ヨーロッパ・中央アジア地域経済成長:経済成長が失速 原油安とロシアの景気減速が地域全体の成長見通しに影

ヨーロッパ・中央アジア地域(ECA)は、原油安とロシアの景気減速が域内の多くの国に重圧となる一方で、ユーロ圏は、低い原油価格に加え、緩やかな景気回復の恩恵を享受している。

ヨーロッパ・中央アジア地域(ECA)は、原油安とロシアの景気減速が域内の多くの国に重圧となる一方で、ユーロ圏は、低い原油価格に加え、緩やかな景気回復の恩恵を享受している。世界銀行グループによると、昨年は1.8%であった同地域全体の経済成長は、2015年にはほぼゼロになると見られる。経済報告の発表は、世界銀行グループと国際通貨基金(IMF)の春季会合が開催される中で行われた。

こうした成長の鈍化は、原油安と、深刻な経済低迷により引き起こされたロシアの大幅な景気減速によるところが大きい。ロシアを除くと、同地域の2015年の成長率は2.8%になると見られる。

■原油安と地政学的緊張の影響

ロシアのGDP成長率は、2012年は3.5%、2013年は1.3%であったが、2014年はわずか0.6%であった。

今後のベースライン予測によると、ロシアは急速に景気後退に陥り、2015年はマイナス3.8%、2016年はマイナス0.3%に落ち込むことが見込まれるが、この予測は、原油安(50ドル~60ドルで推移)が今後も続き、地政学的緊張が直ぐには解消されないだろうという仮定に基づいている。

ロシアは、為替レートに柔軟性を確保した事で(この1年間で40%近いルーブル安)、国際収支の危機を回避出来ている。また、需要と生産を輸入に依存するのではなく、国内製品と輸出へと転換するリバランシングが進んでいる。

ロシアの景気減速と石油価格ショックは、南コーカサス、東ヨーロッパ、中央アジアの国々に、原油安、国外からの送金減少、貿易高の縮小を通じて、直接・間接的に打撃を与えている。2015年の成長率は、南コーカサスと中央アジアで2014年の半減、東ヨーロッパ(ウクライナを含む)も更なる景気後退に陥ると見られる。

■ユーロ圏との結びつきによる恩恵

欧州連合-中央・南東ヨーロッパ(EU-CSEE)の国々は、2015年も2014年とほぼ同じ2.7%前後で成長すると見られる。ごくわずかな伸びにとどまったそれ以前の2年間(2012年は0.5%、2013年は1.2%)に比べると大幅な改善だが、潜在成長率には依然としてはるかに及ばない。失業率は多くのEU-CSEE諸国でなおも10%以上が続き、消費の伸びも鈍い。

西バルカンの経済成長は、純輸出高の伸びが投資や消費の減少を相殺すると見られるため、2014年の0.7%からわずかに上昇して、2015年は1.2%となると予測される。経済状況が依然として厳しい西バルカンは、新規融資を受けられず、不良債権も域内で最高の16%以上となっている。

トルコの成長率は、2014年に2.9%まで減速したが、2015年はわずかに上昇し3%になると予測される。

ユーロ圏に近いこうした国々は、量的金融緩和政策によるデフレの危機減少、原油安、工業生産拡大の兆し、さらには、ギリシャ財政危機やウクライナ情勢をめぐる先行き不安の副次的影響が少なくとも今のところ限定的である事などから、全体的に消費者と企業の信頼が回復しつつある。

詳細は、プレスリリースをご覧ください。

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