「もうおねがいゆるして」防げなかった虐待死…東京都と児童相談所は何を変えるべきか

生前に衝撃的な内容のノートが残されていたことが報じられました。多くの人に原文を知っていただきたく、全文を引用いたします。
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こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

「もうおねがい ゆるしてください」死亡した5歳女児のノート

東京都・目黒区で今年3月、5歳女児が虐待死した事件で、生前に衝撃的な内容のノートが残されていたことが報じられました。

この悲劇を繰り返さないため、多くの人に原文を知っていただきたく、以下に全文を引用いたします。

ママ

もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから きょうよりかもっと あしたはできるようにするから

もうおねがいゆるして ゆるしてください おねがいします

ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして

きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす

これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします

もう あしたはぜったいやるんだぞとおもって いっしょうけんめいやる やるぞ

引用元

このような最悪の悲劇を招いてしまったこと、本当に忸怩たる思いです。

亡くなられた女児に、心よりご冥福をお祈り致します。

本事件における最大の問題の一つは、児童相談所が虐待疑惑について把握していながら、結果として未然に防ぐことができなかったことです。

すでに報じられている通り、容疑者である両親は以前住んでいた香川県でも問題を起こし、香川県の児童相談所が二度に渡り一時保護の対応を取っていました。

そして転居後に香川県から対応を引き継いた都児童相談所が家庭訪問を行うも、5歳女児の状況は確認できなかったという失態を犯しています。

なぜ二度までも一時保護対応をした児童を、そのまま家庭復帰させてしまったのか。

警察と協力して、子どもの安否確認を強く求められなかったのか。

親権停止などの処分をして、子どもを社会的養護下に措置することはできなかったのか。

事態を防げたタイミングが何度もあっただけに、極めて遺憾という他ありません。

東京都のみならず我が国の児童相談所は、両親が健在の場合、基本的には親権に配慮し親元に子どもを返す(親の意思を優先する)傾向があります。

これにはいくつかの重大な背景が存在します。

・我が国の法慣習中、極めて親権が強く、子どもの人権や意思が軽視されていること

・各自治体の児童相談所職員や一時保護所のキャパシティが限界を迎えていること

・前例踏襲主義になっていること

などです。

日本における異様な「親権の強さ」については、これまでもたびたび課題として取り上げてきました。

参考過去記事:

「日本は親権が強すぎる」と言われるけど、具体的にそれってどういうことなの?

親権という法律分野の課題については、国会で精力的な議論と改善が行われることが必要です。

一方で、児童相談所を所管する広域自治体(東京都など)が速やかに行うべき対応もあります。

職員や一時保護所の数が不足すると、本来であれば保護すべき児童を見逃してしまったり、家庭に返してしまう事態を誘発しかねません。

参考過去記事:

滞在100日超え、1年以上も...「一時保護所」の子どもたちを取り巻く環境

都も毎年のように予算や人員の拡充を続けていますが、逐次投入ではなく、ここには大胆に予算配分を増やしていくことが必要です。

特に福祉人材は、予算を手厚くしたからといってすぐに人数が増やせるものではありませんから、逆に一刻も早い予算措置が求められます。

そして予算投入でキャパシティを拡充していく以外にも、打つべき手はあります。

最高裁判例などの法慣習で親権が極めて強いとはいえ、児童福祉法も改善されてきており、いわゆる「28条措置」を行えば現行でも親権停止・剥奪に踏み切ることは可能です。

しかしながら、前例踏襲主義やキャパシティ・能力の不足から、児童相談所はこの決断に踏み切るのはなかなか難しいのが実情となっています。

そこで児童相談所に「常勤弁護士」を配属することで、法律対応への不安を払拭し、親権停止などの措置に踏み出しやすくする施策が考えられます。

参考過去記事:

福祉職の弱点をサポートし、子どもの権利を保障。児童相談所に常勤の弁護士を!

児童相談所への常勤弁護士配属はすでに名古屋市や福岡市などで先例があり、里親委託数の増加にも寄与していると言われています。

また、虐待情報を速やかに・全県を警察と共有することで、最悪の事態を防げる可能性は高まります。

参考過去記事:

痛ましい虐待死を防ぐには、児童相談所と警視庁の「全件情報共有」を実施せよ!

こちらもすでに茨城県や愛知県で実績があり、都でも早期の実施が望まれます。

今回、残念ながら虐待死事件を防げなかった都は、事態を改めて重く受け止め、こうした施策を早急に検討していく必要があるでしょう。

社会的養護・児童擁護の分野に前期から注力してきた都議の一人として、痛ましい事件を二度と起こさないために、引き続き議会から強く提言を続けて参ります。

それでは、また明日。

※社会的養護・児童養護に関するその他過去記事はこちら↓

(2018年6月6日おときた駿ブログより転載)

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