火山国の日本は火山災害と向き合わざるを得ない。日本列島で今後100年間に巨大カルデラ噴火が起こる確率は1%とする分析結果を、神戸大学大学院理学研究科の巽好幸(たつみ よしゆき)教授と鈴木桂子(すずき けいこ)准教授が10月22日都内で会見して発表した。日本列島で過去12万年間に起きた火山噴火の規模と発生頻度を統計的に解析してまとめた。日本の存亡にも関わるような巨大噴火への備えを警告する予測として注目される。その研究論文は11月11日の日本学士院紀要に掲載される。
研究グループは、日本列島で12万年前から発生した火山活動447回の規模と発生頻度を調べ、通常の山体噴火と、カルデラの形成を伴うような巨大噴火が異なる仕組みで起きることを突き止めた。山体噴火は、マグマだまりに新しいマグマが地下から供給されて、圧力や温度の上昇が原因と考えられる。これに対し、巨大カルデラ噴火は、巨大なマグマだまり内でマグマ自身の浮力によって上部に亀裂が生じると解釈できた。また、巨大カルデラ噴火の火山は地殻の変形速度が遅い地域にあることがわかった。このような地域では、粘り気の高いマグマが次々と地殻内を上昇し、巨大なマグマだまりを形成しやすいとみられている。
日本での巨大カルデラ噴火は12万年前から、少なくとも10回起きたことが確認されている。その発生頻度を統計学的に解析して、将来の噴火発生確率を求めた。その結果、日本列島で今後100年間に、マグマ噴出量が40立方km、火山灰量が100立方kmの巨大カルデラ噴火が起こる確率は1%であることがわかった。巽好幸教授は「兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)発生前日における30年発生確率と同程度の確率で、このような巨大噴火がいつ起こっても不思議ではない」と指摘している。
さらに規模が巨大で、火山灰量が1000立方kmに達して日本列島全体に壊滅的影響を与える最大級の噴火は今後100年間で起きる確率が0.25%と分析した。過去12万年間で7回も巨大カルデラ噴火が繰り返された九州の中部~南部で発生すると仮定して最悪のシナリオを想定すると、火砕流が2時間以内に700万人の人口居住域を埋め尽くし、大量の火山灰は偏西風に乗って東に流れ、北海道東部を除く日本全域で1億2000万人が生活不能になる恐れもあるという。
巽好幸教授は「巨大カルデラ噴火は、まれだが、起きれば、重大な脅威となる。マグマだまりを正確に捉える技術の開発が必要だ。巨大カルデラ噴火の危険地帯である九州の地下も継続的にモニタリングしてほしい」と提言している。
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・神戸大学 プレスリリース