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2018年03月16日 10時55分 JST | 更新 2018年03月16日 10時55分 JST

雪害-災害・防災、ときどき保険(6):基礎研レター

今回の関東の雪は、天気予報としては、1週間以上も前から予測されていた。

Handout . / Reuters

1――雪による災害について

やはりこの季節、雪に関する災害に触れないわけにもいくまい。

先日は、福井県付近の豪雪による国道での1,500台以上の立ち往生が連日大きく報道された。首都圏でも、南岸低気圧や史上最大級のシベリアからの寒波の影響で、大雪が降ったところである。

まだ被害・混乱が続いているのに総論的なことを述べるのは、不謹慎な面もあると思うのだが、どうやら混乱もおさまっているようであり、暖かくなってからの話題でもないので、今のうちに述べておこう。

雪害というのは、降雪に慣れている(と言っていいのか)東北地方の一部などで起きることと、首都圏のようにめったに積もることがない地域での混乱とは、ずいぶん様相が違う。またわが国では一般には、豪雪地帯と高齢化・過疎地域が重なることなど、降雪量とは別の要因も絡み合って、被害・混乱が生じるようである。 

すなわち山間部の豪雪地帯では、人手不足により除雪作業に支障をきたしたり、道路や鉄道など交通が分断されて、取り残されたり物資が不足したりするなどの被害がある。

一方で、都市部では、通勤・通学などの人の移動が激しいところに、通常雪への備えがないこともあって、一旦大雪が降ると、交通機関に大混乱をきたし、転倒事故なども増える。あえて言えば、前者は少なからず生命の危険、建物損壊の危険も伴うが、それに比べれば、後者はそうでもなさそうである(が、場合によるので軽々しく断言はしないが)。

1|雪による災害の種類

こうした、雪による被害の種類は、おおよそ想像はつくだろうが、人命・けがにかかわるものと、建物などへの被害ということに大きく分かれるようである。

例えば、首相官邸ホームページでは、主に人命・けがに関わるものに関して注意を促している(*1)。雪崩による事故、除雪中の事故(とくに高齢者)、車による雪道での事故、歩行者の雪道での事故などである。保険との関連では生命保険と傷害保険などが中心となるものといっていいだろうか。

一方で、建物の損壊や、雪解け水による建物の水没、自動車の損壊、農作物への被害などは、損害保険がカバーする領域のようである。

また雪が道路や鉄道に積もること、視程の悪化により飛行機の離発着を妨げるものなど、交通機関を混乱させることも雪による害には違いないが、こちらは被害の程度をどのように見積もるのかも難しいし、保険でどうカバーされるべきものなのかも、すぐには判明しそうにはない。


(*1)「雪害では、どのような災害が起こるのか」(首相官邸ホームページ)

2|雪害による保険金支払

保険の話をしたので、主に損害保険会社の雪による保険金支払がどのくらいあるかという点を見てみる。各損害保険会社では、雪による損害をカバーするためにも、いろいろな保険を提供している。

雪だけの保険などというものは一般にはない(全会社の全商品探せばあるかもしれないが。)ので、一般に雪害をカバーするのは、「火災保険」である。ここで積雪などによる住宅の損壊、家財の損壊に対して保険金を払ってくれる商品がある。

また自動車保険でも、降り積もった雪の重みで自動車がつぶれた、車庫そのものがつぶれて自動車も壊れた、雪崩に巻き込まれた、など様々なケースに対応する商品が提供されている。

とはあくまで一般論であって、具体的に、どんな場合にどんな条件で、保険金がいくら払われるかということは、保険会社の提供する商品によって様々である。雪害が注目されている時期に、各自で一度確認してみることをお勧めしたい。

ただし、人がケガをした場合や不幸にも亡くなった場合とかであれば、生命保険も含めて、雪かどうかはあまり関係なく保険金・給付金が支払われるのが一般的だと思われる。

さて、雪だけでなく、台風、大雨、あるいは地震などの自然災害による保険金支払については、損害保険会社は、他の事象とは分けて、統計をもっているところが多く、少なくとも自社の保険金支払額は、詳細に把握していると思われる。

その一部を、損害保険協会がとりまとめたものを公表していて、「台風○○号による支払保険金額」とか、「××豪雨による支払保険金額」などが並ぶのだが、雪に関して言えば、「2014年2月関東を中心とした雪害」というのが、保険金額の大きさでは上位にきている。

