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2018年05月21日 14時41分 JST | 更新 2018年05月21日 14時41分 JST

地銀統合に関する金融庁有識者会議報告書の“根本的な問題”

独禁法に抵触する疑いが強い地銀間の経営統合を進めようとするのは如何なる理由からなのであろうか。

Bloomberg via Getty Images

2016年2月26日、長崎県の地方銀行の十八銀行と、同県の地銀親和銀行を子会社とするふくおかフィナンシャルグループ(以下、「ふくおかFG」)が、経営統合について基本合意を締結したことを公表した。しかし、統合によって長崎県内での貸出しシェアが70%を超えることとなるため、公取委の企業結合審査が長期化、2017年7月25日に、両行は、経営統合の無期延期を公表した。そして、2017年12月に、公取委は、新潟県の第四銀行と北越銀行の経営統合についての審査結果を公表、統合を承認する判断だったが、そこで示された考え方を当てはめると、長崎での両行の統合の承認は困難との見方が強まった。

それを受け、今年4月11日、金融庁は、同庁が設置していた有識者会議「金融仲介の改善に向けた検討会議」で、この問題を検討課題として取り上げ、【「地域金融の課題と競争のあり方」と題する報告書】(以下、「報告書」)を公表した。

報告書は、「都道府県内のシェア等により画一的にその是非を判断するのではなく、競争当局と金融庁が連携し、地域金融の産業構造や特性を踏まえた審査や弊害への対応を実施することが必要」との提言を行っている。

菅義偉官房長官は、その翌日の4月12日の記者会見で、報告書について言及し、「人口減少下において地域経済のインフラサービスを確保することが重要であり、政府全体で議論する必要がある」と述べた。

5月7日には、ふくおかFGと十八銀行が共同で、「長崎県経済の活性化に貢献する経営統合の実現に向けて」と題するコメントを公表し、「将来にわたり長崎県経済の発展に貢献するという経営統合の目的を実現するとともに、独占・寡占による弊害が生じないように運営していく方針」を強調した。

長崎における地銀統合問題をめぐって、独禁法に基づき慎重な姿勢をとる競争当局・公取委と、統合を進めようとする金融庁との対立は一層鮮明となり、政府全体を巻き込んだ争いに発展しようとしており、今後の地銀統合全般にも影響を与えかねない重大な局面を迎えている。

しかし、地銀統合と独禁法に関する問題について、金融庁が公表した報告書の内容には大きな疑問がある。問題の根本について、私なりに分析・検討した結果を述べてみたいと思う。

地方銀行をめぐる問題に関する基本的視点

まず、地方銀行をめぐる問題を考えるに当たって、地方銀行というのがどのような組織であり、法的にどのような規律を受けるのかという点を確認しておかなければならない。

第1に、地方銀行は株式会社であり、会社法という組織法上の規律を受ける。株主総会、取締役会などの機関による決定に従って事業が運営されなければならず、コーポレート・ガバナンスが機能しなければならないことは言うまでもない。

第2に、地方銀行も事業者であり、民間事業者として利潤を追求する存在である以上、競争を制限する行為を行う抽象的危険は常に存在しているのであり、その事業活動に関して、独占禁止法による制約を受けることになる。

第3に、地方銀行も、銀行である以上、「銀行法による規律」を受ける。銀行法1条の目的規定で定められているように、「業務の公共性」「信用を維持」「預金者等の保護」の観点から、「業務の健全かつ適切な運営」が求められ、それに関して、金融当局の指導監督の対象とされる。この「金融行政的視点」からは、地方銀行に関して、バブル崩壊以降、経営破綻した銀行、或いは、経営破綻の懸念から公的資金注入の対象となった地方銀行があり、今後も、経営の健全性の維持が重要な要請とされる。

