『日刊スパ』が掲載していた「有名企業の産業医が『仕事環境』別にうつを分類」という記事が興味深かったので、これについて少し。
1 記事の紹介
「仕事環境別うつの分類」として、4つのパターンが提示されています。
1つめが、【ブラック企業型】で例として「外食チェーン業界、小売業界などに多い」としております。「薄給なのに実現不可能なノルマを課され、達成できないと恫喝される理不尽がまかり通る」上に、「上司の言うことは絶対で、パワハラやセクハラが常態化」しており、「日々の仕事はスキルアップに繋がらない単純労働」だそうです。
2つめが、【外資企業型】で、例として、「コンサルティング会社、IT系、金融系などに多い」としています。「常に能力の限界以上の目標達成を強要し、言質を取って、達成できなければ『あなたが決めた目標でしょう』と責められる」ということが紹介されています。
3つめが、【新進イケイケ企業型】で、例として、「某大手通信会社、某大手アパレル会社」を挙げています。そして、「カリスマ性のあるトップはイケイケの躁状態で、3年以内に東証一部上場だの、世界進出だの大きな夢を掲げる。社員はトップの夢に振り回されてうつ状態に。中間層の社員は目標管理や自分磨きを強要され、下層の社員はノルマに疲弊しているという構図」だそうです。
4つめが、【最後の楽園型】で、例として「地方公務員、テレビ局や新聞社などの大手マスコミ」が挙げられるそうです。「労働組合が強かったりで、現在まで完全な終身雇用制を貫いて」いる一方で、「働かなくてもクビにならない」のは良くても、「周囲に白い目で見られながらの会社生活は、ある意味ぬるい地獄」としております。
2 楽な生き方はない
ま、仕事をしていれば多かれ少なかれ皆思うことですが、この世に楽な仕事はなく、単純作業ばかりやらされると嫌になるし、かといって毎回何かアイディアを出せと言われるとそれもかなり辛いものがあるといったところでしょうか。
よくあるパターンで「隣の芝生は青い」ということで(日本人が規律正しいのは幼児教育の結果?)、実際自分で経験してみると、当初想像していたのと全く違うということはよくあります。
そうした思いこみの格差をなくすためにインターンなどの制度が設けられていますが、確かに会社の雰囲気として、どういうものかを知ることはできますが、所詮はお客様ですので、仕事を自分の責任として、任された時の本当の意味でも辛さを知るのは結構難しいかもしれません。
大学なども学生を集めるために「宣伝」をしており、当初聞かされていたこととは、全く違う実態に失望してしまう学生も多いようですが、大学の場合はまだ新たにやり直すという選択肢があります(別の大学を目指す大学生「仮面浪人」が増えている理由)。
ところが、就職の場合だと、どうしても何だかんだいって「終身雇用制」が中途半端に生き残っているので、新卒で正社員の職を見つけないといろいろ不利益を被ることとなります。
おそらく日本の場合「うつ」になるのは、こうした逃げ道がないことと関連しているのではないでしょうか。もし他に逃げ道があれば、今の仕事が嫌になっても別の仕事という可能性があるわけですが、それがなかなか難しいから頑張って病気になってしまうというパターンかと思います。
3 「逃げる」ことの重要性
ただ本当に思うのは、頑張りすぎて病気になってしまっては元も子もないということです。病気になってしまえば、結局退職せざるを得ないパターンが殆どでしょうし、病気を抱えて新たな仕事を見つけるのは本当に大変です。
人間、死んでしまったらお仕舞いなので、過労死しそうになったり、自殺するしかないと思ったり、病気になりそうなら、本当に最後は「逃げる」という選択肢を選ぶのも有りかと思っています(ふかわりょうが安室奈美恵を批判できた理由から学ぶべきこと)。
旧日本軍ではありませんが、「逃げる」ことを「恥」と思っている人が多い様ですが、かなわない相手にむやみに勝負を挑むのは「無謀」以外の何者でもなく、一旦は逃げても、後日戦力を蓄えて改めて勝負を挑む、こうした発想が大事なのではないかと考えます(『この世でいちばん大事な「カネ」の話』)。
ただ、現実問題として、「後日」が来るということはなかなか難しいことであるのは、間違いないとも考えますが・・・。
(※2013年7月28日の「政治学に関係するものらしきもの」より転載しました。)