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尾原和啓による好評連載『プラットフォーム運営の思想』第7回は、前々回(Airレジ)、前回(ゼクシィと「配電盤モデル」の解説)に続いて、「リクルートのビジネスモデル」がテーマ。「ウィンスラーのマーケティングマトリックス」を用いて分析しつつ、「Web2.0以降」の変化についても解説していきます。
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尾原和啓『プラットフォーム運営の思想』前回までの連載はこちらのリンクから。
ここまで「Airレジ」の分析に始まり、リクルートという企業のビジネスモデルを解説してきました。
今回は、その内容の仕上げに当たる回です。ここからは、リクルートは一体どういう事業領域をどう攻めており、そこから私たちが何を学べるかを考えます。リクルート的なビジネスモデルがこのインターネット時代でどういう位置づけなのかも見えてくるはずです。
ただし、その前にまずは前回の話を補足する形で、リクルートが単に「配電盤モデル」の仕組みを作るだけでなく、営業マンや編集の質を高める体制に注力して、いかに強力にループを形成しているかを解説したいと思います。
■配電盤モデルにおける営業の価値
さて、「配電盤モデル」を構築する際には、競合が追いつけない速度で素早くサプライヤーとユーザーの双方で高シェアを取るのが重要です。このことは自ら市場を作り上げていく場合でも、後発で参入していく場合でも変わりません。そこで重要になるのが、単にプラットフォームの仕組みを作るだけでなく、さらにマンパワーでループを加速していくという発想です。
▲「配電盤モデル」
その際、リクルートでは数を一気に押さえるローラー営業の作戦に加えて、常に質の高い営業マンを採用するのを大事にしてきました。例えば、幹部の人間たちは役員会議より面接の方を重視していました。一時期などは、六大学の有名サークルのリーダー全てにインターンの誘いを出していたこともあります。一にも二にも、まずは人間なのです。
このリクルートのこだわりは、彼らの商品が「採用活動」や「結婚」などの顧客の将来に大きく関わる意思決定を伴うことに理由があります。例えば、大企業であればともかく、中小企業にとっての採用活動は、会社の未来を左右する一大事です。社長自身が直にそうした意思決定を行うことも多く、たかだか一営業マンがそれにアドバイスを行う行為は、もはや企業の将来について語る経営コンサルタントにも近い役割となります。これは相当に優秀な営業マンでなければ厳しいことです。そして、そういった企業の根幹に関わる判断に直面することで営業マンも成長して、はばたいていきます。
こうした質の高い営業マンを集める戦略に加えて、リクルートはさらに事業の展開を加速するために3つの工夫をしています。
まず、配電盤モデルにおける「質」のループを加速させる施策です。
ここで重要なのが、いわゆる「顔ぶれ営業」などと言われる手法です。リアルでのスーパーや家電量販店などの店舗を思い浮かべれば分かると思いますが、どんなに品揃えが充実していても、顧客にとってわかりやすく魅力的な「目玉商品」がなければ、なかなかお店が魅力的には映らないのです。そこで、そうした商品を確保するために、ユーザーにとって魅力的なクライアントを別途リストアップして、集中的に営業をかけていきます。ここで重要なのは、「目玉商品」として、例えば駅の中吊り広告で大きく扱ってくれたり、バナーに大きく記載してもらうことは、クライアントにとってもありがたいことです。言わばこちら側の「目玉商品」として扱いたい要望が、そのまま先方にとっての付加価値に繋がるのです。
一方で、もちろんユーザーにとっては、単に質が良いだけでなくて、量が多いことも重要です。そこで、配電盤モデルにおける「量」のループの向上も重要になります。
ここで問題になるのが、顧客の幅もが広がると、必ずしも顧客単価の高いユーザーばかりではなくなるということです。また、ハイスペックな営業マンの数にも限りがあります。結果的に初期のような時間をかけたコンサルティングが難しくなってしまうのです。
そこで、リクルートは「プチコンサル営業」とでも言うべき手法を行います。これは言わば、「コンサル価値のパッケージ化」とでも言うべき手法です。例えば、じゃらんであれば、前回お話ししたように、ユーザーの要望を汲みとって「個室鍵付き温泉」などの商品を作りました。そして、マスメディアを用いてムーブメントを起こした上で、一つ一つの温泉宿に商品を提案していったのです。こうすれば、さほど一人ひとりのコンサルタントにお金をかけずとも、事業の拡大が可能になります。
