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2015年01月10日 15時14分 JST | 更新 2015年03月10日 18時12分 JST

地方交付税交付金の落とし穴

地方交付税が減ったらかと言って安心することなく、財政健全化と透明化のためにも、この点にしっかりと国会論議を通じて切り込んで行くことが重要だと考えます。

14日までに国会に提出されるという来年度の政府予算案について、自治体に配る地方交付税を7年ぶりに15兆円台に減らすという方針であるとのことです。その理由は、企業からの税収や個人からの消費税といった地方税収が増えるためです。アベノミクスの効果サマサマと言ったところでしょうか?

地方交付税は、国の財源の中から地方の財政需要のために拠出するお金です。なぜこのような制度があるかと言えば、自治体によって地方税の収入に差があり、自治体ごとの行政サービスがあまりにも異なってしまうことがないようにするためです。ヨーロッパなどでは、国境をまたぐと地続きであるにも拘らず街並みが一変することがあります。もし地方交付税のような調整制度がないと、県境を超えたら突然道路がガタガタになってしまうというようなことが起こりうるのです。

実際は東京、大阪、愛知、神奈川などの大都市圏と地方との格差是正のためです。実際地方税の収入において、特に法人税収では東京都が人口が全体の10%であるのにも拘らず、地方法人税の収入は全国の25%を占めています。私は、このような格差是正のための地方交付税自体は必要であると考えています。

今回地方交付税が減るということはその意味では良いことのように思えるのですが、私が指摘したい問題は、地方交付税が減ったからと言って、必ずしも国から地方への財源措置がその通りに減るとは限らず、そこに大きな落とし穴があるということです。

自治体の財政に詳しい人ならご存知ですが、「臨時財政対策債」という制度があります。これは、地方交付税の収入が足りない場合に、地方自治体が発行する地方債の一つで、もし国の税収が落ち込んで地方交付税に十分なお金を回すことができない場合に、地方が自ら借金をしてその足りない分を補うこととしています。地方自治体が負担をする借金ですから国とは直接関係がなさそうですが、実はこの臨時財政対策債(臨財債)は、その利子分も含めて将来その分の地方交付税を上乗せして支払いますよと国が約束しているのです。

この制度、実は平成13年度から15年度までの臨時の措置でした。だから名前もそうなっています。しかし、3年で終わるどころか現在の計画では平成28年まで続けることになっていて、しかもそこで終了するとはとても思えません。なぜならその残高は一貫して増え続けており、平成24年度末で40兆円を超え、地方債全体の28%を占めるまでになっているからです。

もしこの制度がない場合には、国が国債発行額をさらに積み増しして手当することになるのですが、そうすると見かけの国債の発行残高が増えてしまうのと、年によって国債の発行額が大きくばらついてしまうというリスクもあり、国としてはよろしくありません。そこで、制度的には地方の借金としながらも、財源負担は国がすると約束しているという見かけと実態が異なる借金なのです。

国の財政の健全化という観点で見るならば、地方交付税とその年に起債される臨財債の両方が減らなければなりません。政府予算案の作成にあたり、総務省は地方財政対策の概要を毎年年末に発表しており、それを見ますと、臨財債の発行予定額は5兆5,932億円と、前年比マイナス6,180億円ではあるものの、引き続き高水準であることが分かります。

地方自治体も、増大する行政サービスによる歳出の増加に対応するために、臨財債に依存する傾向がますます見られます。毎年入って来る地方交付税のうちの一定金額をキチンとその返済のために積み立てているのならまだしも、歳出を賄うために十分な積立を行わず、毎年の支出に当ててしまっている自治体も多く見られます。つまり、臨財債は国と地方、両方の思惑と必要性によって増え続ける傾向にあるのです。

しかし、このような「場つなぎ」的な措置が続くことによって、国の財政の実態がますます分かりにくくなってしまいます。地方交付税が減ったらかと言って安心することなく、財政健全化と透明化のためにも、この点にしっかりと国会論議を通じて切り込んで行くことが重要だと考えます。