消費増税による医療報酬の引き上げは必要なのか

消費税の税率が8%になる予定とされているの来年4月にあわせ、医療機関に支払う診療報酬のうち、初診料や再診料などが引き上げられるかもしれないと言われているが、医療報酬の引き上げは必要だろうか…
doctor and nurse in Tokyo City
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消費税が上がったら、医療報酬も上がるーー。

消費税率の8%への引き上げが予定される来年4月にあわせ、医療費もアップするかもしれない。2年に1回、診療報酬の価格を見直す厚生労働大臣の諮問機関、中央社会保険医療協議会(中医協)は、消費増税に伴う医療機関の負担を軽くするため、医療報酬の一部を引き上げる方向で検討に入った。

医者にかかると医療費を払うが、その料金には、消費税が含まれていない。一方で、病院側は医薬品や医療機器などを仕入れる際に消費税を支払っているため、税金が上がる際に医療報酬も上げないと、医療機関に負担がかかることになる。

NHKニュースによると、「診療報酬は、消費税が導入された際や税率が5%になった際にも引き上げられていますが、特定の検査や診断などを対象としたため、恩恵を受けられなかった医療機関もあった。今回は、すべての医療機関で負担が軽くなるよう、初診料や再診料、それに入院基本料などの一般的な診療報酬を引き上げる案を軸に検討が進められる見通し」だという。

昨年3月に運営が終了した日本大学練馬光が丘病院は、年間1万9000人もの救急患者の診療機関であったが、経営不振を理由に撤退した経緯がある。人気があるのに撤退に追い込まれた理由は、、患者を受け入れれば受け入れるほど赤字額が増えるという現象が発生してしまうからだという指摘もある。

中医協による「平成24年度 医療機関の部門別収支に関する調査報告書(案)」によると、2012年に181の病院を対象に行った調査では、診療科群別収支のうち黒字だったのは、外科、眼科、耳鼻いんこう科、放射線科だけで、他は赤字だった。医療報酬引き上げの議論の際は、このデータも参考にされるようだ。

国に支援を仰ぐのではなく、民間の病院が競争を行わないと、経営の健全化は行われないとする意見もある。

東京大学大学院の渋谷健司教授はは、「国民の健康の増進」を進めつつ、若い世代の負担を軽減し、社会的弱者を手厚く保護するためには、医療費の支払いの仕組みも大きく変わらざるを得ない、と言う。そのためには、医療の「見える化」(保健効果の公表によるムダなサービスのカット・予防サービスの保険償還・成果に基づく支払いなど)と「自由化」(混合診療の解禁など)が必要だと説く。

また、渋谷教授は「国民の健康の増進が目的であれば、医療イノベーションの方向性も、例えば、抗がん剤開発からがん予防ワクチン開発のように、診断と予防が重視されるようになる」とも述べている。

m3.comによると、参院選後の22日に自民党本部で会見した安倍晋三首相(自民党総裁)は、「国民皆保険の堅持」や「混合診療の全面解禁の禁止」といった、現在の社会保障制度を維持するための方策には触れなかったという。

地域の病院の存在とわれわれの財布の状況。どちらも気になるポイントであるが、医療費が病院の収支状況で決められていいのだろうか。行政の補助金の程度や、渋谷教授が指摘する「医療の自由化」について、当事者である国民の間で幅広く議論されるべきではないだろうか。

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