以上がプラットフォームの質と量を向上させるための工夫ですが、リクルートの面白いところは、商品そのものの魅力を高めるために、編集のパワーも利用してきたところです。特に「特集ページ」の活かし方は、大変に重要です。
例えば、不動産では徒歩10分を超えると、途端に人気がなくなります。やはりリクルートを頼ってくるクライアントの多くは、このように人気の低い商品を抱えていて、困っている人が多いという事情があります。そこで、編集の力で"不人気商品"から新しい魅力を引き出してあげるのです。
仮に徒歩10分の物件が、周囲をしっかりと調べると、「夜でも道が明るくて、駅から緑の多い道を歩いていける物件」と言い換えられたとしましょう。すると、途端に健康志向の人に魅力を訴える商品になり、女性ユーザーの不安を取り除くこともできます。リーズナブルで、健康的で、安全な物件に変わってしまうのです。このように、編集部が特集ページを作って魅力を引き出すことで、物件のイメージが大きく変わります(し、その対価としてクライアントから報酬を上乗せしてもらうこともできてしまうわけです)。
まとめましょう。優秀な営業マンを集めた上で、目玉商品を作り、量を確保して、さらに人気の低い商品は編集の力で魅力を引き出す。これを配電盤モデルの中で機能させることで、ユーザーとクライアントを集めるループを加速させられます。さらに言えば、このように企業の生死に関わるビジネスを手がけると、人間は劇的に成長を遂げていきますから、企業における人材育成のループとしても機能しているといえるでしょう。
「以上の話をより詳しく知りたい方には、ホットペッパーを立ち上げた人が書いた、上の本をおすすめします。立ち上げの全てが赤裸々にかかれていて大変参考になります。ここまで書かれた本を認めるリクルートの度量の大きさに感動します」(尾原氏・談)
■ウィンスラーのマーケティングマトリックス
さて、ここまで「配電盤モデル」を中心にして、リクルートのビジネスモデルの巧妙さを見てきました。ここからは、以上のモデルに適したリクルートの事業領域がどういうものかを見て行きましょう。
ちなみに、実際のところ、リクルートはここまでの説明ほど体系化して、ビジネスを行っているわけではありません。以下に説明する事業領域の選択においても、それは同様です。実際には、とりあえず「おみくじビジネス」と前回に述べたライフステージの領域か、レジャービジネスの中でも特に市場領域の大きな分野を狙っている、という辺りが実情だと思います。
しかし、僕はさらに細かな基準からリクルートのビジネスを見ていくべきだと思っています。なぜなら、こういう視点で見ることで、リクルートにとってはさほど旨味はないが、しかし事業としては充分に成立するエリアで勝負をかけるためのヒントが、皆さんにも得られるのではないかと思うからです。
それでは、ここからはマーケティング分析でしばしば使われる、「ウィンスラーのマーケティングマトリックス」(以下、ウィンスラー)を用いて、リクルートが得意とする市場領域がどこなのかを説明したいと思います。まずは、このウィンスラーの解説から始めましょう。
このウィンスラーの中核にある発想は、縦軸にある「高関与/低関与」、横軸にある「不安払拭/欲望喚起」という2軸で区切られた4つの象限で、それぞれマーケティングのやり方が違っているというものです。簡単に各4象限についてエッセンスを説明しましょう。
<不安払拭-高関与型>
まず、「不安払拭-高関与」型の場合について。例えば、就職活動や住宅購入のように費用が大きく、人生において大きな意思決定を迫られる場合があります。
こういうときには、まずはユーザーの不安を解消するために十分に選択肢を与えて、じっくりと考える時間を与えるのが有効です。編集された記事を、それもメルマガや雑誌連載などの形で読ませることで、ゆっくりとユーザーの心を暖めていきます。問題解決を行う点で一種のコンサルであり、これを「説得型」と言います。また、最後のひと押しとして返金などの「効果保証」をつけるのもよくある手法です。
ちなみにですが、このコンサルを行う際には、どうしてもユーザーには既成概念を一度壊してもらう必要があります。しかし、その際にかえってユーザーが不安を劇的に高めてしまうことがしばしばあります。高額のダイエット商品や情報商材などでは、そういう方向にあえて仕向けることで、商品購入させる技術が大きく発展しています。そうした広告を見る際には、覚えておいた方が良い知識だと思います。
<不安払拭-低関与型>
一方で、「不安払拭-低関与」型の場合も存在しています。「わかめダイエット」などのような低額のダイエット商品は、その典型でしょう。
