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2018年05月23日 12時16分 JST | 更新 2018年05月23日 12時16分 JST

保険適用になる薬と、ならない薬では、薬効、安全性、流通の仕方がどう違うの?:基礎研レター

今後の医薬品開発の動きに、注目しておくことが必要といえます。

Ivan-balvan via Getty Images

1――医薬品の種類

まず医薬品の種類について、簡単にみていきましょう。

1|医薬品にはさまざまなものがあります

一口に医薬品と言っても、さまざまなものがあります。

医薬品は、副作用などのリスクの大きさに応じて、薬局医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品に区分されています。

2|薬局医薬品は医療用医薬品と薬局製剤に分けられます

このうち、薬局医薬品は、医療用医薬品と薬局製剤に分けられます。それぞれの区分別に、患者への積極的な情報提供、販売者、ネット販売の可否などの取り扱いルールが定められています。

(1) 医療用医薬品

医療用医薬品は、医師や歯科医師によって診療の際に用いられたり、医師や歯科医師が発行する処方箋に基づいて保険薬局等で購入されたりする医薬品です。保険適用となり、全国一律の公定価格である薬価が定められています。

購入時の値段は、薬価に、薬局の調剤費等を加えた調剤医療費に自己負担割合を掛け算した金額となります。なお、薬局では、調剤室での管理が必要とされており、ネットでの販売はできません。

(2) 薬局製剤

薬局製剤は、厚生労働省が定める指針に基づいて、薬局の調剤室で、薬剤師が薬剤を製造するものです。保険適用とはならず、値段は自由価格とされています。薬局では、調剤室での管理が必要です。ネットでの販売が可能とされています。

3|要指導医薬品は一般用医薬品に移行する途中段階のものなどを指します

要指導医薬品は、①以前は医療用医薬品だったものが、一般用医薬品に移行する際の、途中段階のもの(スイッチ直後品目)や、②医療用医薬品としての使用経験がないまま販売が承認されたもの(ダイレクトOTC(*1))、更には、③毒性・劇性を持つ劇薬を指します。

いずれも保険適用とはならず、値段は自由価格とされています。薬局では、購入する人と隔離して管理することとされており、ネットでの販売はできません。

①のスイッチ直後品目は3年、②のダイレクトOTCは一定期間(*2)を経過した後に、一般用医薬品としての販売の可否が厚生労働省の審議会で判断されます。そこで販売が可能と判断されれば、一般用医薬品に移行します。


(*1) OTCはOver The Counterの略です。薬局などのカウンター上で、医師の処方箋がなくても買える医薬品を指します。
(*2) 具体的には、新有効成分は8年、新効能・新用量は4年、新投与経路は6年とされています。

4|一般用医薬品は副作用や注意の程度により、大きく3つに分かれます

一般用医薬品は、副作用の程度や、注意の要否に応じて、大きく、第1類、第2類、第3類に分けられています。いずれも保険適用とならず、値段は自由価格とされています。ネット販売は可能です。

第1類は、購入者と隔離して陳列することとされていますが、第2類・第3類にはそのような決まりはありません。また、第2類には、薬剤師に、患者に対する積極的な情報提供を行う努力義務がありますが、第3類では不要とされています。

なお、第2類には、指定第2類とされているものがあります。小児や妊婦が禁忌とされている成分、相互作用や過量投与により心停止の恐れのある成分、習慣性・依存性がある成分を含んでいるため、特に注意が必要として厚生労働大臣が指定しているものです。

指定第2類の医薬品を販売する際には、薬剤師等が情報提供するためのカウンターなどから7メートル以内に陳列することとされています。

具体的にどの医薬品が、どの区分に入るかは、厚生労働省のホームページで閲覧できます。一般用医薬品の場合には、パッケージに「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」などと表示されています。

指定第2類医薬品は、「2」の文字を、丸枠や四角枠で囲って、「第②類医薬品」や「第2類医薬品」と表示されています。今度、薬局やドラッグストアで、一般用医薬品を買うときには、どの区分に入っているのか、確認してみてはいかがでしょうか。

2――漢方薬、医薬部外品、再生医療等製品

漢方薬や医薬部外品、再生医療等製品についてはどう区分されるのでしょうか。みていきましょう。

1|漢方薬でも、医薬品のルールは同じです

漢方薬でも、特別に医薬品のルールがあるわけではありません。医師や歯科医師が発行した処方箋に基づいて保険薬局で購入される漢方薬は医療用医薬品として保険適用となり、どの薬局で購入しても自己負担する金額は同じとなります。

