B型肝炎ウイルスを抑制する仕組み発見

肝硬変や肝がんの原因となるB型肝炎ウイルス(HBV)の研究で新しい手がかりが見つかった。

肝硬変や肝がんの原因となるB型肝炎ウイルス(HBV)の研究で新しい手がかりが見つかった。感染初期にHBVを認識する自然免疫センサーの分子を、北海道大学遺伝子病制御研究所の髙岡晃教(たかおか あきのり)教授と佐藤精一(さとうせいいち)助教、大学院生の李凱(リ カイ)さん、亀山武志(かめやま たけし)助教、林隆也(はやし たかや)助教らが初めて突き止めた。

この分子は細胞内タンパク質のRIG-Iで、HBVの認識だけでなく、ウイルスの増殖を直接抑える二重の作用があった。B型肝炎の病態解明と治療法開発につながる発見といえる。厚生労働科学研究費補助金のB型肝炎創薬実用化等研究=代表・田中靖人(たなか やすひと)名古屋市立大学教授=の一環で、1月1日に米科学誌イミュニティ1月号に発表した。

HBVの持続感染者は世界で約4億人、日本でも100万人を超えており、重要な疾患である。HBVはDNAウイルスで、ヒト肝細胞に感染し、肝炎だけでなく、長い年月を経て肝硬変やがんにも進行する危険性がある。しかし、「ステルスウイルス」とも呼ばれ、その病態はよくわかっていない。研究グループは、HBVがヒト肝細胞に感染した際に感知するセンサー分子は何か、どのような免疫応答が起こるのかを、自然免疫に着目して調べた。

その結果、これまで細胞内のRNAセンサーとして知られていた RIG-IによってHBVが認識されることを見いだした。RIG-Iは、HBVが感染したヒト肝細胞でウイルス複製途中に出現する特定のウイルス RNA(pgRNA)を感知して、抗ウイルス活性のあるインターフェロンλ(ラムダ)を産生し、感染防御を誘導することを実証した。

一方、RIG-Iには、pgRNAのヘアピン部分に結合してウイルスの複製を 阻害する働きがあることも、ヒト肝細胞の培養実験で発見した。RIG-Iはセンサーとして自然免疫を活性化するのに加え、直接的な抗ウイルス因子としても機能し、両面の作用を介して HBVへの防御に働いていることを確かめた。RIG-Iによる複製阻害の仕組みに基づいた視点からB型肝炎を治療できる可能性も、ヒト肝臓を移植したマウスの実験で浮かび上がった。

髙岡晃教教授は「HBVへの自然免疫のセンサーとして、RNAウイルスを認識するRIG-Iが働くことは意外だったが、さらに、直接的にウイルス複製を抑制する作用もあることは興味深い。それぞれインターフェロンλと、HBVの遺伝子 DNAが作りだすRNAとの結合部位が鍵を握る。RNAとの結合部位はHBV複製のスイッチとも見なせる。 B型肝炎への治療法開発に役立つ新知見だろう」と話している。

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北海道大学 プレスリリース

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