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2018年04月16日 16時34分 JST | 更新 2018年04月16日 16時34分 JST

カルテの電子化は私たちにとってどういうメリットがあるの?:基礎研レター

期待される効果は?

Getty Images/iStockphoto

カルテ(医療機関における診療記録)は、かつては手書きでしたが、日本では2000年ごろから電子化されてきました。電子カルテは、日本再興戦略で掲げられている医療・介護分野におけるICT化に欠かせないものと言えます。

本稿では、電子カルテのメリットと期待される効果、日本と諸外国での普及状況について紹介します。

1――電子カルテ導入で期待される効果

電子カルテは、導入時や維持のためのコストがかかること、停電時には使用できないこと、セキュリティ対策が必要であることといった課題はあるものの、患者にとっては以下のように、多くのメリットがあると考えられています。

(1) 患者の待ち時間の短縮

手書きよりも字の判別が簡単にできます。また、検索機能などによってカルテを探す手間がなくなり、素早く診療内容にアクセスできるほか、受付や会計の処理も効率的に行うことができます。これによって、患者の待ち時間が短縮されることが期待できます。

(2) 情報の共有による最適な治療・医療費の適正化

端末とネットワークがあれば、どこからもアクセスしうるので、複数の診療科や医療機関・介護機関等でデータを共有することができ、遠隔診療や在宅診療時にも、安全で最適な治療を受けることに役立ちます。また、複数の医療機関での重複検査・投薬を回避することができ、医療費が適正化されるほか、身体への負担も軽減することができます。

(3) 疾病研究の充実

紙カルテよりも保管場所が少なくて済むので、古くからの多くの診療記録や病歴・服薬歴を残すことができます。データの蓄積によって、通常の受診時により多くの情報を使えるほか、診療記録を使った疾病分析が充実するものと考えられます。

(4) カルテ紛失リスクの軽減

バックアップが容易になるほか、クラウド化等によって、災害時等におけるカルテ情報紛失のリスクが軽減されます(*1)。

2012年に報告された総務省「医療分野のICT化の社会経済効果に関する調査研究~報告書~」によると、電子カルテ導入と後述するEHR普及が進むことによる経済効果は、2020年には年間865億円とも見積もっています。


(*1) 東日本大震災では、27.3%の病院でデータ損失があったとされています(総務省「平成24年情報通信白書」)。

2――電子カルテ導入病院は増加。全国版医療情報ネットワークはこれから

1|電子カルテの導入は進んでいるが、400床以上の病院でも77.5%に留まる

日本で電子カルテが普及しはじめたのは、意外にも2000年頃(*2)以降と、比較的遅い印象です。

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日本再興戦略では、2020年度までに、地域医療において中核的な役割を担うことが特に期待される400床以上の一般病院における電子カルテの全国普及率を90%に引き上げることを目標としています。

直近(2014年)の調査で普及率をみると、400床以上の一般病院では77.5%と、3年前と比べて20ポイント上昇しており、順調に増加しています。しかし、200~399床では約半数、全規模あわせると約3分の1と、国全体での浸透にはまだ時間がかかりそうです。


(*2) 1999年に診療録等の電子媒体による保存が、2002年に電子媒体による外部保存が認められました。2009年にはオンライン請求が原則として義務化され、医療機関は、オンラインまたは電子媒体で請求を行うようになりました。

2|全国規模のEHRの構築が進められている

電子カルテを最大限に活用するためには、医療機関が単独で電子カルテシステムを導入しているだけでは不十分で、患者や地域、医療機関間で情報を共有していることが重要です。共有のための仕組みは、EHR(*3)(医療情報連携基盤、健康医療電子記録、医療連携ネットワーク)と呼ばれています。

日本では、主として地域ごとに電子カルテの共有が進められてきましたが(地域医療連携ネットワーク)、2015年以降、日本医療ネットワーク協会が全国規模で一元的に集約しようとしています(*4)。実際は、地域ごとに異なるルールで情報を蓄積しているため、データの標準化の課題があります。

2018年度には「次世代医療基盤法(医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律)」が施行し、データの活用もスタートします。


(*3) Electronic Health Record
(*4) 内閣官房 健康・医療戦略室 次世代医療ICT基盤協議会が進める「千年カルテプロジェクト」

3|電子レセプトによる請求は医療機関・保険薬局に浸透

一方、電子カルテと比べて電子レセプトの普及は進んでいます(図表2)。医療機関や保険薬局は、患者が窓口で支払う自己負担分以外の医療費については、患者が加入する医療保険者に審査支払機関を通じて請求します。

現在、原則として、請求はレセプト(診療報酬明細書)をオンラインまたは電子媒体で審査支払機関に送付することになっています。そのため、比較的早くから普及したと考えられます。

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3――諸外国でも導入を進めている

日本よりもカルテの電子化が進んでいる国は多くあります。しかし、他のデータベースと連結されるなど整備されているのは、まだ一部の国にとどまっています。

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(2018年3月27日「基礎研レター」より転載)
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保険研究部 准主任研究員
村松 容子