小児期に、プリオンに汚染された死後脳由来のヒト成長ホルモン(hGH)による治療を受けた患者が、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病(iCJD)を発症している。このような治療は1985年に中止されたが、CJDは潜伏期間が長いため、新しい症例がいまだ発生し続けている。意外なことに、このようなiCJD患者8人(年齢36~51歳)の剖検研究で、アルツハイマー病で典型的に見られる灰白質のアミロイドβ(Aβ)沈着と、脳アミロイド血管症の特徴である血管壁へのAβ沈着があることが明らかにされた。これらの患者は、早期発症型アルツハイマー病に関連する病原性変異あるいは高リスク対立遺伝子のいずれも持っていなかった。Aβ病変はhGHの投与を受けたプリオン感染者のみに検出されたことは重要である。これは、CJDに加え、Aβ病変にも医原性伝播があることと一致しており、また、hGHに曝露された健常者にも医原性のアルツハイマー病および脳アミロイド血管症を発症するリスクがあるという可能性を示唆している。
Nature525, 7568
2015年9月10日
原著論文:
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doi:10.1038/nature15369
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