一方で、バブル崩壊後の経済の混乱の中で、銀行経営の健全性が強く求められ、金融当局による「金融検査マニュアル」に基づく資産査定が過大に意識されたこともあり、中小企業に対する「貸し渋り、貸し剝がし」と言われる対応が横行して深刻な社会問題になった。従来、銀行融資においては、担保・保証への依存度合いが高く、企業の事業性評価が不十分であったことの反省から、長期的な取引関係により得られた情報を基に、質の高い対面交渉等を通じて、早い時点で経営改善に取り組み、中小企業金融における貸出機能を強化するという「地域密着型金融」(リレーションシップバンキング)をめざす方向での「金融仲介機能」が重視されている。

他方、上記のような法的規律とは別に、地方銀行には、「地域と密着し、地域の発展に寄与することを使命とする金融機関」という特性がある。そこに、全国的、或いは国際的規模で事業を展開するメガバンクとの違いがある。

地銀をめぐる現在の環境と将来予測と経営統合の必要性

現在、地銀の経営統合が重要な問題となっていることの背景には、報告書の冒頭でも述べられている、「人口減少による資金需要の継続的な減少など、地域金融機関を取り巻く経営環境が構造的に厳しさを増している」との認識がある。銀行経営の健全性の維持ないし金融仲介機能を果たすことが将来的に困難になるとの危機感が、「地銀の経営統合によって経営基盤を強化するとともに過度の競争を抑制する必要がある」との金融当局の認識につながっている。

その上で、報告書は、前記第3の「銀行法の規律」に関連する「金融行政的な観点」から、企業数が全国的に減少を続け、生産年齢人口も今後急速に減少し、将来の貸出残高の大幅な減少が予想されること、地銀の資金利益は継続的に減少しており、2016 年度は地域銀行の過半数の 54 行が本業赤字となっているなど地銀の経営環境の厳しさを指摘し、今後、人口減少が急速な地域においては、店舗削減が追い付かず、収益の減少が進んで金融機関の体力を奪い、地域における金融仲介機能の発揮に悪影響が及ぶとの予測を行っている。

そして、報告書は、上記のような現状認識と将来予測を前提に、第2の「競争法上の規律」に関連して、「競争法的視点」から、地銀の経営統合を行った場合の競争制限効果、弊害について述べている。

地銀をめぐる競争についての報告書の記述

報告書は、金融庁が設置した有識者会議によるものであり、基本的には金融庁の認識に沿うものと考えられる。その検討や指摘が適切なものであれば、地域金融機関をめぐる「競争法上の規律」に金融庁が参画し、企業結合の審査に、競争当局の公取委と金融庁が連携することが適切ということも言い得るであろう。

しかし、以下に述べるとおり、報告書では、「競争法的視点」に関して、十分な根拠に基づき適切な指摘が行われているとは到底言えない。

報告書は、「地域金融における競争状況の評価」に関して

都道府県など行政区画内における貸出額シェアのみに基づいて、貸出市場における金融機関の市場支配力の有無を判断することは困難と考えられる。

とし、その理由として、地域金融機関は、県外の金融機関や政府系金融機関との競争に直面していること、県境を越えた貸出競争が激化する中においては、都道府県内のシェアが高くても貸出金利を高く設定することは困難であることなどを挙げている。

その具体的根拠とされているのは、①近年、地域銀行は県境を越えた貸出を積極的に増加させている結果、県外の金融機関との競争に直面していること、②金融庁が全国の 中小企業等に実施したアンケートの結果、政府系金融機関との取引を選択した理由については、「政府系金融機関の方が借入条件が良かったから」と回答した企業が約6割となっていること、③IT 技術の進化によりパソコンやスマートフォンによる銀行取引の範囲が急速に拡大しており、金融機関の店舗への訪問の必要性が低下し、貸出を含む金融サービスの県境を越えた提供が更に加速することが予想されること、④地域銀行の本店所在都道府県における貸出額シェアと貸出金利低下幅(10年間)の間に、 相関は認められないことである。

しかし、①に関しては、「地域銀行は県境を越えた貸出を積極的に増加させている」としている根拠とされているグラフ(図表8)で見ても、顕著に差があるとは言えない。

②に関しては、政府系金融機関は、法令等に基づき、民業補完の観点から、基本的に民間金融業者から借り入れることが困難な事業者を貸出対象としているのである。アンケートの回答で「政府系金融機関の方が借入条件が良い」というのは、このような事業者に対しては、民間金融業者が融資に消極的で有利な金利水準を提示しないという傾向を示しているに過ぎないと考えられる。

