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2018年03月20日 21時56分 JST | 更新 2018年03月20日 21時57分 JST

医療費が高額になってしまったらどうすればいいの?:基礎研レター

医療費負担額には限度額が設けられている

Calculation for medical expenses concepts
takasuu via Getty Images
Calculation for medical expenses concepts

1――医療費負担額には限度額が設けられている

1|高額療養費制度とは?

現在、患者が窓口で負担する医療費は、就学前の子どもが2割、小学生から70歳未満が3割、70歳から74歳が2割、75歳以上が1割(現役並みの所得がある70歳以上は3割)で、残りは患者が加入している公的医療保険の保険者が負担しています。

しかし、1~3割の負担であっても、かかった医療費が高額な場合は大きな負担になります。そこで、保険診療においては、家計の負担が過重にならないよう、医療費の自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」という仕組みがあります。

これによって、1か月の窓口負担額が、一定額(自己負担限度額)を超えた場合は、超えた分については、加入する公的医療保険から支給されます。

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また、自己負担額を更に軽減する仕組みとして、直近12か月間に、既に3回以上高額療養費制度が適用されている場合(多数回該当)は、4回目の自己負担限度額がさらに引き下げられる仕組みがあります。

これらの自己負担限度額は、負担能力に応じた支払となるように、公的医療保険の被保険者の年齢と所得によって決まっています。

一回の窓口負担では、自己負担限度額に達さない場合でも、同じ月(月初から月末までの1か月)の複数の受診や、扶養家族それぞれの窓口負担を合算して、自己負担限度額を超える場合には、高額療養費制度が適用されます。

ただし、70歳未満の場合は、合算できるのは、1か月の同一医療機関における窓口負担(その医療機関で発行した処方せんを含みます)が2万1千円以上の場合のみです。

2|現在の自己負担限度額

現在の自己負担限度額は、70歳未満、70歳以上、それぞれ以下のようになっています。70歳以上については、現在改定途中で、下記は2017年8月~2018年7月までの診療分です。2018年8月以降については後述します。

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2――払い戻しを受けるか、現物給付を受けるか

高額療養費制度は、窓口負担分をいったん支払い、月の合計が上限額を超えた場合に申請して、払い戻しを受ける方法と、医療機関の窓口で認定証等を提示することで支払を負担の上限額までに留める方法(「現物給付」と言われます。)があります。

払い戻しは、申請から3か月程度かかるため、あらかじめ限度額を超えることがわかっている場合は、現物給付を受けると、用意する費用が少なくて済みます。

(1) 払い戻しの場合

払い戻しを受ける場合は、原則として、高額療養費の支給申請書を医療保険者に提出または郵送することで支給が受けられます。場合によっては、病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。

医療保険者によっては、保険者で限度額を超えていることを把握し、支給対象であることを教えてくれたり、場合によっては自動的に支給額を振り込んでくれたりする場合もあります。

ただし、通常、申請から払い戻されるまで3か月程度かかるため、当座の医療費は支払っておく必要があります。この間の医療費の支払いが困難なときには、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できる場合があります。

貸付金の水準は、概ね、高額療養費制度で支給される金額の8割程度ですが、加入する公的医療保険によって異なります。

(2) 現物給付の場合

一方、現物給付を受ける場合は、保険証以外に、市町村民税が非課税の低所得者は「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」を、70歳未満は「限度額適用認定証」、70歳以上75歳未満で図表2の適用区分が「一般」(年収約156~約370万円)または「現役並み」(年収約370万円~)は「高齢受給者証」を、それぞれ窓口で提示する必要があります。

75歳以上で適用区分が「一般」または「現役並み」は「後期高齢者医療被保険者証」のみを提示します。

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市町村民税が非課税などの低所得者の「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」と、70歳未満の「限度額適用認定証」は、それぞれあらかじめ加入する医療保険者に発行してもらう必要があります。

月の途中で認定証を提示する場合は、上限額を上回って支払った分について、医療機関で精算することがあります。

3――自己負担限度額改定の動向

高額療養費制度の自己負担限度額は、70歳未満については2015年1月に改定されました。この改定は、就労者の収入の低迷によって、中低所得世帯の医療費負担が相対的に過大となっていたことに伴い、中低所得世帯の負担を減らすことを目的としたものでした。

自己負担限度額を決めるための所得区分が、3区分から5区分に細分化され、低所得層では負担が軽くなった一方で、高所得層では負担が重くなりました。

例えば、標準報酬月額が26万円以下の世帯(被用者保険加入者)、年間所得210万円以下世帯(市町村国保加入者)は、これまで1か月8万円程度だった自己負担限度額が5万円程度に引き下げられ、標準報酬月額83万円以上の世帯(被用者保険加入者)、年間所得901万円超(市町村国保加入者)は、これまで1か月15万円程度だった自己負担限度額が25万円程度にまで引き上げられました。

70歳以上についても、世代間の公平を図るため、2017年8月からと2018年8月からの2度にわたって、負担限度額が段階的に引き上げられることになっています。2018年8月には、所得によっては70歳未満と同程度にまで引き上げられる予定です。

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4――高額療養費適用分は保険者が負担する

高額療養費制度が適用された場合、自己負担限度額を超える分は、加入している医療保険者が負担することになります。予想を大幅に超えるような高額な医療費が発生すると、規模の大きな保険者であれば影響は少なくて済みますが、規模の小さな保険者においては、保険財政を不安定にする要素となります。

特に、国民健康保険(市町村国保)では、保険者の規模に差があるだけでなく、地域ごとに医療費や所得の差があります。そこで、2018 年度からは、市町村に替わり、都道府県が財政運営の責任主体となり、安定的な財政運営や効率的な事業の確保等を行います。

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(2018年3月5日「基礎研レター」より転載)
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保険研究部 准主任研究員
村松 容子