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2018年02月14日 11時47分 JST | 更新 2018年02月14日 11時47分 JST

普及期に入ったVUIとメーカーそれぞれの戦い方。CES 2018

これからは「スキル」が主戦場に。

Las Vegasで開催された新年の恒例行事、家電見本市 CESに参加をしてきました

過去数年は、新しいIoTの提案や自動車メーカーの参加などで盛り上がっていましたが、去年は、"「IoTコマース」時代到来。700ものAmazon Alexa搭載製品が登場した今年のCES。" というポストに書いた通り、誕生から三年目を迎えたAmazonの音声UI (VUI : Voice User Interface)、Amazon Alexaを搭載した様々な家電製品が一気に発表され、ブースを出展していないAmazonがイベント全体をジャックしたと言えるCESでした。 今年はというと、昨年以上に展示や参加者などの規模は大きくなって盛り上がっている印象でしたが、「これは!」というような面白い発表や展示はほとんどなく、全体としては非常に地味な印象でした。 そんな中でも、会場全体を見回して改めて感じたのが「VUIがIoTのコアプラットフォームとして普及期に入っている」ということです。 スマホというカテゴリーにおいて、iOSとAndroidが築いたエコシステムにおいてわずか10年の間にアプリやコンテンツなど様々な巨大ビジネスが生まれたのと同様に、Amazon Alexaが切り拓き、Google Assistantが猛追する「VUIプラットフォーム」は、今後数年であらゆる業界の人々に大きなビジネスチャンスを提供することを強く感じました。 今回は、そのVUIの現状と今後、そしてその中で今後苦しい立場になることが見えているハードウェアメーカーの様々な戦い方について書きたいと思います。

横綱AlexaとチャレンジャーGoogle

今年もAmazonは、Alexaとしてブースは出していませんでしたが、下の写真(業務用ARグラス VUZIX M300)のように、目覚まし時計、食器洗い機、TV、クルマなど、ありとあらゆる企業のブースに「Amazon Alexa Enabled(Alexa入ってます)」のロゴが掲げられ、その浸透ぶりを改めて感じました。

「何機種に搭載されているのか」というデータは見つけることができませんでしたが、こちらのリストにある通り、数百というオーダーでその対応製品が発表されていました。 一方、昨年のCESでは全く存在感のなかったライバルのGoogleですが、一番上の写真にある通り、メイン会場の脇に巨大なブースを設置し、ロゴのついたつなぎを着た人を大量に会場中に配置するなど、Google Assistantを猛烈にアピールしていました

ブースの中には、スピーカー、スマホ、イヤホン、テレビ、時計などありとあらゆる製品にGoogle Assistant対応したものが展示されていました

これも全部Google Assistant対応製品です。これでも展示の一部です。こちらも数百種類というオーダーでしょう。 スマホの時は、ハードはAppleのみの「クローズなiOS」と誰でもハードが開発できる「オープンなAndroid」とそれぞれの陣営の戦略の違いが明確でした。 VUIでは、先行するAmazonも追いかけるGoogleも基本的にはオープン戦略を取っています。今後、技術(認識精度、言語対応、機能など)、ビジネスモデル(手数料、ブランドなど)、アライアンスなど、様々な軸でどのような戦いが繰り広げられていくのか、今後が注目です。

3900万人が使うAIスピーカー。これからは「スキル」が主戦場に。

ちょうどCESのタイミングで、VUIのコアデバイスであるAIスピーカーの市場調査結果が発表されていたので紹介したいと思います。 NPRとEdison Researchの最新の調査によると、成人のアメリカ人の16%、約3,900万人がスマートスピーカーを所有しているということです。 現在普及率68.9%まで浸透しているスマホとはまだ大きな差がありますが、iPhone発売から4年後の2010年の6,200万台という数字と比較すると、同じ4年目でかつ個人向けでないということを考慮すると、悪くない数字と言えるのではないでしょうか。 割合でいうと、先行するAmazonが11%、Googleが4%と約三倍の差が開いているという現状です。 今回のGoogleの真剣度合いを見ていると、Androidでの逆転劇のように、この数字を真剣に詰めていこうとしている気がします。 また、弊社の投資先であり、AIスピーカー向け分析ツールのリーダーであるDashbot社が、人気スキルのカテゴリーランキングを発表しています。 スマホでいうアプリに当たるスキルですが、その提供プロバイダーは急増しており、Amazon Alexa向けで昨年9月の時点で2万スキル、恐らく現在は3万スキルくらいに達していると思われます。 ランキングを見てみると、やはりゲーム、ニュース、教育、音楽と言ったシンプルなコンテンツカテゴリーが飛び抜けて人気があるというのが現状です。 ランキングの下位を見てみると、コネクテッドカー、コネクテッドホームなど注目されているカテゴリーも入っていますが、まだ実際に盛り上がるのはこれからということでしょうか。 ただ、これから数年の間に、スマホのおかげで急成長したInstagramやUBERのように、Aスピーカー、VUIならではの「キラースキル」がたくさん生まれ、大きなビジネスへと成長すると確信しています来年のCESでは、とりあえず「ハードにVUIを入れました」というところで終わらずに、VUIならではの利用シーン、スキルが多く展示されることを期待しています。
続いて、AmazonとGoogleがリードするVUI、IoTの業界の中で、ユニークな戦略を打ち出しているハードメーカー4社の取り組みを紹介します