皆さんも、コメディアンなどの親しみやすい人が、「こんな私でも出来た!」なんてキャッチコピーがついて広告に出ているのを見たことがありませんか。この領域で重要なのは、自分にも簡単にできそうだと思ってもらえることです。さほど説得に手間をかける必要はないので、「低関与」となるわけです。
<欲望喚起-低関与型>
では、「欲望喚起」型の場合はどうでしょうか。例えば、飲料水などの、特に購入に大きな意思決定を必要としない商品がその典型です。こうした商品ではユーザーに「この商品を飲みたい!」という気分を起こさせれば、あまり迷うことなく買ってくれます。
ですから、むしろいかに出会い頭のインパクトで、購入の衝動をかきたてられるかが重要です。そこで重要になるのは編集された記事よりも、視覚的にインパクトのある広告や、「みんなも買っているから私も!」と思わせる空気感の醸成などの方になります。ですから、やはり最も多いのは、「欲望喚起-低関与」型になります。
「欲望喚起-低関与」で特徴的なのは、購入動機がユーザー同士の間で感染していくことです。例えば、好きなアイドルがその商品を使っていたということが、十分に購入動機になるのです。缶コーヒーなどでよく使われる手法です。
<欲望喚起-高関与型>
逆に「欲望喚起-高関与」型の典型は、結婚式場です。これを上手くやっているのが前回の終わりに話したゼクシィでしょう。
ユーザーに「幸せの迷いの森」を提供することで、あれこれとスペックを比較してもらいながら意思決定へと導いています。また、この場合には「コミュニケーション消費」が多くの場合で伴われるのが特徴です。やはり、自分の欲望で、しかもあれこれ迷いながら選んだものだけに、個人的な要素が強く出るのです。
ですから、ソーシャルメディアなどで、いかにそんな自分を綺麗に見せてあげるかの仕掛けをつくるのが重要となります。また、コミュニケーション消費の基本は「みんなと違うことをしたいけど、外れたくはない」ですから、流行を上手に生み出してあげるのも大事になってきます。
この仕掛けが優れているものの代表例がディズニーランドです。新しいアトラクションが出ると、さりげなくシェアしやすい写真が撮れる撮影スポット・アイテムを用意していたり、キャラクターやグッズはハロウィーンなど次々と季節な変化が重ねられていって、コミュニケーション消費を誘発させていってます。更には最近だと、ゲスト自ら、ペアルックで行くこともあり、これは「ディズニーという統一された世界の中で、私達だけ同じ」という仲間をコミュニケーション消費するという独自進化をしていると言えます。
■リクルートの得意とする事業領域
こうした市場領域にリクルートのビジネスを当てはめてみると、以下のような図が描けるはずです。
※ 開始当初の市場内でのポジションです。後述するように、現在は少し変わっています。
図を見てもらえば、すぐに分かるでしょう。リクルートはこの図の下段にある高関与型のビジネスを成功させてきた企業です。実は(後述するように)事業が成功した副次効果として、現在では各々の事業のポジションが変化しているのですが、ひとまずは<不安払拭-高関与>の、高い編集力と説得型のマーケティングを強みとしてきた企業だとよくわかると思います。まさに、先の優れた営業マンが必要とされる理由でもあります。以上を踏まえて、さらにリクルートが強みになる事業領域の条件を5つほど考えてみましょう。
まず、一つ目としては、何度も説明してきたように、専門家と素人の間に知識ギャップが大きく開いている分野が考えられます。
この市場では、昨今ではGoogleのような検索エンジンが強力になっているので、ストック型のコンテンツを用意したサービスが強みを持ちます。nanapiはその代表的な成功例でしょう。ただし、どこかで素人の知識は追い付いてきます。例えば、引っ越し情報などは、春休みなどのたびに毎回ネット上に情報が増えて拡散されていきます。そういう場合には、トレンドを重視したフロー型のコンテンツマーケティングも重要になってくるでしょう。
また、二つ目として、業界の不透明さが高い場合も狙い目です。中古車市場などはその典型でした。ディーラーが取り仕切っており、多くの人に胡散臭いと思われていた市場を、リクルートは公平な第三者の立場で入って行くことで、明るい雰囲気の安心できる市場に変えました。
三つ目として、市場構造が分散している領域も挙げられます。企業が3つしか無いような寡占市場であれば、ユーザーの意思決定に困難はさほどありませんが、中古車市場や旅館市場などのように企業の数が多い領域であればあるほど、リクルートのような事業者は重要になってきます。まさに編集を活かした高い関与が活きる領域です。
