BLOG
2018年05月22日 13時20分 JST | 更新 2018年05月22日 13時20分 JST

4月の低PBR株、優位について~円安だけではなかった可能性も:基礎研レター

日本の株式市場は、2017年度に大きく上昇しました。

1――4月は低PBR株優位に

日本の株式市場は、2017年度に大きく上昇しました。ただ、低PBR株は市場平均と比べて劣後し、低PBR株にとってはやや厳しい1年になりました。ところが、2018年度に入ると一転して、4月は低PBR株が大きく上昇しました。

実際に低PBR株の動向を確認しましょう。【図表1】は、TOPIX500採用銘柄を毎月末のPBRを基準に低PBR株と高PBR株に分けて、それぞれの累計リターン(左)とその差(右)を示したものです。

ただし、金融、不動産セクター(東証33業種で銀行、証券、商品先物取引、保険、その他金融、不動産)の銘柄、予想純利益が赤字の銘柄、債務超過に陥っている銘柄は除外しています。

AOL

2017年度の累計リターンは、低PBR株が14%、高PBR株が20%でしたので、低PBR株は高PBR株に対して6%ほど劣後しました。

年度前半はジェットコースターのように優劣が入れ替わった一方で、年度後半は低PBR株が高PBR株に劣後し続ける展開となりました。それが4月は一転して、低PBR株が高PBR株を3%ほど上回って上昇しました。

2――高PBR株に対する投資家の見方が変った?

4月に低PBR株が顕著の優位になった一番の要因は、為替市場で円安が進行したことです。米金利の上昇に伴い日米金利差などが意識され、3月末に1ドル106円台であったのが4月末には109円台となり、1カ月で急速に円安が進行しました。

低PBR株には輸送用機器などの外需関連企業が含まれ、高PBR株と比べて海外売上高比率が高い企業が多いため、円安の進行を好感して、低PBR株が大きく上昇したと思われます。

ただ、4月は円安をきっかけに低PBR株が見直されただけではなかったかもしれません。高PBR株に対する投資家の見方もこれまでと変化した可能性もありそうです。

PBRとROEの関係式から回帰分析で推計(*1)した(残余)利益の期待成長率(*2)をみると、高PBR株の期待成長率は11月まで上昇傾向にあり、それ以降も高水準で推移していました【図表2:赤線】。

つまり、3月までは業績拡大期待が高PBR株の株価を押し上げていたと解釈することができます。それが、4月は一転して高PBR株の期待成長率が大きく低下し、高PBR株の期待成長率に変化の兆しが見られました。

AOL

4月の高PBR株の期待成長率の急落は、高PBR株に対する投資家の業績拡大期待が鈍化もしくは剥落したことを意味しているかもしれません。決算発表のピークは5月に入ってからですが、4月は一部の企業で決算発表がありました。高PBR株への業績拡大期待がこれまで高すぎただけに、4月に発表された一部企業の決算や業績見通しをきっかに調整したのかもしれません。

または、2017年度はハイテク株などが高PBR株を牽引して来ましたが、足元でスマートフォンの成長鈍化などが懸念されているため、高PBR株の業績を慎重に見ている投資家が増えたのかもしれません。もしくは、その両方が起こっていたのかもしれません。いずれにしても、高PBR株にとってはネガティブな変化です。


(*1) 詳しい推計方法は「資本コストから見たPBR効果3~資本コストを用いた短期予想~」をご覧ください。
(*2) 株価に織り込まれている成長率、つまり投資家が期待している成長率。

3――さいごに

やはり4月単月だけでは、投資家の考えや行動が本当に変ったのか確かなことは分かりません。そのため5月以降の期待成長率の動向なども確認する必要もあると考えています。

ただ、少なくとも2018年度に入って投資家の見方に変化の兆候が見られ、2017年度、特に年度後半のように一本調子で高PBR株優位が続くとは限らないことが示唆されたのではないでしょうか。

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

関連レポート

資本コストから見たPBR効果3~資本コストを用いた短期予想~

低PBR株の復活は時期尚早か

消えたPBR効果~足元の復調は続くのか~

(2018年5月18日「基礎研レター」より転載)
メール配信サービスはこちら
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 研究員
前山 裕亮