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2018年05月22日 13時23分 JST | 更新 2018年05月22日 13時24分 JST

貧困からの脱出にむけて~バングラデシュ~

「貧困から脱出するために有効な支援は何か」を問い続けることでもあります。

途上国支援の仕事は、「貧困から脱出するために有効な支援は何か」を問い続けることでもあります。貧困のありさまは国や地域によってそれぞれ異なり、この問いに対する正解はひとつではありません。しかし、現場の人々の視点にたって丁寧に計画し、彼らのニーズにきめ細かく寄り添ったプロジェクトを実施することで、貧困層の人々が本来持っている可能性や意欲を実現することができます。プラン・インターナショナルがバングラデシュで支援するふたつのプロジェクトを視察して、この確信を新たに帰国しました。

スキルを習得し自立にむけ歩みはじめた女性たち

Plan International
ボルグナ県を目指して川を渡る

バングラデシュの中でも、とくに貧困率が高い最南部のボルグナ活動地域。ガンジス河の河口に位置するため、フェリーで何度も川を渡ってたどり着きました。

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縫製の訓練を受け技能を習得したウサニさん
ここでは、2017年から3年計画で「少数民族の女性たちの収入アップ」プロジェクトを実施しています。厳しい貧困状態にある少数民族の女の子と女性2000人に、縫製や野菜栽培、養鶏といった職業訓練を提供し、彼女たちが現金収入を得られるようになることを目的としています。

現在、縫製店で研修中のウサニさんは、日雇い労働者の夫の収入が不安定なため、縫製で得た収入を子どもの教育費にあてたいと話していました。

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希望に満ちた笑顔のアミナさん
すでに職業訓練を修了したアミナさんは、プランからミシンの支給を受け、自宅で開業したばかりでした。彼女も日雇いの夫の乏しい収入を補う必要をずっと感じていたため、すすんで訓練に参加したそうです。キラキラ輝く新品のミシンを前に、すでに4件の依頼があったことをうれしそうに話しているところに、5人目のお客さんが来訪。幸先のよいスタートを切っている姿を目の当たりにしました。

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養鶏を始めたチャンチョさん
職業訓練を修了し、自宅で野菜栽培と養鶏を始めた15歳のチャンチョさんは、貧困のため小学校を終えた時点で進学をあきらめざるを得なかったそう。野菜や鶏を育てて得る収入で、妹には十分な教育を受けさせたいと話していました。

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野菜栽培の研修を受ける女性たち
縫製や野菜栽培、養鶏などは、実際に需要があるうえ自宅で開業できるため、仕事のためであっても外出が許容されにくい女性たちには適した職種といえます。参加者たちは、自分が就きたい職種が決まると、民間の経営者や政府の指導員などによる訓練を受け、生産資源(ミシン、種、ひなどり、器具など)の支給を受けます。また、研修では職業に関する技術だけでなく、早すぎる結婚がもたらす影響や保健衛生に関する知識、栄養状態を改善する方法といった、健全な生活を送るために必要なスキルも学べます。

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ファシリテーターたちと(本人は、後列右)
プロジェクトが軌道に乗るまで、定期的に戸別訪問し指導にあたるファシリテーターは、「モノを提供するだけでないのがこのプロジェクトのよいところ。女性たちが暮らす遠隔地を定期的に訪問することは苦労もあるが、プロジェクトを必ず成功させたいという思いがあるので頑張れます」と熱心に話していました。

災害からコミュニティを守る

インド国境に近い北部ラルモニールハット県は、たびたび洪水に襲われるだけでなく、潜在的な大地震地帯でもあります。プランは、アジア地域で「災害に強い学校づくり」プロジェクトを複数すすめています。

バングラデシュでは、支援対象地域の10校(児童および生徒約3000人)のために、校舎の改修や校庭のかさ上げ、子どもたちが中心となったコミュニティ防災マップ作り、東日本大震災で注目された日本の手法を参考にした防災訓練、教師や住民も参加するコミュニティ全体の啓発活動を通して、災害への備えを強化しています。私が訪問した小学校では、「学校防災委員会」の児童、教員、住民メンバーが、「この取り組みによってコミュニティ全体の災害への備えが高まった」と口々に話していました。

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学校防災委員会のメンバーたち
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避難訓練の様子

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学校の前を流れる川

目前に河原が広がっているこの学校では、対岸から浅瀬の川を歩いて渡って通学する子どもたちが多く見られました。そのため、川の水かさが増す雨期には、通学が困難となり欠席率の上昇が問題となっていました。このプロジェクトでは、同校に救命具を備えたモーターボートが提供されたことにより、雨期の通学不安が解消され、出席率の改善につながっているそうです。

貧しい人々が持つ可能性と意欲を生かす

バングラデシュには、貧困に苦しむ人々が数多く暮らしています。これらの人々は弱い立場には置かれているものの、決して無力や無気力な存在ではありません。

私が出会った南部の女性たちは、可能性と意欲を持ち、支援を生かして自らの未来を切り開こうとしていました。一方、北部の災害の影響を受けやすい地域でも、学校を拠点に子どもたちが主体となって活動することで、コミュニティ全体の災害対応力が高まっていることを確認しました。

20年以上にわたるプランの活動のなかで築いてきたコミュニティや地元パートナー団体との信頼関係を大切にしつつ、これからも途上国に暮らす人々が元気になり自立することを目指した支援に力を注ぎたいとの思いを強くしました。

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佐藤 活朗(さとう・いくろう)

公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン 事務局長

海外経済協力基金(OECF)・国際協力銀行(JBIC)において、長期にわたり政府開発援助(ODA)業務に携わる。アジアのなかでも厳しい貧困を抱える南アジアの国々(インド・パキスタン・バングラデシュ・スリランカ)などを中心に支援経験を重ねた。

プラン入局後は、東日本大震災の発生を受け、プラン初の国内支援活動を実施。その後も、熊本地震緊急支援、九州北部豪雨緊急支援など、被災地の子どもたちやご家族、教育関係者などの支援に奔走した。途上国支援においては政府や国際機関資金の導入をすすめ、資金源の多様化を図る。Because I am a Girlキャンペーンを通じ、女の子や女性、少数民族の人々などを含めた「誰も置き去りにしない」途上国支援をすすめている。