全国で空き家数(*1)は増加し、住宅総数に占める空き家率(*2)は上昇を続けています。2013年には全国で13.5%とおよそ7.5軒に1軒が空き家となりました。
空き家の増加は、その地域の住宅地の不動産評価にマイナスの影響を与え、ひいては個々の住宅の資産価値にも影響すると考えられます。
しかし、自らが居住する都市や市区の空き家率をご存知の方は少ないのではないでしょうか。ここでは、特に、国内5主要都市の持家マンションの空き家率を市区別に色分けしてみました。
国内主要5都市の中で、持家マンションの空き家率が最も低いのが東京都区部(7.3%)で、次いで福岡市(9.4%)、札幌市と名古屋市(11.0%)、大阪市(14.7%)でした。
このように、大阪市の持家マンションの空き家率は東京都区部の倍の高さとなっています。
各都市内でも持家マンションの空き家率には大きな格差があります。東京都区部で最も低い区が江東区で(3.3%)最も高い区が世田谷区でした(12.8%)。
同様に、札幌市で最も低い区が清田区で(2.9%)、最も高い区が東区(16.2%)、名古屋市で最も低い区が中川区で(5.5%)、最も高い区が北区(15.5%)、大阪市で最も低い区が東住吉区で(4.2%)、最も高い区が浪速区(36.1%)、福岡市で最も低い区が博多区で(4.8%)、最も高い区が東区でした(13.1%)。
実は、区別の持家マンションの空き家率の高さは、必ずしも人口増加率とは関係がありません。例えば、東京都区部で最も人口増加率の高い千代田区の空き家率は23区中22位(低い方から)で、大阪市で最も人口増加率が高い中央区の空き家率ランクは23位(24区中)でした。
このように人口増加率と持家マンションの空き家率のランクが一致しないのは、最近の都心部における人口増加にあわせてマンションの建設が盛んなため、調査時点の2013年には都心部での空き家率が高まっていたからと思われます。
人口増加率の低い区では、概して空き家率が高めである場合が多いのですが、人口増加率の低い区の中には、住宅建設が活発に進まないため、空き家率がさほど上がらない区があるようです。
なお、マンションと同じ共同住宅でも、木造の共同住宅であるアパートの空き家率はマンションを大きく上回っています。都区部では19.0%、札幌市では26.4%、名古屋市では33.9%、大阪市では43.4%、福岡市では28.0%でした(*3)。
最近の相続税対策による賃貸アパートの建設が、アパートの空き家率をこの数値よりさらに高めている可能性が高いと思われます。
人口の減少や人口の偏在、そして都心部におけるマンション建設の進展などから近年、都市間・都市内の空き家率に大きな格差が生まれています。
今後は大都市においても人口の高齢化や人口減少が見込まれており、空き家率の格差が拡大する可能性もありますので、自宅マンションの資産価値の変動という意味でも、所在するエリアの空き家率の動向に関心を持ってもらえればと思います。
・その他インフォグラフィック
(*1) 本稿における空き家数・空き家率は「平成25年住宅・土地統計調査」を元にして計算している。
(*2) 空き家率の計算方法などの詳細については竹内一雅「全国・主要都市の空き家数と空き家率の現況-「平成25年住宅・土地統計調査」の分析」(基礎研レポート2016.5.2)を参照のこと。
(*3) ここでは木造の共同住宅(持家と借家を含む)の空き家率を掲載しました。
関連レポート
(2016年10月27日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 不動産市場調査室長