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2018年09月11日 12時46分 JST | 更新 2018年09月12日 13時52分 JST

大坂なおみ選手は"日本人"なのか。

どうしても「こういうときだけ......」とひねくれた感情を抑えることができないのです。

大坂なおみ選手
Getty Images
大坂なおみ選手

私の名前は、直美(なおみ)です。日本人の父とチェコ人の母を持つハーフとして生まれた私の将来を考え、日本でも欧米でもポピュラーな名前をつけてくれました。そういえば、私の友人の「なおみ」も外国にルーツを持つ子ばかり。もしかしたら、ご両親が同じような思いでつけたのかもしれません。

 同じ「なおみ」という名前。同じハーフという境遇。大坂なおみ選手の優勝は、私にとってもちろん嬉しいニュースであると同時に、人々がどのように受け止めるのか気になるニュースでもありました。ネットの反応などを見てみると、多くの方は「日本人初のグランドスラム優勝」と盛り上がっていましたが、少数ではあるものの「彼女のような選手を日本人としては認められない」という心ない言葉も目にしました。

後者の意見に胸を締め付けられるような思いをした一方、前者の受け止め方に対しても、私のなかではモヤモヤした複雑な感情が湧き上がってくるのを否定することができませんでした。このモヤモヤの正体は、いったい何なのか。私は自分の気持ちと向き合ってみることにしました。

「いいなあ」と羨望の眼差しを向けられることも多いハーフという境遇ですが、みなさんのイメージする"ハーフ像"にそぐわなければ容赦なく「残念ハーフ」などというレッテルを貼られてしまうことは以前にも書いたとおりです。周囲にガッカリされるというだけでも非常につらいことですが、ハーフであることで被る不利益はこれに留まりません。

日本国籍を有していても「国に帰れ」といじめを受けた経験を持つハーフは私だけではありませんし、不動産を契約しようとしても「外国人の方はちょっと......」と見た目だけで判断され、契約を拒否されることも少なくありません。就職活動に際して、「この履歴書は自分で書いたの?」と疑惑の目を向けられたり、「どうせ日本文化を理解できないだろう」と敬遠されたりという話もよく耳にします。

たとえ日本で生まれ育ち、日本国籍を有し、日本語を理解していても。「ハーフだから」とこうした憂き目に遭うことは日常茶飯事です。

だからかもしれません。大坂選手の快挙に「日本人初」と騒ぎ立てるメディアや世間の反応を目にして、これまで受けてきた偏見や不利益が思い出されてしまったのです。日本国内でハーフが犯罪を起こしたニュースなどでは、「やっぱり外国人だから」などと言われるのに、「こういうときだけ日本人扱いか......」とやや斜に構えた思いを抱いてしまったのです。

もちろん、彼女の快挙に水を差すつもりはありません。歴史に名を残す偉大な選手を破って優勝を飾ったことは紛れもない事実ですし、私も心から拍手を送りたいと思います。また、プレーだけでなく、インタビューなどから伝わってくる彼女のチャーミングで誠実な人柄もたしかに魅力的です。

ただ、この国には「ハーフだから」「外国にルーツを持つ容姿だから」という理由で厳しい言葉を投げつけられ、多くの差別を経験してきた人がまだまだ多くいるのです。そのたびに「この国で私たちは"よそ者"なのか」と悲しい思いをする人々が、私だけでなく多く存在するのです。そうしたなか、ひと目で外国にルーツを持つとわかる容姿であり、日本語の理解も完璧とは言えない大坂選手の優勝を「日本人初」と大騒ぎする風潮に、どうしても「こういうときだけ......」とひねくれた感情を抑えることができないのです。

 大坂選手だけでなく、スポーツ界では外国にルーツを持つ選手が「日本代表」として戦うことがめずらしくなくなってきました。彼らが活躍すればするほど、私たちがイメージする凝り固まった「日本人像」を少しずつ解きほぐしてくれることになるのではないかと期待しています。

 「日本人」とは、どういう人を指すのか。大坂選手の優勝に、一人でも多くの人が考えるきっかけを持ってくだされば幸いです。