2014年2月の大雪というのは、2月13日に発生した低気圧が発達しながら本州の南岸を北東に進み、西日本から北日本にかけての太平洋側を中心に広い範囲で雪が降った、というものである(*2)。特に14日夜から15日にかけて関東甲信地方や東北地方の一部では記録的な大雪となった。

14日から19日までの最深積雪は山梨県甲府市で114㎝、埼玉県熊谷市で62㎝など観測史上1位を更新する地点も多かった。大雪警報は、秩父地方や埼玉県で発表された。被害は北海道から宮崎県までの広範囲にわたり、死者26名、負傷者701名、建物は全壊16棟半壊46棟一部破壊が585棟に及んだという。

また農作物の損傷、家畜の被害、ビニールハウス損壊などの農業への被害も甚大で、例えば埼玉県では金額にして229億円に達した(*3)。

一つの台風による損害保険会社合計の支払保険金額は、大規模なものであれば、短期間に1,000億円~5,000億円あるが、この時の雪害は、長期間にわたり、火災保険・自動車保険を主として約3,200億円(台風も含め歴代3番目に大きい金額)の保険金が支払われたことから、いかに被害の規模が大きかったか想像がつく。


(*2) ちなみに、ほぼ4年前で、ソチオリンピック開催中の出来事だったといえば、思い出す方も多いかもしれない。

(*3) 内閣府「平成26年豪雪について-2月14日から16日の大雪等の被害状況等について(26報)-」(2014年3月6日)

2――国による防災などの体制

雪の害についても、防災基本計画のなかで触れられている。防災基本計画では、基本的な考え方や各種の災害に共通な対策はもちろんだが、地震災害、津波災害、風水害、火山災害、雪害、海上災害、航空災害鉄道災害、道路災害、原子力災害、危険物等災害、大規模な火事災害、林野火災災害といった種類で対策の基本的な考え方を示している。

今後それぞれを紹介する機会もあるかもしれないが、共通事項として、災害に強い町作りの推進、できる範囲での予報・予防措置、災害発生時緊急対応、支援措置、その後の復興などについて述べているというのは想像できるだろう。ここでは詳細は省略し、先ほど挙げた2014年2月の大雪の教訓として、修正された部分だけを紹介しておく。

それは、大雪による立ち往生車両の発生により除雪作業に支障が生じ、大規模かつ長期にわたる孤立集落が発生したことである。こうした事態は大規模地震の際にも共通であり、放置車両や立ち往生車両が発生し、消防や救助活動の災害応急対策に支障が生ずるおそれがある。

そこで救急通行車両の通行を確保するため、道路管理者が放置車両を移動するなどの措置ができるよう、法律(災害対策基本法など)の改正が行われた。

また被害が雪に不慣れな関東を中心に生じたことから、雪害対応の経験が豊富な道府県や市町村と相互に応援する協定を結んでおく、などの方策も採られたようである。

3――天気予報により混乱は防げたか、など

それにしても、今回の関東の雪は、天気予報としては、1週間以上も前から予測されていた。従って、誰もが相当の心構えをして、降雪に臨んだはずだ。

都心の会社なども、大雪が予想された日は、従業員を早く帰宅させる措置も多かったと聞いた。鉄道会社側も、できる限りの事前準備・注意喚起をしていたのではあるまいか。

それでも最後は渋谷・新宿のようなターミナル駅では、早く帰宅しようとした相当多くの人たちが、電車に乗り切れず、何時間も待つなどの被害(?)・混乱を生じた。

こうした通勤・通学時間の混乱というのは、人命に関わる災害に比べれば、比較的軽い被害で、雪害に含めるのかどうかすら迷うところだろう。おそらく次回雪が降っても、程度の差こそあれ同じことが起こるだろう。命に別状なければ優先順位は低く、ひとりひとりの準備に期待されるところか。

ところで、雪の残骸は、放っておいてもやがて溶けてなくなるか、蒸発する。それを見てふと思ったのは、「これが雪の替わりに火山灰だったら?」ということである。溶けも蒸発もしない。

あるいは逆に、急にまとまって流れても、空気中に散らばっても、そこでまたなんらかの被害がありそうだ。それについては、いずれかの機会に火山災害対策を取上げる時に。

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(2018年3月1日「基礎研レター」より転載)
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保険研究部 主任研究員
安井 義浩