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2018年03月02日 14時24分 JST | 更新 2018年03月02日 14時27分 JST

国籍・民族・LGBT差別の解消を明記、苦情処理委を設置へ 世田谷区で条例が成立

「おそらく初めて」の取り組み

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国籍・民族の違いを理由にした差別や、性的少数者(LGBT)への差別など、包括的な差別の解消を明記し、苦情処理を規定した東京都世田谷区の条例案が、3月2日の区議会定例会本会議で、賛成多数で可決、成立した。4月1日から施行される。

罰則はないが、苦情処理委員会を設け、区民の申し立てを受けて調査するのが大きな特色だ。区や専門家によると、国籍や民族による差別について苦情処理の仕組みを設けるのは「おそらく初めて」という。

■「差別の解消」を規定

条例案は「世田谷区多様性を認め合い男女共同参画と多文化共生を推進する条例」。全ての人が「多様性を認め合い、人権が尊重され、尊厳を持って生きることができる」との基本理念を掲げる。

「差別の解消」という項目が設けられ、「不当な差別的取扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならない」と定めた。

第7条 何人も、性別等の違い又は国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる不当な差別的取扱いをすることにより、他人の権利利益を侵害してはならない。
2 何人も、公衆に表示する情報について、性別等の違い又は国籍、民族等の異なる人々の文化的違いによる不当な差別を助長することのないよう留意しなければならない。

性的少数者の権利擁護に取り組む中川重徳弁護士は「実質的な差別禁止規定であり、罰則がなくても社会の基本ルールを明示することに意味がある。性的指向や性自認による偏見や固定観念が根強く残る状況で、啓発の意味は非常に大きい」と話す。

■「苦情処理委員会」そのモデルと対象は

苦情処理委は区長の諮問機関で、有識者ら3人で構成する。全国の自治体で男女差別の苦情受付機関として設置されている仕組みをモデルとしており、性的少数者への差別や、国籍や民族による差別にも適用する。

第12条 苦情の申立て等について、公正かつ適切に処理するため、区長の附属機関として、世田谷区男女共同参画・多文化共生苦情処理委員会(以下「苦情処理委員会」という。)を置く。
(略)
5 苦情処理委員会は、審議のため必要があると認めたときは、関係職員その他の関係人の出席を求めて意見若しくは説明を聴き、又はこれらの者から必要な資料の提出を求めることができる。

苦情処理委は関係者から意見聴取などをして区長に意見を述べ、区長は「速やかに調査等を行い、必要に応じて適切な措置を講ずる」と定める。

区は、他自治体の苦情処理委の先行例から、対象を区の業務と想定している。ヘイトスピーチを伴うデモや集会などの施設使用の可否や、性的少数者が公共施設を利用する際の対応に不備がないかなどが該当するとみている。

ただ、差別的な落書きや、動画による名誉毀損、入居拒否や就職差別など、区の業務以外の苦情も、専門調査員が調査して改善要請するなどの対応を検討している。

条例案は2017年9月に骨子が発表され、区民らのパブリックコメント(意見募集)や議会の意見を踏まえ、苦情処理委員会の設置などが盛り込まれた。

ヘイトスピーチをめぐっては、2016年に大阪市が、ヘイトスピーチをした人や団体の名前を公表できる抑止条例を制定した。差別的言動を「許されない」とするヘイトスピーチ対策法も、同じ年に国会で成立している。

NGO「外国人人権法連絡会」の運営委員で在日コリアンの金昌浩弁護士は「国籍や民族による差別の解消に踏み込み、苦情処理の仕組みを設けた条例は聞いたことがない。被害者が問題を訴える際の根拠になりうるもので、全国に広がってほしい」と話す。