参院選の争点の一つでもある沖縄の米軍基地移設の問題で、沖縄訪問中の安倍晋三首相(自民党総裁)は、那覇市の街頭演説で「普天間の一日も早い移設を実現していきたい」と発言した。これは、日米政府が合意する名護市辺野古への移設を念頭に置いた発言だともいえる。地元の党県連は公約で「県外移設」をはっきりと明記しており、国と沖縄との意見の相違が改めて浮き彫りになった。
沖縄選挙区は、自民党が参院選で「最重点区」に位置づける。定数は1人で、現職は地方政党の沖縄社会大衆党の糸数慶子氏だ。首相は16日、県内のうるま市、沖縄市、那覇市、宜野湾市の4カ所で演説した。那覇市の県庁前演説には約2000人という大勢の人が集まった。各所の演説でもっとも強く訴えたのは、沖縄振興策だ。「沖縄の有効求人倍率はバブル期以来の数字になった。もっともっと高くしていきたい」「那覇空港はハブ空港にする。第2滑走路は予算をつけた」などと強調した。
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ただ、首相の狙いは、基地問題の進展だ。もし、自民党の優勢を受けて、激戦区の沖縄で議席がとれれば、年内にも沖縄県知事が判断する辺野古埋め立ての可否にも影響する。朝日新聞デジタルの報道では、政権幹部は「首相が沖縄に入るということは、日米で約束したことをしっかり進めていくということだ」と言い切っている。
ただ、普天間問題をめぐっては自民党の公認候補も、党県連も県外移設を主張しており、党本部とのねじれ状態で、今回の選挙で優勢が予想される自民党も、沖縄では苦戦している模様だ。朝日新聞デジタルによれば、自民党県連はそもそも首相の沖縄入りには乗り気でなかった。県連幹部は「首相が来れば、県民は『辺野古移設』への意思を感じるだろう」と懸念していたという。
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