プリオン病であるクールー病が風土病となっているパプアニューギニアでの長期的な研究によって、ヒトプリオンタンパク質(PrP)遺伝子の多型の1つ(残基127のグリシンからバリンへの置換)がクールー病に対して高い防御効果を示し、クールー病の流行の間に正の選択を受けたことが明らかになった。
今回J Collingeたちは、異なるヒトプリオンタンパク質を発現するトランスジェニックマウスを用いて、このG127V多型について詳しく調べた。G127V多型がヘテロ接合のマウスは、パプアニューギニアに見られるヒトの遺伝子型と非常によく似ており、クールー病と古典型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)のプリオンに対して抵抗性を示すが、パプアニューギニアの人々が一度も曝露されたことのないウシ海綿状脳症(BSE)由来のCJDバリアントには、ある程度感染した。だが、最も興味深い知見は、127Vのホモ接合マウスが、あらゆるプリオン株に対して完全な抵抗性を持つことである。これは、プリオンに対する防御効果をもたらす、これまで知られていなかった仕組みの存在を示している(M129Vという、もっと広く見られる多型は、ヘテロ接合の時にだけ防御効果がある)。1個のアミノ酸の変化がどのようにしてこのような防御効果をもたらすのかについては、さらなる研究が待たれる。
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Nature 522, 7557
2015年6月25日
原著論文:
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