また、かつての結婚市場のように、実質的に玉姫殿のような事業者が寡占していた状態で、テイクアンドギブ・ニーズなどの事業者を市場に育てるプレイヤーとして、メディアから参入する手法も存在しています。
一方で、プラットフォームに商品を提供するクライアントを獲得する視点からも、2つほど条件が挙げられます。
また、企業の視点から言えば、「ローカル度」の低い企業であればあるほど、リクルートのようなプラットフォームの存在はありがたいでしょう。例えば、『ゼクシィ』は都市部では圧倒的な人気ですが、九州では結婚情報誌の『メロン』が長らく人気を得ていました(昨年の3月に休刊)。地域に密着した企業の場合には、その中で完結してしまうので、特にリクルートのような企業が入ってくるありがたみはないのです。
しかし、やはりもっとも需要が大きいのは、顧客探索難易度が高い領域です。具体的には、いつ顧客がそれを思いつくかわからない領域がそれに当たるでしょう。例えば、新卒採用などは大学4年生のある時期になれば確実に始まることなわけで、ある意味では簡単な領域と言えます。一方で非常に難しいのが、転職活動です。いつ思いつくのかが、バラバラだからです。
これについては、現在ではGoogleが存在しているので、検索エンジンに欲望を示す言葉を入力した瞬間、つまり検索結果に狙いをつければ、しっかりと拾えるようになっています。ただし、この時点では既に競合がひしめき合ってますから、重要なのはさらにその手前で獲っていくことです。例えば、会社員が夜の帰り道に電車で揺られながらため息を吐いているとき、ふと目をやると転職の広告がある――こういうふうに言語化する以前の段階から、その欲望を拾い上げてしまうのが大事なのです。
■リクルートを取り巻く環境の変化
ここまで、リクルートの強みを見てきました。皆さんが真似できる点が多々あったのではないかと思います。しかし、こうしたリクルートの事業はインターネット時代に入って、大きく形を変え始めています。
例えば、2000年代の半ばに始まったWeb2.0と言われる流れは、リクルートのビジネスに大きな影響を与えるものです。リクルートの強味は、ユーザが転職や結婚を何度も経験しない「しろうと」だからと前回説明しましたが、インターネットの力によって、素人が知識をつけて、素人でなくなるまでの時間がどんどん早まっています。また、ソーシャルメディアの発達で、例えば転職活動の際にリクルートエージェントを頼らずに、Facebookの友人経由で探すことがなども可能になりました。
もっと大きな問題もあります。リクルートが頑張って「ゼクシィ」で結婚式についての情報を提供しても、最後の最後の一番大事なところで、ユーザーが検索エンジンに入れた情報から直接、結婚式場に連絡をとってしまうのが増えてきました。中には、アルバイト情報サイトのリブセンスのように、自分のサイトから応募してくれた人に前祝い金を渡す企業さえあります。言わば、もっとも重要な、顧客までの「ラストワンマイル」が検索エンジンやそこだけをターゲットにしたサイトに奪われてしまうのです。
一方で、ビジネスモデルそのものにも、大きな変革の流れが訪れています。
リクルートのビジネスは、基本的に「前課金」型――すなわち、事前にクライアントからお金をいただくビジネスです。したがって、広告を出したのに商品が売れなかった場合には、「すいません。もう一度やりましょう」と営業がお客さんに働きかけて、再びリクルートへの期待を復活させなければなりません。つまり、「期待値調整」型のビジネスなのです。
それに対して、例えばリブセンスのような企業は、ユーザーと企業のマッチングが成功した場合に報酬をもらうという、「成果報酬」型の従量課金モデルです。さらには、最近は「ケイコとマナブ」の競合として「趣味なび」という非常にユニークなモデルのサイトが登場しています。このプラットフォームでは、企業の掲載、ユーザ利用、全て完全に無料です。じゃあ、どこで儲けるかというと、レッスン場で企業の販促プロモを試してもらい、そのクライアントから報酬を得ています。また、その場で得た感想を企業にフィードバックすれば、優れたリサーチ情報になります。
つまり、無料で広めて、一部の方に課金するフリーミアムモデルですらなく、無料で広げて別の場所で課金する、マネーポイントをずらすエネーブラーモデルが応用されています。
(エネーブラーモデルは Airレジの回を参照してください)
こうしたビジネスは、かつての紙では固定費が高くて、簡単に手を出せる分野ではありませんでした。しかも、掲載料が無料だから、特に営業マンも入りません。大手の広告主への営業は必要だと思いますが、それは広告代理店にお願いすればよいのです。
こうした前課金から従量課金、さらにはフリーミアムへの変化というのは、インターネットの大きなトレンドでもあります。
