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2015年03月06日 15時32分 JST | 更新 2015年05月04日 18時12分 JST

ドイツの税務署に「人情」の言葉はない

ドイツの税務署は、ギリシャやイタリアと違って仕事が緻密で情け容赦ない。

Danita Delimont via Getty Images
Along with coins, banknotes make up the cash or bearer forms of all modern fiat money. With the exception of non-circulating high-value or precious metal commemorative issues, coins are used for lower valued monetary units, while banknotes are used for higher values.

ドイツの税務署は、ギリシャやイタリアと違って仕事が緻密で情け容赦ない。ブンデスリーガのサッカーチームや郵便会社の社長らが、資産を外国に隠していたために次々と税務署の摘発を受け、多額の税金を追徴されている。だが税務署の矛先が向けられるのは、富裕層だけではない。低所得者層もターゲットになる。

ドイツの駅や公園では、失業者や年金生活者がゴミ箱をあさって、ペットボトルを拾っているのをよく見かける。空のボトルをスーパーマーケットに持っていけば、現金に換えられるからだ。

エドゥアルド・リュニングさんは、健康上の理由で働くことができず、国から就労不能年金をもらっていたが、収入を増やすために、ゴミ箱からペットボトルを拾っては換金していた。彼はペットボトルを集めることで毎年7000ユーロ(91万円・1ユーロ=130円換算)の収入がある。サッカーのワールドカップのような大きなイベントがあると、捨てられるペットボトルの量が増えるので、年収が1万3000ユーロ(169万円)になることもある。

ところが、2013年1月に、税務署はリュニングさんに「4000ユーロ(52万円)の所得税を払え」と通告してきたのだ。さらに、「収入がある」ということで国の就労不能年金も削られることになった。

リュニングさんにとっては、自分のボトル拾いの体験を本にして出版したことがあだになった。この本を税務署の職員が読んで、「著者は収入があるのに申告を怠り、税金を滞納している」と判断したのだ。「ヤミ労働を行って、脱税している」と見られたのである。

ゴミ箱からペットボトルを集めるのは、生活に困窮した人々だ。彼らのなけなしの収入にも徴税するとは、ドイツの税務署は厳しい。

しかしこの国の徴税人にとっては「納税義務の前に、貧富の差、貴賎の差はない。国民は平等だ」ということなのだろう。理屈ではごもっともだが、いささか厳しすぎるのではないか。ドイツが厳格な法治国家であることを、感じさせるエピソードだ。

保険毎日新聞連載コラムに加筆の上転載

(文・ミュンヘン在住 熊谷 徹)

筆者ホームページ: http://www.tkumagai.de