ぼくはかなりのドラマ好きなのだがこのクール(2014年7月〜9月)は不作だ。これと言って観たいものがない。多くの人も同じ気持ちなのか、視聴率も冴えないようだ。初回はともかく第二話、第三話と続く中で10%を切るものが続々出てきた。月9『HERO』だけがヒットドラマの面目を保っているが、どうもこの先失速しかねない空気が漂っている。
ところが、そんな中で毎週楽しみにしているドラマがある。『アオイホノオ』という、80年代の大学を舞台にした青春ドラマ、と言ってしまうと普通のようだが、かなりとんでもない。『逆境ナイン』などの漫画家・島本和彦の自伝的な漫画が原作で、実際に島本が大阪芸大に入学し、同級生だった庵野秀明などのちのガイアックス関係者を意識しながら、過剰なまでの根拠なき自信にあふれる主人公が創作に七転八倒する姿を描く。面白くて面白くて深夜に声に出して笑いながら観ている。そしてこれはテレビ東京の金曜深夜"ドラマ24"の枠だ。
このドラマ24は『モテキ』『勇者ヨシヒコ』『まほろ駅前番外地』と注目すべき作品を送りだし、前クールの『大川端探偵社』もかなりよかった。それに続いてこの『アオイホノオ』も傑作になりそうで、すっかり一部に評価される枠になりつつある。
"攻めてる"テレビ東京を象徴する枠のひとつになってきた。
このところ、テレビ東京が"攻めてる"ことについては、みんな異論はないだろう。それは今年の春の開局記念番組にはっきりと表れていた。『50年のモヤモヤ映像大放出』と銘打たれたこの開局50周年番組では、他のキー局とは明らかに一歩下がったところにある自分たちのポジションを逆に武器にし、徹底的に自虐しながらも「これ以上落ちない場所にいますんで、もうなんでもやっちゃいます」という姿勢を明らかにしていた。この番組の中心人物は、タイトルに"モヤモヤ"とある通り、「モヤさま」の伊藤Pだったようだ。
"攻めてる"テレビ東京を引っ張っているのがその伊藤Pであるのはまちがいなさそうだが、それだけでなく、伊藤Pに続く人材が出現し、新たな戦線を自ら見つけて"攻める"テレビ東京の最前線に躍り出てきた。
例えば高橋弘樹氏は『ジョージ・ポットマンの平成史』『家、ついて行ってイイですか?』などで、お笑いタレントやグループアイドルが出てこない、企画勝負の深夜番組に挑んでいる。そればかりか、NHKのサイトで対談までやってしまっている。→今、テレ東が面白い理由―低予算が生む違和感とガチ感:高橋弘樹
高橋氏は8月限定の実験的な番組『吉木りさに怒られたい』にも取り組んでいる。公式サイトの番組内容の瀾には「数分間、吉木りさに怒られるだけの番組です。」とだけある。自ら「怒られるだけ」と言ってのけてしまっている。思わず、そういうことでいいの?とツッコミたくなる企画だ。
この番組はどうやら、新しい手法のPRの企画のようでもある。番組とセットで、吉木りさが毎回いろんな商品を紹介しているのだ。番組の内容とどこか接点がある商品だ。このあたりにもたくらみが潜んでいそうだ。
さらに、この番組は地上波とネットが連動している。地上波で金曜深夜に『吉木りさに怒られたい』が放送されたあと、テレビ東京の動画サイト・テレ東プレイでは『新・美しい人に怒られたい』が配信される。吉木りさとはまた別の女性タレントが、放送されたネタとは別の"怒り"を表明するのだ。地上波からネットにうまく視聴者を誘導している。このテレ東プレイもまた、"攻める"テレビ東京の最前線を形成しているわけだ。今後も地上波と連動した様々な試みが展開されると期待したい。
8月28日に、ぼくたちが運営する勉強会・ソーシャルテレビ推進会議の主催でセミナーイベントが開催される。そのSocialTV Conference2014には、"攻めてる"テレビ東京を代表して、テレ東プレイを仕掛けている合田知弘氏が登壇する。前回のブログで紹介した、「雪道コワイ」のBBDO J WEST眞鍋海里氏、「全くエロくないユニクロ」の東京倉庫・瀧祐夏氏とのセッションで、ディスカッションしていただく。ネットで"攻めてる"お二人に、テレビ×ネットで"攻めてる"テレビ東京として、がっつり対抗してもらうつもりだ。
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コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
sakaiosamu62@gmail.com