インターネット企業からは、かつての大企業のような4000人を食わせるプラットフォームのような存在は中々生まれづらいところがあります。しかし、代わりに数名での社員で大規模なビジネスを行うような企業が無数に生まれてくるのがインターネットです。結果的に、市場そのものが縮小していくように見えて、従業員1人あたりで見ると効率化の恩恵でかつてより大きな収益を得ている。これがインターネット時代のビジネスのあり方です。
その結果として、ハイスペック人材による「参入障壁の構築」、それによる「高資本化」というリクルートの強みに対して、競合が無数に増えつづけている状況なのです。
■リクルートの今後
まとめてしまえば、市場全体がインターネットのもたらす効率化と新しいビジネスモデルによって、高関与から低関与へと移行しているとも言えます。また同時に、リクルート的事業が浸透することで不透明な事業領域が減っていくことで不安払拭よりは欲望喚起の方が重要になりだしてもいます。そうした市場の変化で、リクルートの事業のウィンスラーにおける位置づけも、以下のように変化していると言えるでしょう。
その意味で今後、リクルートはこれまでの手法を活かしながらも、従来のノウハウにとどまらない柔軟な考え方が必要になっていくのではないでしょうか。
一方で、リクルートはこれまでに世の中に、多くの選択肢を増やしてきました。その結果、中小企業が新しいチャレンジをした際に、大きく成長していく可能性を提供してきましたが、まだまだ選択肢を増やせる領域はありますし、そういう領域を増やしていくべきです。
ちなみに、僕はリクルートの凄さを不安払拭型だけでなく、ウィンスラーの右下にある<欲望喚起-高関与型>の、まさに『ゼクシィ』のようなビジネスを成功させてきたことに感じます。
しばしば、僕は「過剰と余剰のインターネット」という言い方をします。これはネットユーザー同士が互いに個性をぶつけあってトレンドが生まれていくようなあり方を指しているのですが、『ゼクシィ』などでリクルートが成し遂げてきた、プラットフォームが自ら流行を作り出して、ユーザーの「コミュニケーション消費」を喚起していくモデルも、まだまだ有効だと思います。
こうした発想はいろんなサービスのヒントになるのではないでしょうか。そうやって、人生における新しい選択肢が増えること、そこに喜んでお金が払われることで日本の中小独立事業者さんが多様性とともに分厚くなればいいとおもいます。
ですから、先日は江副さんの命日だったこともあり、この言葉で締めたく思います。
――「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」
私の、このリクルートについての連載3万字は、この一言に敵わないでしょう。
(次回に続く)
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次回は、GoogleとAppleという世界を代表する二大プラットフォームの運営思想について考えます。彼らの最新の思想は、実は意外にもGoogle GlassやApple Watchのプロモビデオに凝縮されています。そこから見える「5年後」の未来を、一緒に考えてみましょう。(読みたい方はこちらから)
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▼執筆者プロフィール
尾原和啓(おばら・かずひろ)
1970年生。京都大学大学院工学研究科修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現:KLab)、コーポレートディレクション、サイバード、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Googleなどの事業企画、投資、新規事業に従事。また、ボランティアで「TED」カンファレンスの日本オーディションにも携わる。米国西海岸カウンターカルチャー事情にも詳しい。2014年1月に初の著書『ITビジネスの原理』(NHK出版)を出版。
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▼PLANETSチャンネルが自信を持ってお薦めする、これからのインターネット・カルチャーを考える連載記事はこちらから。
・「笑ってコラえて!」「嵐にしやがれ」出演など、お茶の間でも大ブレイク中! 現代の魔術師・落合陽一が情報革命後の「メディア」と「人間」の関係を構想します。
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