■「しんかい6500」に乗船
巨大なダイオウイカが何度も打ちあがったり、お化けダンゴムシのようなダイオウグソクムシが静かなブームになったりと、深海ブームが続いている。
そんななか深海調査の専門家集団であるJAMSTEC横須賀本部に、朝日小学生新聞で連載中のさかなクンといっしょに潜入した。
「ギョギョギョ!これが本物ですか!」格納庫に入るとそこには我国唯一、世界でも有数の潜航能力を誇る有人潜水調査船「しんかい6500」が整備のためしずかに鎮座していた。今回我々は実機の内部にも入ることに成功した。
さかなクンがしんかい6500の実機に乗るのは初めて。いつもにもまして興奮気味で、上部のハッチから船内に降りていった。
■「宇宙以上に過酷」
「しんかい6500」は全長9・7メートルと大きな船に見えるが、実際に人が乗りこめる場所は、前方にある直径2メートルのチタン製鉄球の中だけだ。水深6500メートルの深海では、船内外の気圧差は約650気圧にも及ぶ。月に行こうが火星に行こうが、宇宙船の気圧差が1気圧程度であることと比較しても、圧力差に関して言えば、深海がいかに過酷な環境であるかがわかる。
船を案内してくれたのはこれまで319回も深海に潜った経験のある元深海調査船パイロットの吉梅剛さん。船内は通常、パイロットと副パイロット、それに一人の研究者が乗り込む。
吉梅さんの経験は著書『ぼくは「しんかい6500」のパイロット』に詳しいが、これまでにアブラソコムツの大群が船に体当たりをしてきて船が揺らされたことや、熱水が噴き出す場所の調査で、あまりの勢いに船が吹き飛ばされそうになる経験などが忘れられないという。
2012年4月、私もこの船に乗って静岡県・駿河湾の深海を旅したことがある。ハッチを閉める直前、その接点に髪の毛などの異物が挟み込まれないか、パイロットが入念に確かめていた光景が忘れられない。重い扉が3本の爪で確実に閉ざされると、あとはチタン球に命を預け、暗い海の底に沈んでいった。
■「いつか深海に潜りたい」さかなクン
船には前方に3つの小さな丸い窓がある。この窓こそが有人船の最大の特徴だ。船には400ワットのライトが計7個も付いているが、それでも深海での視界はおおむね10メートル。その一歩先に捜し求める未知の生物や、世界を変える鉱物資源があったとしても、見えなければ人類が出会うことはない。それでも、人がわざわざでかけて「見る」ということにこだわって、この船は運転され続けてきた。今年は完成から25周年。
「いつかこの窓から深海の世界を見てみたい!」と真剣な表情で話すさかなクンだった。
このもようは、親子で楽しくニュースが学べる「朝日小学生新聞」の連載「おしえてさかなクン」で紹介中。「朝小」7日間無料試読はこちら。