植物の葉は飛行機の翼と同じように超効率的な構造だった。葉が薄くても壊れずに長い年月その構造を維持できる秘訣を、京都大学大学院農学研究科の小野田雄介(おのだ ゆうすけ)助教らが新しく開発した測定法で解明した。盛んに光合成する葉は、工学でも使われている非常に効率的なサンドイッチ構造(薄く硬い表面材と厚く柔らかい芯材から構成される)をとり、限られた資源で曲げに強い平面構造を達成していることがわかった。
陸上の植物は約5億年の進化を経て、「薄くかつ力学的にも安定」という相反する制約を克服して、極めて洗練された葉の構造を獲得してきた。薄くて耐久性の高い構造設計の参考にもなるような植物の「匠の技」といえる。オランダのユトレヒト大学との共同研究で、2月12日付の英科学誌Journal of Experimental Botanyオンライン版に発表した。
植物の葉は、効率的な光吸収のために薄い構造をもっているが、多少の風雨にさらされても壊れずに耐え、長いものでは10年以上の寿命がある。葉の断面をみると、外側の表皮組織と内側の葉肉組織に大別でき、翼やスキー板、段ボールなどに使われているサンドイッチ構造に似ている。しかし、表皮組織と葉肉組織が密着しているため、両組織の硬さをそれぞれ測定することは難しく、葉がどの程度効率的な構造なのかは分かっていなかった。
研究グループは、葉の組織を分解せずに、引っ張り試験と曲げ試験を組み合わせて、表皮組織と葉肉組織の硬さを測る独自の方法を考案した。この方法で36種類の多様な植物の葉を詳しく測定した。草か木にかかわらず、薄い表皮組織は軟らかい葉肉組織に比べ、けた違いに硬く、非常に効率的なサンドイッチ構造であることを突き止めた。表皮の硬さでは、表皮組織の最外面にあるクチクラ(厚さ0.1~10um程度)が特に重要なことも確かめた。
小野田雄介助教は「生物の形と機能はその生態や進化を理解する上で重要である。今回の研究で、植物の葉は薄くても丈夫という相反する条件を巧みに満たしていることがわかった。この葉の優れた特性が、薄くかつ耐久性の高い構造設計に応用されるよう期待したい。身の回りの植物を違った視点で見るきっかけにもしてほしい」と話している。
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・京都大学 プレスリリース