③は、パソコンやスマホによる取引は、個人向けが多く、事業内容や経営状況を把握することが必要となる事業者に対する貸出に関しては、あまり影響がないのが現状だと考えられる。

そして、④については、少なくとも複数の金融機関を選択する余地がある場合には、他の金融機関との比較から、金利が低く設定される可能性がある。また、金融機関の融資取引に関しては、金利のほかに、経営指導や情報提供等も金融機関を選択する要素となり得る。

いずれにしても、需要者側にとっては取引する金融機関を選択する余地があるか否かが重要なのであり、「金利を高く設定することが可能かどうか」を地域金融機関の寡占化の弊害に関して過大視すべきではない。

過当競争と金融システムの安定性阻害

次に、報告書は、前記第3の「金融行政的な観点」と第2の「競争法的視点」の関係に関連して、需要が減少する中で過当競争が行われると金融機関の経営悪化を招く一方で、経営統合により生み出される余力が地域企業の育成、地域経済の発展のために使われれば、地域にとって恩恵がもたらされるとした上、人口減少等を通じて収益環境が厳しくなる中で、経営統合は、金融機関の健全性維持のための一つの選択肢となるとしている。

そして、過当競争による経営悪化の継続によって金融システムの安定性が損われるとする根拠について

銀行間の競争についての国際的な議論としては、競争が強まるほど、借入先に係る選択肢の増加を通じ、債務者の返済能力が高まり、銀行にとっての信用コストも低下するため、銀行経営の安定性が高まるとする見方(competition stability view)と、競争が強まるほど、利鞘が縮小し、過度なリスクテイク等が行われやすくなることなどから、銀行経営の安定性が損なわれるとする見方(competition fragility view)が存在するが、以下の分析から、近年は competition fragility view が当てはまっているようにみられる。

とした上、その根拠として、

我が国の地域銀行の、中長期の予想デフォルト確率は、2000 年代末から上昇基調であり、地域銀行の競争激化と長期的に連動している

と指摘している。

ここで述べていることは、「競争が激化すると利益が減少し、経営上のリスクが大きくなる」という、言わば「当然のこと」に過ぎない。それを、そこから、「金融システムの安定性確保と両立する競争のあり方を検討する必要がある」などという結論を導いているのである。

「金融システムの安定性の確保」のために「金融機関の経営の安定性」を維持する必要があり、そのためには「競争の在り方」を検討し「一定の取引分野における競争を実質的に制限する合併を認めることまで許容すべき」というのは、「競争法上の規律」からは、凡そ許容し難い考え方である(かつては、一定の要件と手続の下で「不況カルテル」が合法とされていたが、その時代においても到底許容されない考え方である。)

「金融仲介機能」の向上と地域金融機関の間の競争

報告書は、上記のように、十分な論拠もなく「競争の在り方」を論じ、「経営統合は、金融機関の健全性維持のための一つの選択肢である」と述べた上、「同一地域内の経営統合」に関して、

現在の地域銀行の一般的な貸出姿勢を調査すると、担保・保証への依存度合いが高く、企業の事業性評価が出来ていないところが多い。従って、こうした企業においては、経営統合以前の時点で、借入先の選択可能性が限定されている。すなわち、この点については寡占・独占の弊害と言うより、むしろ担保・保証の有無にかかわらず事業性を見た融資が普及していないことに問題の本質がある。

とした上、

金融庁がこれまで行っている、「事業性評価」に基づく融資や本業支援の促進、「企業ヒアリング・アンケート調査」の実施、「金融仲介機能のベンチマーク」(2016 年9月策定・公表)等の客観的な指標を活用した自己評価や開示の促進などの取組みを、更に促進すべきである。

