メキシコ湾原油流出:罰金は「23秒で稼げる額」

2010年4月に起こった、米国史上最悪に数えられるメキシコ湾原油流出事故。爆発した施設の建設に関わっていたハリバートン・エナジー・サービシズ社はこの事故に関して、関連する証拠を隠滅したとして罰金が科せられることが決定した。
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2010年4月に起こった、米国史上最悪に数えられるメキシコ湾原油流出事故。爆発した施設の建設に関わっていたハリバートン・エナジー・サービシズ社はこの事故に関して、関連する証拠を隠滅したとして罰金が科せられることが決定した。

だが、その金額を同社が生み出すのに必要な時間は、読者がこの1文を読む程度、つまり数十秒だ。

ハリバートン社は7月25日(米国時間)、同社が請け負った、BP社所有の石油掘削施設「ディープウォーター・ホライズン」建設に使われた工事技術のコンピューター試験結果を隠滅したという1件の軽罪について罪を認めた

米司法省との司法取引で決められた罰金額は20万ドル(この額は、罰金額を算定する連邦法に基づいた法定上限額だ)。2012年の同社業績を基にすれば、同社が23秒毎に生み出す収益と同じ金額だ。また、3年間の執行猶予期間も付与される。

ハリバートン社は、20万ドルの罰金支払いに加え、連邦魚類野生生物基金(NFWF)に対し、5500万ドルの寄付を自発的に行なうと発表した。

ハリバートン社に対する刑事罰は、2010年に同社が実施したコンピューターモデリング試験に関するものだ。この事故では、ディープウォーター・ホライズンが爆発し、11名の作業員が死亡、大量の原油がメキシコ湾に流出した。パイプのコンクリート製保護管にひびが入ったことによって爆発が引き起こされたわけだが、試験は、その原因を解明するために行われた。この試験は、油田の構造的完全性を損ねる重大な技術的不備が、BP社の責任によるものかどうかを判断しうるものだった。

油田建設の際、ハリバートン社はBP社に対し、ケーシングと呼ばれるコンクリート製保護管を補強する重金属製パイプに、セメント固定前に鋼管を確実に油井の中央に位置させるために、21機のセンタリング装置を使用するよう推奨していた。しかしBP社はこれを無視し、同装置を6機しか使用しなかった

試験結果から、爆発を防ぐことができたであろう措置をBP社が怠ったということが明らかになった場合、ハリバートン社が法的責任に対して支払いを求められる罰金額が大幅に減少したとみられる。しかし、推奨通りの数のセンタリング装置を使用していたとしても違いはなかったことが、モデリング試験からわかった。そして、司法省によると、この試験を実施したハリバートン社の社員が、試験結果を破棄するよう指示を受けていたことが明らかになっている。

法律の専門家によると、今回の罰金支払いより重要なのは、ハリバートン社が刑事罰を認めたことだという。2010年の爆発事故の責任所在と損害賠償配分を決定すべくニューオーリンズで現在進められている民事裁判において、政府の主張の正当性を裏づけることになるからだ。

同事故に関しては、複数の原告が賠償訴訟を起こしている

なお、メキシコ湾事故以後も、原油流出事故は世界各地で頻繁に起こっており、以下のギャラリーではその一部をまとめている。今年7月21日には、タイのリゾート地、サメット島でも原油流出事故が起きている

[Ben Hallman(English) 日本語版:遠藤康子/ガリレオ)]

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