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2018年06月01日 12時57分 JST | 更新 2018年06月01日 12時58分 JST

ネイピア数eについて-ネイピア数とは何か、ネイピア数はどんな意味を有しているのか:研究員の眼

なぜ、「自然対数の底」と呼ばれるのか。

はじめに

皆さんは、「ネイピア数」と言われると、「それって何?」という感じだと思われる。「自然対数の底」だと言われると、そういえば、学生時代に対数を習った時に、確かにそんな概念を学んだ覚えがあるな、という方が多いのではないかと思われる。

今後、何回かに分けて、一般的に「e」という記号で表される「ネイピア数」が関係する話題について紹介したい。今回は、まずは「ネイピア数とは何か」について、説明する。

ネイピア数とは

「ネイピア数(Napier's constant)」とは、通常「e」という記号で表される、次の「数学定数(*1)」と呼ばれる定数である。

 e = 2.71828182845904523536......  

これは、無理数であり、「超越数(*2)」と呼ばれているものである。

因みに、円周率の「π」も超越数である。

では、なぜ「ネイピア数」と呼ばれるのか。それは、現在ネイピア数と呼ばれているものについて、最も古くに研究を行ったジョン・ネイピア(John Napier:1550~1617)(*3)に由来している。ただし、ジョン・ネイピア自体は、現在良く知られているようなネイピア数を示していたわけではなかった。

その意味では、欧米ではむしろ、後に述べるレオンハルト・オイラー(Leonhard Euler:1707~1783)に因んで、「オイラー数(Euler Number)」と呼ばれることもある。


(*1) 円周率のπや黄金比を表すφ等、固定され、矛盾なく定義された定数を、数学の算式上に現われる定数a,b,c等とは異なるものであることを明確にするためにも「数学定数」と呼んでいる。
(*2) 超越数(transcendental number)とは、有理数を係数にもついかなる代数方程式の解とはなりえない数(すなわち、どんな有理数 a0,a1,...,an を係数とする n 次の代数方程式 a0xn+a1xn-1+...+an-1x+an=0 の解にもならないような数)のことである。有理数は一次方程式の解であるから、超越的な実数はすべて無理数になるが、無理数 2 は x2 − 2 = 0 の解であるから、逆は成り立たない。複素数(実数を含む)の中で,超越数でないもの(代数的数)は可算個しかなく,この意味で,複素数の大部分は超越数である。
(*3) ジョン・ネイピアは、スコットランドのバロンで、数学者、物理学者、天文学者、占星術師としても知られていた。「対数」の発見者とも言われている。

ネイピア数は何を意味しているのか(その1)

まずは、「ネイピア数」が何を意味しているのか、ということである。即ち、その定義はどうなっているのかという点である。これについては、いくつかの定義の仕方がある。

最も一般的なものは、高校数学の教科書にのっている「連続複利の元利合計」という考え方からくるものである。これは、初めてネイピア数を見出したスイスの科学者で数学者であったヤコブ・ベルヌーイ(Jakob Bernoulli:1654~1705)によるものである。具体的には、以下の算式で表される。

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すなわち、元金1を年利1、付利期間を1/n 年として1年預金した場合、1/n 年毎に利子1/n で元利合計が増えていくことから、1年経つと以下の値になる。

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ここで、n を限りなく大きくしていった場合の極限値がe(ネイピア数)ということになる。

n=1 の時は、  1+1=2

n=2 の時は、 (1+1/2)2=2.25

n=3 の時は、 (1+1/3)3=2.37037

n=4 の時は、 (1+1/4)4=2.441406

n=12 の時は、 (1+1/12)12=2.613035  月利

n=365 の時は、 (1+1/365)365=2.714567  日歩

というような具合で、n が大きくなっていくと、いつまでも値が大きくなっていくような印象を受けるかもしれない。実際には、「連続複利の元利合計」は無限に増大していくのではなく、e という値に収束していくことになる。

なお、年利が1ではなく、xである場合には、

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となり、例えば、年利が1増加する毎に、元利合計額はe倍ずつ増加していくことになる。

ネイピア数は何を意味しているのか(その2)

2つ目は、ネイピア数を最初に「e」で表したレオンハルト・オイラーによるものである。ここに、「e」は、Eulerのeであるとも、Exponential(指数)のeであるとも言われている。

オイラーによれば、eは、以下を満たすような実数a

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即ち 、

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であるとした。

これは、感覚的には分かりやすいとは言えない定義かもしれない。

ただし、この式から、両辺にhをかけて、左辺の1を右辺に移行し、両辺を(1/h)乗することで、

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となることから、結局は(その1)での定義と同じものとなることがわかる。

いずれにしても、この定義が意味するところは、ネイピア数は、「微分に対して指数関数を保存する数」であるということになる。ネイピア数のこの性質により、ネイピア数がいろいろな場面で使いやすい定数として用いられていくことになる。

ネイピア数は何を意味しているのか(その3)

その他に、結果としてeを表すことになる公式から、逆に、eを定義することも考えられる。

1つは指数関数をテイラー展開(マクローリン展開)した式を使って、以下のように定義することが考えられる。

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さらには、ln x を自然対数とした時に、

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となることから、下図のように、グラフy=1/x の 1≦x≦e における領域の面積が1ということになる。よって、逆に、eとは「y=1/x のグラフの1x≦aまでの面積が1となるときのaの値である」という言い方もできることになる。

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なぜ、「ネイピア数」は、「自然対数の底」と呼ばれるのか。

そもそも、「対数(logarithm)」とは何か。これについては、別途の機会に採り上げたいと思う。その中で「自然対数」とは何か、「底(てい)」って何か、と思われるのではないか。「自然対数」については、「eを底とする対数」(*4)と定義されてしまうので、それでは「底」って何だ、ということになる。英語では「base」であり、即ち現在考えている対数の基礎となっているものである。具体的には、

指数関数yax  で 対数関数 x=logay と表現される場合のaのこと  あるいは

yax  であるときに、x=logay と表現され、これを「aを底とするyの対数はxである」

ということになる。

では、なぜこれが「自然」と名付けられるのかと言われると、これが数学の世界において、自然に現われてくるものであるということに由来している。具体的には、eを底とする対数については、①先に述べたようにその微分が 1/x となり、x = 1 における微分係数は 1 に等しくなることや、②単純な積分やテイラー級数で極めて容易に定義できることが、挙げられる。


(*4) 因みに、10を底とする対数は「常用対数」と呼ばれている。

ネイピア数はどんなところで現れてくるのか

それでは、このネイピア数は、具体的に、我々の身近な数学的な問題の中でどのように現われてくるのか。さらには、実際の社会における自然現象や経済活動等の表現や分析の中で、どのように使用される形で現れてくるのか。これらについては、次回以降の研究員の眼で紹介していくこととしたい。

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(2018年5月1日「研究員の眼」より転載)
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