と結論づけている。

これは、前記のとおり、第3の「金融行政的視点」から地域金融機関の融資における「金融仲介機能」の問題を指摘するものである。それについて、金融庁が従来から行ってきた対応をさらに推進すべきというのは、「金融行政的視点」からの指摘としては正しいとしても、そのような「問題の本質」が、なぜ「寡占・独占の弊害」と関係がないと言えるのか根拠は全く示されていない。

需要者の中小企業の側からすれば、地域銀行の寡占・独占により、選択の余地がなくなってしまえば、担保・保証に依存する姿勢から脱却できない金融機関であっても、それを選択するしかない。地域銀行において事業性を見た融資の普及には、「金融行政」による指導監督も必要であろうが、金融機関相互の競争、需要者側の選択も、それを実現する有効な手段だ。寡占・独占が、地域銀行の貸出姿勢の問題を助長する可能性も当然あるわけだが、報告書では、そのような観点は全く無視されている。

「経営統合によって生み出される余力」の活用

報告書は、地域金融機関の経営統合が、「金融機関の経営の安定性と、 最低限の金融インフラの確保に寄与する」とした上、

経営統合により生み出される余力が地域企業の育成に適切に使われれば、地域企業・経済の発展にも貢献する。他方、経営統合が同一地域内で行われる場合には、不当な金利の引上げやサービスの質の悪化 といった寡占・独占の弊害が生じないようにしなければならない。

とした上、

競争上の問題が生じる可能性がある同一地域内の経営統合については、都道府県内のシェア等により画一的にその是非を判断するのではなく、当該経営統合により地域にもたらされうる恩恵、寡占・独占 の弊害の可能性、地域の中小企業の真の不安の所在を把握し、的確な対応を行うことが重要である。

金融機関は、他の事業者と異なり、常時金融庁による検査・監督の下にあり、合併等についても金融庁が銀行法に基づく審査を実施することとなっているので、この枠組みを活用し、(金融庁が)、全体として、将来にわたり地域における金融インフラが確保され、地域企業・経済の成長・発展に貢献するか否かをもって経営統合の是非を判断すべきである。

事後的にも、金融庁が、「金利等の融資条件」や「金融サービスの質」の不当な悪化が生じていないかを、統合した金融機関の検査・監督や、債務者向けの相談窓口等を通じて把握し、問題があれば是正を行うこと、金融機関がコミットした経営統合の目的の進捗・達成状況についてモニタリングを行い、 地域に統合の果実が還元されることを確保していくことが必要である。

としている。

つまり、経営統合の是非については、公取委による「都道府県内のシェア等による画一的判断」による企業結合審査ではなく、金融庁の「銀行法に基づく審査」「事後的なモニタリング」を行うことを通して、経営統合の弊害を防止し、統合の目的である「統合の果実の地域経済への還元」を確保できるよう判断する必要があるとしているのである。

そして、このようなスキームを前提に、「新たな競争政策の枠組み」について、

競争当局と金融庁が連携し、地域金融の産業構造や特性を踏まえた審査や弊害へ の対応を実施すること

を提言しているのである。

ここで述べているのは、地域銀行の統合問題への対応を、公取委による企業結合審査という前記第2の「競争法的視点」ではなく、前記第3の「金融行政的視点」を活用して行うべきだということであり、その前提とされているのは、経営統合の目的について当該金融機関がコミットし(「明言し、約束・制約する」という意味であろう)、それを「事前事後に金融庁が指導監督するというスキームである。

しかし、そこには、地方銀行が私企業たる株式会社であることによる前記第1の「会社法による規律」という視点が完全に欠落している。

「経営統合により生み出される余力」を、経営統合を果たした地方銀行がどのように活用するかは、銀行が株式会社である以上、株主総会、取締役会等を通したガバナンスに基づく組織的決定に従わざるを得ないというのが、「会社法の規律」からの当然の帰結である。経営統合による余力の活用について、当該金融機関が何らかの「コミット」を行ったとしても、それは、「その時点の執行部の方針」に過ぎない。経営統合後に、当該金融機関をめぐる状況が変化し、ガバナンスに基づく意思決定が統合前とは別個のものになることも、私企業たる株式会社である以上、制約することはできない。株式会社である以上、その時々の経営環境の下で「株主の意向」にしたがい、会社の利益を最大化する方向で経営を行うのは当然であり、経営統合による競争制限で生じた果実の活用に関して、統合前の方針を維持することを監督官庁の金融庁が強制することは、私企業の経営への不当な介入となりかねない。

