ホンダは9日、建設を進めてきた埼玉製作所寄居工場(埼玉県寄居町)での生産を開始したと発表した。国内自動車メーカーが海外に生産拠点を移す動きが続く中で、2011年以来の国内新工場稼働。朝日新聞デジタルは、日本の自動車メーカーが国内につくる最後の乗用車工場ともいわれる、と報じている。
ホンダによると、寄居工場では9月に発売を予定している新型「フィット」やミニバン「フリード」を生産。太陽光発電も取り入れ省エネにも配慮した最新鋭工場で、生産能力は年間25万台を見込む。ホンダは「世界のマザー工場として、世界の四輪車生産をリードする役割を担っている」としている。
7月10日の朝日新聞デジタルの記事によると、国内で完成車工場が稼働を始めるのは2011年1月に宮城県大衡村のトヨタ自動車子会社のセントラル自動車(現トヨタ自動車東日本)の工場が稼働して以来約2年半ぶり。(朝日新聞デジタル「国内最後の乗用車工場? ホンダ、埼玉で生産開始」2013/7/10)
自動車業界では、国内の生産拠点を海外へ移す動きが続く。背景には、国内需要の減少やリーマンショック後の円高基調、コスト削減などがある。
国内の生産台数は1990年(1348万台)をピークに減少傾向にあり、2007年には海外生産台数と逆転。2012年は国内生産994万台に対して、海外生産は1582万台にのぼる。(日本自動車工業会調べ)
ホンダは昨年9月に北米向けの主力のスポーツ用多目的車「CR―V」の生産を狭山工場(埼玉県狭山市)から米国の工場に移している。ホンダはピーク時の02年に約138万台を国内で生産していたが、昨年は102万台まで落ち込んでいる。(朝日新聞デジタル「国内最後の乗用車工場? ホンダ、埼玉で生産開始」2013/7/10)
NHKの報道によると、ホンダが新工場の稼働したことは国内で増産するということではないという。同じ埼玉県内にある別の工場の生産台数をおよそ半分に減らし、従業員もこの別の工場から移ってくるため、雇用がすぐ増えるわけではなく、ホンダの国内全体の生産水準は横ばいのままだからだ。
海外への生産拠点の移転が進む中、空洞化の懸念も指摘されている。
2012年12月に発表された内閣府のレポートによると、国内製造業の最近の海外生産移転は、生産コストの削減・逆輸入を企図した国内生産代替型から、現地需要の取り込みやシェア拡大を目的とした現地市場獲得型にシフトしている。現地市場獲得型の企業は、海外生産移転後に国内での売り上げや生産性の伸びも大きく、「攻めの海外生産移転が国内の企業活動活性化につながっている」と指摘している。
一方、海外移転にともなう人員削減のほか、下請け企業や地域経済への影響もある。
ただ、朝日新聞デジタルが「(ホンダの寄居工場が)最後の新工場になる可能性は十分にある」と報じたように海外に生産拠点をシフトしていく動きは今後も続くとみられる。
前述のレポートでは地域雇用の受け皿として、新しい産業が生まれる環境整備の必要性を指摘しつつ「海外生産の拡大を通じて、海外のリソースを活用しつつグローバルな需要を取り込み、成長に繋げていくことが重要」としている。
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