一方、処方箋がないまま購入する漢方薬は、薬局製剤や一般用医薬品として、保険適用となりません。この場合は、自由価格ですので、同じ漢方薬でも、薬局やドラッグストアなどによって、値段が異なることがあります。

漢方薬によっては、安全性の違いを考慮して、医療用医薬品と一般用医薬品とで服用量などに差が設けられている場合もあります。

2|医薬部外品には、入浴剤や薬用化粧品などさまざまなものがあります

医薬品とは、別に、医薬部外品があります。医薬部外品は、副作用等のリスクに問題がないとされているもので、販売については特に制限がありません。

そのため、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、100円ショップなどで、幅広く販売されています。医薬部外品には、入浴剤、育毛剤など、様々な薬剤が含まれます。

日焼けによるしみ・そばかすを防ぐ効果のあるクリーム、にきびを防ぐ効果のある化粧水、殺菌効果のあるせっけんなどの薬用化粧品も、医薬部外品に含まれます。また、以前は医薬品だったものが、安全性が高いと判断されて、販売の規制緩和により医薬部外品になったもの(指定医薬部外品)もあります。

3|再生医療等製品の開発に注目が集まっています

最近、注目されているのが再生医療等製品です。これは、身体機能の修復や、病気の治療・予防などを目的として、人や動物の細胞に、培養などの加工を施したものや、遺伝子治療を目的として人の細胞に導入して使用するものを指します。

これまでに、重症熱傷や先天性巨大色素性母斑の治療に用いられる自家培養表皮、膝関節の外傷性軟骨欠損症と離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の治療に用いられる自家培養軟骨、虚血性心疾患による重症心不全の患者の心臓表面に移植する骨格筋由来細胞シートなどが、再生医療等製品として承認されています。

現在、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた創薬や再生医療等製品の製造が進められています。これらの新たな医療技術の研究・開発では安全性や倫理面への配慮など、多くの課題への取り組みが求められています。

3――セルフメディケーションの推進

医薬品に関連して、近年、軽度の身体の不調には、身近な一般用医薬品を利用する、セルフメディケーションの推進が始められています。少し、みてみましょう。

(1)セルフメディケーションの本格化

医療のうち、軽い不調については、一般用医薬品などを使って自分自身で手当てしようとする考え方があります。これは、セルフメディケーションと呼ばれます。世界保健機関(WHO)によると、セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」とされています。

セルフメディケーションには、さまざまな効果があるといわれています。例えば、①一般の人々の間で医療や医薬品についての関心が高まり、日々の健康管理の習慣が身につく、②軽い不調のときに医療機関で受診する時間や手間が省かれる、③国民医療費増加の抑制が図られる、といった点です。

(2) 医薬品の転用の促進

政府は、「日本再興戦略改訂2014」の中で、セルフメディケーションの推進のために、医薬品(検査薬を含む)の医療用から一般用への転用(スイッチOTC)の促進を図ることとしています。

消費者や産業界などの多くの要望を反映して、医療関係学会や医師会などの見解を聞いた上で、スイッチOTCの妥当性を検証する仕組みができています。

2016年から、厚生労働省で、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」が開催されています(*3)。

(3) セルフメディケーション税制のスタート

また、2017年より、所得税の医療費控除の特例として、セルフメディケーション税制がスタートしています。これは、所得税の納税者が確定申告をすることにより、スイッチOTCの購入費用について所得控除を受けられるというものです。

ただし、この控除を選択した場合には、従来の医療費控除を受けることはできません。納税者は、どちらか片方の控除を選ぶ必要があります。自分にとってどちらの所得控除を受けたほうが、控除が大きくなるのかを判断して、選択することとなります。


(*3) 2016年度には、スイッチOTC医薬品の候補となる成分の要望受付が19件あり、これまでに4件が医療用から一般用への転用可、1件が否とされています。その他は評価検討中です。2017年度には、14件の要望受付があり評価検討が進められています。

4――おわりに

医薬品の研究開発は、現在、急速に進んでいます。国内外の医薬品メーカーやアカデミア等で、多くの研究者が、再生医療や人工知能(AI)などさまざまな技術を活用して、画期的な医薬品の開発に取り組んでいます。

将来、進行したがんや認知症などの病気を、医薬品で治療することができるようになるかもしれません。今後の医薬品開発の動きに、注目しておくことが必要といえます。

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(2018年4月13日「基礎研レター」より転載)
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保険研究部 主任研究員
篠原 拓也