地方銀行の経営統合について、公取委の企業結合審査と、金融庁の銀行法に基づく審査(当事者の銀行のコミットについて事前事後の指導監督)との連携を行うという報告書の提言には、根本的な問題がある。

もちろん、提言されている「企業統合審査についての競争当局と金融庁との連携」を立法によって実現することは不可能ではない。しかし、今回の報告書で露呈した金融当局の「競争法の規律」「競争法的視点」への無理解からすると、競争当局と適切に連携することができるようには思えない。

長崎県における地域銀行の経営統合問題について

報告書は、ふくおかFG(福岡県、福岡銀行・熊本銀行・親和銀行を傘下に持つ)と十八銀行(長崎県の地方銀行)の経営統合について、

(ア)長崎県においても、事業所数や生産年齢人口は、全国の減少率を上回る急速なペースで減少している。

(イ)十八銀行と親和銀行(ふくおかGF)が経営統合を公表した後、県外銀行による貸出の伸びが目立っている。

(ウ)両行は、本件経営統合により生じた余力を地元企業の付加価値向上や事業再生の支援に活用することを公表している。

などと指摘し、「本件経営統合の是非を県内の貸出額シェアなどに基づいて事前に画一的に判断することは適切でない。このまま競争を続け、経営体力を消耗させ、金融機関数が減少し、自然に独占状態が発生する状態になるより、経営余力のあるうちに統合を認め、その経営余力を用いて地域企業の本業支援等を行うことを通じて、生産性向上や付加価値向上を図ることの方が、地域企業・経済の観点から望ましい。」と結論づけている。

しかし、(ア)は客観的事実であるとしても、(イ)については、報告書の図表15によると、県内金融機関の貸出の増加に比べて顕著に増加しているとは言えない。また、(ウ)の「本件統合により生じた余力の活用」については、冒頭で述べたように、今年5月7日にも、両行がコメントを公表しており、経営統合を認めるべき理由として強調したいようだが、上記の通り、地方銀行が株式会社である以上、ガバナンスに基づく組織的決定に従わざるを得ないのであり、経営統合の是非の判断において現在の各銀行の執行部の方針を過大に評価することはできないし、金融当局のモニタリングにも限界がある。

報告書は、公取委の企業結合審査について、「県内の貸出額シェアなどに基づく画一的判断だ」としているが、少なくとも、公取委は、県内に所在する需要者の企業へのアンケート調査なども実施し、経営統合によって生じ得る影響を実質的に考慮しつつ判断している。公取委も、貸し出しシェア5割を超える新潟県の第四銀行と北越銀行については、経営統合を承認しているのであり、貸出シェアが70%を超えるだけでなく、需要者側の選択の余地を奪うことが懸念される長崎での地銀の経営統合の計画に難色を示すのは、競争当局としては当然であり、公取委の対応が柔軟性を欠くと批判されるべきものではない。

現在のところ、十八銀行の業績は順調であり、経営上の問題は特にない。今後も、長崎地域において、ふくおかFG傘下の親和銀行との公正な競争を通して、地域の金融機関としての社会的使命を果たしていくことも十分に期待できる。

ふくおかFGと十八銀行は7日、長崎県内の全取引先に対し、他の金融機関への貸出債権譲渡について意向調査をするとのことだが、銀行側の都合で、融資取引の関係を変更させられる中小企業にとって迷惑極まりない話であろう。それこそ、リレーションシップバンキングという方向性にも反するのではないか。

そのようなことまでして、独禁法に抵触する疑いが強い地銀間の経営統合を進めようとするのは如何なる理由からなのであろうか。報告書の見解に沿って地銀統合を進めようとする金融庁の方針がその原動力になっているのであろうか、報告書には「根本的な問題」があることを改めて指摘しておきたい。

(2018年5月10日郷原信郎が斬るより転載)