キャラクタービジネス、国内市場は頭打ち クールジャパンとTPPで海外進出は?

「日本が世界に売れるビジネス」としてよく挙がるのがアニメなどキャラクター関連ビジネス。しかし国内市場は頭打ちです。TPPとクールジャパンで、海外に売り込むことはできるのでしょうか。
A Pokemon backpack from Nintendo at the Toy Fair 2011 on February 15, 2011 at the Javits Center in New York. AFP PHOTO/Stan HONDA (Photo credit should read STAN HONDA/AFP/Getty Images)
A Pokemon backpack from Nintendo at the Toy Fair 2011 on February 15, 2011 at the Javits Center in New York. AFP PHOTO/Stan HONDA (Photo credit should read STAN HONDA/AFP/Getty Images)
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2012年のキャラクターの版権、商品化ビジネスの国内市場規模は、7年連続で減少し、2兆3,075億円だった。矢野経済研究所が発表した。2013年もさらに微減となる、2兆2,800億円と予測している。

キャラクタービジネス市場はグッズなどに関わる商品化権と、出版や作品に登場する版権に分類されるが、2012年度の商品化権市場は1兆1,695億円(全体の50.7%)、版権市場は1兆1,380億円(全体の49.3%)でほぼ半々となっている。

大ヒットと呼べるような動きをみせたキャラクターに乏しく、また人気の高い有力キャラクターも全体的に低調であったことが影響している。

(中略)

幼児向けの特撮番組やTVアニメのキャラクターなどの定番キャラクターは安定した人気があるが、近年好調だったトレーディングカードは低調であった。また玩具以外のいずれの分野においても厳しい状況であり、前年度比でほぼマイナスと縮小傾向にある。

(矢野経済研究所「キャラクタービジネスに関する調査結果 2013」より 2013/07/26)

■クールジャパンで打って出るには問題山積

国内では頭打ち状態のキャラクタービジネスだが、政府は「クールジャパン」として海外に売り込みたい分野でもある。しかし、著作権保護期間がアメリカは70年だが、日本は50年、といった違いに代表されるように、著作権法、商標法、意匠法など法律が複雑に絡み、海外展開も容易でない。商品化権そのものを保護する法律も国際条約も現在は存在せず、海外に打って出るには、経営戦略を徹底的に「現地化」できる体力が必要なのが現状だ。

三井物産戦略研究所のレポートでは、こうした国際間の制度が海外進出の障壁となっていることを指摘している。

日本発、海外で売れる最大のヒットキャラクター、「ポケモン」の成功は、独自に現地化を進めてビジネス開発をしていた点が大きい。『巨人の星』もインド版では、現地でなじみのない野球ではなく、クリケットに置き換えられている。

玩具大手・タカラトミーは、人気キャラクターの「ポケモン」の玩具を、日本・アジア・欧米など世界市場で企画・販売する権利を取得し、ブランド戦略・商品化戦略・マーケティング戦略・ライセンス戦略を有機的に結合し、統一したビジネス戦略を効果的に展開することで、海外市場の開拓を進めている。

(中略)

現地化戦略では、日本の人気野球マンガ・アニメの『巨人の星』が、インド版『ライジングスター』にリメイクされて企画・制作・放映されている。『巨人の星』のアニメ化を手掛けた日本の制作会社とインド企業がそれぞれ分担して、原作の内容やストーリーの大筋を生かしながら、現地のニーズを柔軟に取り入れて共同制作している。

(ビジネスジャーナル「人気キャラ抱えるアニメ産業、出遅れた海外市場開拓のカギ」より 2012/12/31)

■知財分野「貿易赤字」の日本、TPPの知財分野交渉をどうするか

タカラトミーのような戦略が取れない、特に中小企業にとって、海外進出の足かせとなる制度面の不一致は、TPPの枠組みである程度解決することも可能だろう。しかし、日本がそもそも著作権分野に限定すると「貿易赤字」になっている点がネックになる。知財で稼ぐアメリカは、著作権保護期間70年をTPPにも盛り込み、貿易黒字を死守しようと動いている。キャラクターを売りたいが、現状、買いが先行している日本は、TPPの交渉をどうまとめるのだろうか。

小資源の日本の国是もまた、知財立国・コンテンツ立国のはずである。では、日本は知財の輸出国か。特許など技術分野では確かに代表的な輸出国だ。しかし、著作権などコンテンツ分野では大幅な輸入超過国。決して「収支がすべて」というわけではないが、日銀「国際収支統計」によれば、2010年の著作権使用料は年間5600億円もの巨額赤字で、特許の黒字をかなり帳消しにした。その大半は対米赤字である。

(Internet Watch「TPPで日本の著作権は米国化するのか〜続報:知的財産Q&A編」より 2012/01/20 12:11)

TPP交渉で、アメリカが保護期間の延長を迫ってくると想定されるのには理由がある。アメリカにとって、コンテンツは最大の輸出品目だからだ。福井弁護士は言う。

「2011年のデータで、アメリカが海外から稼いでいる特許と著作権の使用料は、合わせて約9.6兆円だといわれます。2013年の為替レートにすると約12兆円で、農産物・自動車を上回る大変な金額になります」

その象徴が、日本人にもおなじみの『くまのプーさん』なのだという。

「『くまのプーさん』は1926年の作品ですが、こういう古い作品での売り上げが非常に高いんです。数年前のデータで、『プーさん』が全世界で年間に稼ぐ印税が1000億円といわれます。これは、JASRAC(日本音楽著作権協会)が1年間で稼ぐ著作権使用料と同額です。プーさん1匹でJASRAC1個分。すごい額ですよね」

(弁護士ドットコム「TPPで著作権保護期間が死後70年に延長か【争点:クール・ジャパン】」より 2013/07/17)

日本の知財政策、クールジャパン政策について、みなさんはどう思いますか?ご意見をお聞かせください。

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