アサド大統領「化学兵器は使ってない」 欧米諸国の主張を全否定

シリアのアサド大統領は、政権側が8月にダマスカスで化学兵器攻撃を行ったとする西側の主張を真っ向から否定するとともに、フランスが軍事介入に踏み切れば「悪影響」及ぶ恐れがあるとして報復を示唆した。フランスの新聞フィガロのインタビュー記事の一部が2日、明らかになった。

シリアのアサド大統領は、政権側が8月にダマスカスで化学兵器攻撃を行ったとする欧米諸国の主張を真っ向から否定するとともに、フランスが軍事介入に踏み切れば「悪影響」及ぶ恐れがあるとして報復を示唆した。フランスの新聞フィガロのインタビュー記事の一部が9月2日、明らかになった。ロイターが伝えた。

アサド大統領は、政府軍も展開する場所で化学兵器を使用することは理にかなわないと主張。これまでアメリカ、フランスに対し、政権側が化学兵器を使用した証拠を提示するよう要求しているとし、「オバマ、オランドの両大統領はこれまで証拠を提示できていない」と批判した。

その上で「テロリストに金融、軍事支援を行った者はシリア市民の敵だ。フランスの対シリア政策がシリア市民にとり敵対的なら、フランスは市民の敵」とし、「フランスの国益上、悪影響が及ぶことになる」と警告した。

また、アサド大統領は「中東は火薬庫であり、炎は近付いている。爆発すれば、誰もが制御が利かない状況に陥る」と述べ、シリアへの軍事攻撃は、シリアだけでなく中東全体を混乱させるリスクがあることを考慮すべきとの考えを示した

■ フランス当局、アサド政権の化学兵器使用示す報告書を議員に提示

フランスは、シリアのアサド政権派が8月21日の「大規模かつ組織的な」化学攻撃を実行したことを示す非機密扱いの報告書を2日、議員に提示した。政府筋がロイターに明らかにした。

同筋によると、軍や外部の情報機関がまとめたこの報告書では、攻撃がアサド政権によるものだったことを示唆する点を5つ挙げている。

報告書には、攻撃が政権派の拠点から反体制派の拠点に向けて行われていることを示す衛星画像などが含まれているが、関係筋によると、政府軍はその後、これらの拠点を爆撃して証拠を消した。同関係筋は「これまでのように市民をおびえさせる目的で少量の化学物質を使った攻撃とは異なり、今回は拠点を奪還することを狙った周到な攻撃だった」とし、「国家や世界の安全保障を大きく脅かす」との見方を示した

■ プーチン大統領、G20でオバマ大統領に反撃へ

ロシアのプーチン大統領は、今週5、6日にサンクトペテルブルクで開く20か国・地域(G20)首脳会合(サミット)で、オバマ米大統領に反撃する機会をうかがうことになる。

ロイターによると、プーチン大統領は8月31日にウラジオストクで記者団に対し「過去10年間の出来事を思い起こす必要がある。米国は何度、世界のさまざまな地域で武力紛争を主導したか。それでたった一つでも問題が解決しただろうか。アフガニスタンやイラクでパートナー諸国が追求したとされる平和や民主主義は結局実現していない」と話した。

その上で大統領は「もちろんG20は正式な法的権限を持たない。国連安全保障理事会を代替しないし、武器の使用について決定もできない。しかしこの問題を協議するには良い場だ」と指摘。「アメリカはまたしても国際的な安全保障システムと国際法の土台を破壊したがっているのか。それでアメリカの国際的地位が高まるはずもない」と述べた。

また、プーチン大統領はイギリス議会の否決について、アメリカの緊密な同盟国の国民でさえ「ワシントンの外国政策の失敗」を見て結論を導き出している兆しだと指摘。「これらの国でさえ、国益と良識に従う人々、国家主権を重んじる人々がいる」と述べた。

■ ロシアはアメリカに議員団派遣、情報収集艦派遣も

ロシア連邦議会の上院議長を務めるワレンチナ・マトビエンコ議員は2日、ワシントンに議員団を派遣し、アメリカ議会に対シリア軍事介入を承認しないよう求めていく考えをプーチン大統領に伝えた

議長は「アメリカの議員と意見交換することができれば、互いをより良く理解できると思う」と指摘。

「アメリカ議会が最終的にバランスのとれた立場をとり、現在行われている強硬な議論に耳を貸すのではなく、シリアでの武力行使案を支持しないよう願っている」と述べた。

また、ロシアは2日までに、アメリカ軍によるシリア軍事介入に備え、情報収集艦1隻を地中海に派遣した。インタファクス通信が伝えた。ロシアはシリア西部タルトスに自国の海軍施設を維持しており、シリア情勢の緊迫化に伴い、既に周辺海域に艦艇を増派している。

■ NATO事務総長「アサド政権に責任がある」

北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は2日、シリアで8月21日に化学兵器が使用されたとの疑惑について、同国のアサド政権に責任があるとの認識を示した。

ロイターによると、事務総長は記者会見で「具体的な情報の提示を受けた。詳細に立ち入らないが、化学兵器による攻撃があっただけでなく、シリアの(アサド)政権に責任があると個人的に確信している」と述べた。

事務総長は「数百人もの男女、子供の生命を奪った、言葉で言い表せないこうした行動を看過できない」と指摘。「今後、化学兵器による攻撃を防ぐために、国際社会が決然とした対応を取る必要があると言える。座視し対処しなければ、世界中の独裁者に誤ったシグナルを発することになるだろう」と述べた。

■ 菅官房長官「アメリカ議会の議論を注視」

菅義偉官房長官は2日午前の記者会見で、シリアの化学兵器使用疑惑について「誰がこれを使用したかは引き続き関係国と連携をとりながら情報収集・分析をしているのが現状だ」と述べた。安倍政権は先月31日夜の日米外相による電話協議で、アサド政権が使用したと結論づけたオバマ政権の立場について説明を受けたが、断定にはさらなる情報が必要との見方を示したものだ。朝日新聞デジタルが伝えた。

MSN産経ニュースによると、菅官房長官は、政府としてアサド政権が使用したと結論づけたか問われ、即答を避けた。8月29日の会見では同じ質問に「具体的な情報もあるが、発言は控える」とアサド政権による使用を断定する情報を把握していることを示唆していた。ここへ来て発言をトーンダウンさせた形だ。

この問題ではケリー米国務長官が1日、アサド政権が神経ガスのサリンを使用したと明らかにしたばかり。にもかかわらず発言を後退させたのは、「イラクの例をみれば、政権側の使用を軽々に断定すれば禍根を残しかねない」(政府高官)との判断を強めているためだ。

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