
ファイル共有ソフト「Winny」の作者で天才プログラマーとして知られていた金子勇(かねこ・いさむ)氏が7月6日に死去したことが、関係者の証言でわかった。享年42歳の若さでの死にネット上では動揺が広がっている。
金子氏の死は、Winnyをめぐる裁判で弁護を担当した壇俊光弁護士が明らかにした。壇弁護士は自身のブログで7日、以下のように書いていた。
金子勇さんが、平成25年7月6日午後6時55分 急性心筋梗塞にて御逝去されました。心よりお悔やみ申し上げます。
(壇弁護士の事務室より)
ニュースサイトの「エンジニアtype」の2012年5月の対談記事によると、金子氏のプロフィールは以下の通り。
1970年生まれ。茨城大学工学部・博士課程へ進んだ後、日本原子力研究所へ。2002年には東大大学院の特任助手に任命、当時としては画期的なP2P技術を駆使したファイル共有ソフト『Winny』を開発。2004年、京都府警に逮捕される。容疑は著作権法違反幇助。係争中も研究開発を止めず、2005年、ドリームボート(現Skeed)の顧問に就任。同社の『SkeedCast』開発のけん引役となり、現在に至る
慶応義塾大学の環境情報学部長である村井純氏は「金子勇さんはソフトウェア開発者として極めて貴重なパイオニアでありヒーローでもありました 」と、追悼の言葉を送っている。また、金子氏が創業した株式会社Skeedも、以下のようなプレスリリースを発表した。
弊社ファウンダー兼CINO(Chief Innovation Officer)金子勇(元取締役)が7月6日(土)に逝去致しました。ここに生前のご厚誼に感謝し謹んでご連絡申し上げます。なお、通夜告別式は近親者のみにて執り行われるため、弊社への弔問並びに弔電、香典、供物、供花の儀は固くご辞退させて頂きますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
Winnyは映画ソフトなどの共有などで著作権違反の用途に悪用されるケースもあり、金子氏は2004年に著作権侵害行為幇助の疑いで逮捕された。開発が止まったことで、 Winny上では個人情報を流出させるタイプの悪質なコンピューターウイルスの温床になり、さまざまな社会問題が生じた。2011 年12月の最高裁決定では「幇助の故意はなかった」として金子氏の無罪が確定している。
国産P2Pソフトを独力で開発するなど余人が及ばない技術力を誇った天才プログラマーの死を悼みたい。
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