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2014年10月29日 15時04分 JST | 更新 2014年12月27日 19時12分 JST

企業の不動産管理におけるアウトソーシング活用のすすめ

日々グローバル競争が激化する現在、企業は、強みを発揮すべきコア業務に経営資源を集中することが求められており、そのためには、コア業務以外については、アウトソーシングなどにより、外部資源を活用する必要がある。

Alex Williamson via Getty Images

遅れている不動産管理ではCRE戦略の取り組み準備から

日々グローバル競争が激化する現在、企業は、強みを発揮すべきコア業務に経営資源を集中することが求められており、そのためには、コア業務以外については、アウトソーシングなどにより、外部資源を活用する必要がある。

アウトソーシングを戦略的に活用する考え方は、本業に関わるバリューチェーンの各段階の業務(企画開発、調達・購買、製造、販売・マーケティング等)にとどまらず、経理・財務、人事、IT、物流、不動産など、社内で専門的・共通的役務(シェアードサービス)を提供する本社管理業務についても適用すべきだ。

本社管理業務の中では、ITや物流などの業務においてアウトソーシングが進展している一方、不動産管理業務ではアウトソーシングの活用が遅れている。不動産を重要な経営資源に位置付け、その活用、管理、取引に際し、企業の社会的責任(CSR)を踏まえた上で、企業価値最大化の視点から最適な選択を行う経営戦略を CRE(Corporate Real Estate)戦略と呼ぶ(*1)。

産官学の多様な組織によって、CRE戦略の普及啓発が図られてきた結果、CRE戦略という言葉は産業界に広まりつつあるが、適切なマネジメント体制の下で組織的にCRE 戦略に取り組む企業はまだ少ない。

日本企業は元々自前主義に陥りがちであり、未だCRE戦略に取り組む企業も少ないため、不動産管理業務でアウトソーシングを戦略的に活用するとの発想がなかなか拡がらないと考えられる。

海外の先進的なグローバル企業では、戦略的に不動産管理に取り組む中で、アウトソーシングを効果的に活用するケースが極めて多い。

IBM、インテル、オラクル、グーグル、ヒューレット・パッカード、プロクター・アンド・ギャンブル、マイクロソフトなど、CRE戦略の海外先進事例には3つの共通点が見られ、筆者はこれらをCRE戦略実践のための「三種の神器」と呼んでいる

1点目は、CRE戦略を担う専門部署の設置とIT活用による不動産情報の一元管理により、CREマネジメントの一元化を図っていることである。

2点目は、CRE戦略の重点を不動産管理にとどまらず、先進的なワークプレイスやワークスタイルを活用した人的資源管理(HRM:Human Resource Management)に移行させていることである。

そして3点目が、外部の不動産サービスベンダーを効果的に活用することにより、戦略的業務への社内の人的資源の集中を進めていることだ。施設運営など日々のサービス提供業務は、外部ベンダーに包括的に委託する一方、CRE専門部署では社内スタッフの少数精鋭化を進め、戦略の策定・意思決定やベンダーマネジメントに特化する傾向を強めている。

社内スタッフと外部ベンダーが異なる組織にいながら実質的には一つのチームを形成し、社内スタッフはこのチームをフル活用することで、戦略的業務に注力することができるのである。

海外先進事例の中でも、マイクロソフトは、極めてチャレンジングなアウトソーシングモデルに取り組んでいる。それは「インテグレーターモデル(Integrator Model)」と呼ばれる、外部ベンダーとの新しいパートナーシップモデルの導入だ(*2)。

このモデルでは、元来1アウトソーサーであった企業(米CBREグループ)に、取りまとめ役(インテグレーター)として社内のCRE部門(*3)と一体の存在となってもらい、知見やネットワークをフルに発揮してもらうのだという。

さらに、ビジネスシーンでは競合関係にあるインテグレーターと他のベンダーの間でも、マイクロソフトの目指す目標を共通のゴールとすることで、パートナー関係を構築してもらうのだという。マイクロソフト、インテグレーター、他のベンダーの間には、会社対会社という概念はなく、イメージするのは一つの組織体、運命共同体であるという。まさに究極のアウトソーシングモデルと言えよう。

各々の役割としては、CRE部門の役割は、より戦略的に社内顧客(経営層、事業部門、従業員等)と密接に連携し、ビジネス戦略に即したオフィス戦略を立て、それを実行に移すことであり、インテグレーターの役割は、サービスを提供するベンダーの管理監督、不動産のポートフォリオマネジメント、ソリューションプランの提示をCRE部門と連携しながら推進していくことであるという。

多くの日本企業では、いきなり最先端のマイクロソフトのインテグレーターモデルを導入することは、当然のことながら難しい。まずは、戦略的に不動産管理業務に取り組むための準備を早急に行うべきだ。すなわち、前述の「三種の神器」を整備することが不可欠であり、まず真っ先にCREマネジメントの一元化を図るとともに、創造的なワークプレイスを重視する考え方に改めることが求められる。

このような準備を行った上で、企業がCRE戦略を実践し進化させていくためにはアウトソーシングの活用が戦略的に欠かせないということをしっかりと認識しなければならない。

*1 CRE戦略については、文末の<関連レポート>筆者が執筆したCRE戦略に関わる主要な論考を参照されたい。

*2 マイクロソフトに関わる以下の記述は、山本泉(日本マイクロソフト株式会社)「FM・CRE部門の新しい組織づくりとパートナーシップ」『JFMA JOURNAL』2014 SUMMER №175に拠っている。

*3 マイクロソフトでは、「リアルエステートアンドファシリティーズ(RE&F)」と呼ぶ。

関連レポート

企業不動産(CRE)戦略と企業経営- 総合スーパー大手の事例を中心に-

CRE(企業不動産)戦略の進化に向けたアウトソーシングの戦略的活用

イノベーション促進のためのオフィス戦略-経営戦略の視点からオフィスづくりを考える

CRE戦略の企業経営における位置付けと役割

株式会社ニッセイ基礎研究所

社会研究部 上席研究員

百嶋 徹

(2014年10月23日「研究員の眼」より転載)