こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
都知事選挙の候補者擁立の動きが慌ただしくなってきました。
政局による候補者選びばかりが先行して、
肝心の政策的な「争点」が出てこないわけですが、
・東京五輪
・防災対策
・子育て支援など社会保障の充実
など、誰が知事候補になるとしてもやるべきことは明確で、
方向性の違いはあるにせよ、重点を置く分野は差別化が難しいことは確かです。
そんなことを関係者らと議論していたら、
「じゃあオトキタさんがもし出馬するなら、何を目玉公約に掲げますか?」
と聞かれまして、少し考えた後に
「容積率の緩和でさらなる東京の成長を目指し、その利益をすべて将来世代に投資する」
ことかなと答えました。
キャッチフレーズは「東京をタテに伸ばす(成長させる)」!
「容積率」とは、建築物の敷地面積に対する延べ床面積の割合です。
建物をつくる際には場所によって延べ床面積に制限があり、すんごく簡単にいえば
高さ制限があるわけです(フロアを増やせば延べ床面積が増えるため)。
この規制を撤廃し、容積率を爆増させれば、
東京都にはかなりの成長余地があることは大前研一氏も以前から指摘しています。
大前研一氏 成長戦略で最も重要なのは容積率の緩和と指摘
大前氏によると、東京都は平均使用容積率は厳しい基準により、
23区内で136%、山手線の内側でも236%に留まってます。これは高さに換算すると、
東京23区内で平均1.3階建て、山の手線内に限っても平均2.3階建てに過ぎません。
これを海外と比べてみると、パリ市の都心部は平均6階建ての高さであり、
ニューヨーク(マンハッタン)では平均使用容積率が住宅街で約630%、
オフィス街のミッドタウンで約1400%となっているそうです。
つまり、都内の容積率基準をパリ・ニューヨーク並に緩和・活用するだけで、
東京都は今の数倍の土地を手にすることが事実上可能になります。
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さらに重要な点は、こうした規制緩和は国の法律ではなく、
東京都の裁量でかなりの部分がコントロール可能である点です。
(運用基準を設けているのは東京都)
例えば大手町の丸ビル・新丸ビルは、公共のためのオープンスペースを設けることを条件に
東京都が大幅な容積率の緩和を認め、容積率1000%が上限だった同エリアにおいて
1400%を超える巨大な建築物として誕生しました。
(画像はWikipediaより)
その経済効果は、誰しもが認める通りです。
急速に発展するアジア各国の諸都市を見ても、都心部に高層ビルをニョキニョキ建てて、
産業を集積させて利便性を向上し、さらなる経済波及効果を高めています。
そして丸ビルの例と同様に、今後は敷地内・建物内に保育所や特養を設けることを条件に、
ニーズの高いエリアで容積率をどんどん緩和していけば、
経済効果だけではなく福祉の充実にもつながります。
土地不足が叫ばれ、公園に保育所設置を計画すれば住民の反対で潰される。
こうした状況下にある東京都において効果的に打てる手の一つが、
目の間にある「空」を使う容積率の緩和なのです。
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もちろん、課題はあります。
諸外国と違って日本には頻繁な地震がありますし、
これまた海外にはあまりない「日照権」という概念が障壁になります。
しかし前者は技術でかなりの部分が解決できますし、
後者の日照権は日影規制を規定しているのは自治体の条例なので、
こちらも知事がその気になれば緩和することは可能なはずです。
容積率を緩和し、産業と人口を集積し、さらなる経済成長を図る。
そしてその成長で得た果実は、子育て支援や教育、若年層・ファミリー層の住宅補助など、
将来世代に向けて徹底的に支出する。それが少子化対策につながる。
高齢化対策のようなある意味での「後ろ向き」な撤退戦略ばかりではなく、
こうした具体的な「攻め」の成長戦略を描き、都民に夢を持たせることが、
新たな東京都知事に求められる役割ではないでしょうか。
ちなみに現在、都知事候補で名前が上がっている増田寛也氏は、
まったく逆に東京の人材や財源を地方に移譲することを説いてきた権化みたいな人です。
東京都知事選 「税収の地方再配分と都知事は矛盾」秋田知事、増田寛也氏を疑問視(産経新聞)
東京を貧しくしたところで地方が豊かにならないことは、
地方創生のバラマキ政策失敗からすでに明らかであり、
自民党都連が担ごうとしている点も含めて大きな疑問が残ります。
経済成長戦略でありながら、待機児童や待機老人解消の切り札ともなる容積率緩和。
ぜひとも政策の一つとして、この「東京をタテに伸ばす」ことを公約に入れてくれる
候補者が出てくることを期待し、また私としても実際に働きかけをしていきたいと思います。
候補者選定の政局に関しては言いたいことが山ほどありますが、
それが情勢がもう少し出揃ったらまた改めて…。
それでは、また明日。
(2016年7月5日「おときた駿オフィシャルブログ」より転載)