部なのだと実感できる時間であった。この機にラグビーを愛する英国の人々の文化も日本に伝わるきっかけになれば嬉しく思う。

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普段のスタジアムの様子。

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キングスホルムスタジアムに到着。収容人数16500人と、前回のブライトンよりも小さいスタジアムだ。民家と隣り合わせていたりして、アットホームな雰囲気が漂う。個人的にはとても好きだ。

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会場に入ると「赤」の多さに驚いた。感覚値で日本人が25%くらいはいたように思う。味方が多くて心強かった。すれ違う日本人、皆に声をかけたい気分になった。

一方、スコットランドのファンがどのくらいいたのか……。これが、しばらくの間分からなかったのである。これに関してはのちにその理由が分かることになる。

今回の試合は主に、スコットランドファン、地元グロスターのファン、それから日本ファンで構成されていた。開催が平日だったこと、またロンドン中心部からのアクセスの問題、相手がスコットランドであることでチケット争奪戦が激しかったことなどから、前回よりも本気度の高いファンが多かったように思えた。

ラグビーの応援は両チームのファンが交ざる。つまり隣の席がスコットランドファンであることが当然起こる。席に着くと周囲から挨拶をされた。これがこちらでの観戦習慣らしく、私も彼らにつられて挨拶をした。次回からはこちらから欠かさずしようと思う。また、試合後も、前回私たち日本人が受けた感動を忘れずに、スコットランドファンにおめでとうの声をかけている日本人が多くみられた。

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試合内容については今回も他の記事に譲る。

選手達を尊敬しているからこそ、大舞台での心と身体の動きを私は語ることができない。体験しなくては分からないことが多すぎると思うからだ。

ただし、私から是非とも伝えたい試合中の現象がある。

一体どのくらいいるのか分からなかったスコットランドファンが、「実はやはりたくさんいた」ということがはっきりと分かった瞬間がある。後半トライが決まりはじめ、彼らが勝利を確信しだした頃、独特な発音で唱えられる「スコ~ットランド、スコ~ットランド」という地響きのようなコールが始まった。掲げられる国旗の量もこの機をさかいとして急に多くなったように感じた。この段階になってやっと自国のチームを信じ、いつもの自分達の応援ができるようになったというわけだ。

結果、後半は日本にとって完全なアウェイとなった。

試合後、はっきりとそう告白してくれたスコットランドファンがいた。

「南アとの試合を見て、僕たちも倒されるのではないかと気が気ではなかったんだ。僕らは正直言って前半はとてもナーバスだった。ハーフタイムに入って勝ち越していてもまだ怖くって、勝てる気がしなかったんだ」と。

日本はあのスコットランドのファンにこんなことを言わせ、自分達のスタイルの応援をできなくさせていたのである。また、こちらでテレビ中継を見ていた人の話によると、放送局(ITV)もかなり日本を贔屓した解説をしていた模様。前半終了直後には大昔日本がスコットランドに勝利したときの映像が流れたという。

初戦に勝利して緊張が解けたスコットランドファンは、試合後私たちの元をめがけて話をしに来た。駆け寄ってきたと表現したくなるような人も多かった。

「今回は勝たせてもらったけれど、中3日は辛かったよな。ラガーならだれでも分かることだよ」という話題から話を始め、そのあとには皆、南ア戦の話をした。

その目は心底キラキラとしていて、私たちと同じように、奇跡の勝利に感動してくれていたのだということが疑いなく実感できた。スコットランドのファンから日本の試合を見て親戚の子供がラグビーを始めたいと言っているとラグビー発祥の地で耳にするのは大変感慨深いことだった。

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日本グッズをバッチリと揃えてきていた、地元グロスターのファン。「なんで日本を応援するって決めたかって?あんな素晴らしい試合を見せられたら当然よ。試合後に即決だったわ。」

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「ちょっと少し話をさせて!第1戦の日本は本当に凄かったわ。」「もう、今日だって僕らは本当に怖かったんだ」

つまり、この日のスコットランドファンの心模様は、日本を恐れながら、同時に尊敬していた。かつ、選手の疲労を労ってくれていた。

序盤に自分達の応援ができなかったスコットランドファンの様子、それから、試合後にわざわざ私たちを捕まえてまで話をしに来てくれた南ア戦の興奮を彼らから直接聞き、第2戦にあたるスコットランド戦は、確かに残念な結果にはなったが、これは「勝ち」「負け」のプラスマイナスゼロでは決してなく、第1戦の勝利は、単体として、今日もこれからも賞賛を受け続けていくものになるということを確信した。

しかし、一方でこれは試合に感銘を受けた人たちの中でずっとずっと長く残る、とても長期的なものなのだと私は思う。とても個人的な気持ちのもちようではあるが、次に続く目の前の戦いのために「この栄光」は少しの間だけ忘れてみようと思っている。

大丈夫。感じた感動は、決して消えはしない。

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