① 独自VUI : Hyundai

年末に日本でも発売がスタートしたのでAmazon EchoやGoogle HomeでVUIを体験した方も多いと思いますが、話しかける際には常に「Alexa」もしくは「OK Google」と始める必要があります。 これは他のメーカーがVUIを導入した場合も同様で、例えばAlexa対応のSamsungの冷蔵庫に話しかける時には、「 Alexa, ask Samsung to order milk」というやや奇妙なことになります。自社のハードウェアにも関わらず、Amazonのブランドである「Alexa」と毎回いう必要があるのです。

そうした奇妙な状況を避けるために、韓国の自動車メーカーHyundaiは、LINEなども出資しているシリコンバレーのSoundHoundの技術を使い、独自のVUIを開発しているようです。Hyundaiの車であれば、「Hi Hyundai」と話しかけたいですよね。 大量のパートナーを集め、様々な言語の膨大な会話データをベースにVUIを日々トレーニングしているAlexaやGoogle Assistantに、精度や機能の面で勝ち目があるのかどうかは大いに疑問ですが、メーカーがとる戦略としては理解できます。

② サブブランド:LG

昨年いち早く「Alexa対応冷蔵庫」を発表するなど、Amazonの懐に入り込みVUI対応製品を商品化している韓国の家電メーカーLGですが、独自の戦略も取り入れています。 それが「ThinQ」というVUI製品のサブブランド戦略です。

VUIのテクノロジーはAmazonとGoogleに依存しつつも、その対応製品群には「ThinQ」という共通のブランドをつけ、展開しています。 ハードに呼びかける際には常に「Alexa, ask LG to turn on light」という形になってしまうのですが、スキルの部分で「ThinkQ」ブランドとして、うまく独自性が出せれば面白い戦い方になるような気がしています。 ただ、現時点でAlexaのスキルを見ると非常にレーティングは低いので、まだキラー利用シーンは見つけられていないようです(コメントをみるとまだそれ以前の問題も多そうですが)。

③ 多機能ハード:トヨタ

VUIという切り口とは少し違うのですが、激変する自動車業界でトヨタとFordが面白い展示をしていたのでご紹介したいと思います。 これは、今回トヨタが発表した「ダイナミックに変わるクルマ」「e-Palette」というコンセプトムービーです。

前の二つは、車、家電という既存のハードをVUIという新しいインターフェースで便利に使うというアプローチでしたが、e-Paletteは、大きなスクリーンとアプリケーションにより、ハードの機能自体をダイナミックに変えることができるプラットフォームにしよう、というアプローチです。 ただ、今回はあくまでコンセプト展示の段階なので、どう実装しようとしているのかは全く分かりません。「ピザ屋の後にホテルになると匂いが気になるよなー」とか細かいことを考えるときりがないですが、まったく知り合いでない4人が同時に席に乗るUBERの新サービス UBER Poolの進化版と考えれば良いと思います自動車というハードウェアは、これまでは一度購入すると、ログインもできずパーソナライズもできないデバイスでしたが、スマホのように、利用シーンやニーズに応じて、仕事場、お店、車と様々な形に変化するというのは今後必ず来る方向性だと思います。 自動車というカテゴリーは、「自動運転」という大きな流れは明確になったものの、大きな意味でのモビリティ(車、バス、自転車、トラック、など)の未来はまだまだどんな形にもなりうるという意味で、やはり注目の分野だと感じました。

④スマートシティ:Ford

そして最後は、Fordです。 こちらはFordブース全体の説明をしている動画です。

テーマは、「City of Tommorow」で、スマートデバイス、スマートカーの時代に、街自体も変わるという話です。 トヨタのe-Paletteは、「自動車がダイナミックに変わる」というコンセプトでしたが、Fordは「街自体もダイナミックに変わる」というコンセプトで、オンデマンドで現れる横断歩道、やダイナミックに切り替わる自動車レーンなどを展示していました。 他の自動車メーカーに先駆けて、「メーカーからサービスプロバイダーへの転換」を宣言したFordですが、IoT/スマートカーを突き詰めていく中で、ハードのスマート化だけでなく、それを支える「街自体の再定義」にも取り組まないといけない、ということが見えてきたというのが、今回の展示に現れているような気がします。
CESの元々の主役であった「家電」という枠組みでいうと、その次の主役は「VUI」ということで大きな流れは見てきたような気がします。 一方で、「あらゆるものがコネクテッドになる」IoTという視点で見ると、今回紹介したトヨタやFordのコンセプトのように、様々なステークホルダーが様々な形で関与する形態がまだまだ想定されます。 今年の後半には、IoTの世界にとって大きなインパクトを及ぼすであろう5Gもいよいよ始まります。 「地味な印象だった」と冒頭に書きましたが、ブログを通して書いて見て、また2019年のCESにも期待したくなってきました。