オランダ・ハーグの国際司法裁判所は11月11日、カンボジアとタイの国境地帯にあるヒンズー教寺院遺跡「プレアビヒア」周辺地域についてカンボジア領と認定する判決を下した。両国の間で領土問題となっており、武力衝突で周辺住民の死者も出ていたが、今回の判決で雪融けに繋がる可能性が出てきた。時事ドットコムが以下のように伝えている。
国際司法裁判所(ICJ、オランダ・ハーグ)は11日、タイとカンボジアの国境紛争をめぐる訴訟の判決で、世界遺産のプレアビヒア寺院遺跡がある高台一帯は、カンボジア領だとの判断を示した。
(時事ドットコム「寺院遺跡一帯はカンボジア領=国際司法裁が判決」2013/11/11 19:31)
コトバンクによると、「プレアビヒア」は9世紀末に建造された遺跡でアンコールワットよりも長い歴史を持つという。
カンボジア北部,タイとの国境を走るダンレック山地中にあるアンコール時代の寺院遺跡。この地域は1904年フランス・シャム(タイ)協約によりフランス領カンボジアに帰属したが,第2次大戦中からタイが占拠し,その後両国の国境紛争に発展した。寺院は,9世紀末にヤショーバルマン1世が創建し,11世紀前半にスールヤバルマン1世が増築・整備したもので,ビシュヌ神を主神とする。西を正面とし,なだらかな傾斜の自然の地形を利用して参道(全長848m,幅12m)がつくられている。
(プレアビヒア とは - コトバンク)
国際司法裁判所は1962年、遺跡自体はカンボジア領と認定したが、周辺の約5キロ平方メートルの土地の帰属をめぐって両国が対立し、たびたび交戦してきた。2008年にはユネスコの世界遺産に認定されたことで、タイとカンボジアの周辺地域での武力衝突が激しくなっていた。newsclipでは次のように解説している。
2011年には砲撃・銃撃戦で双方の兵士、住民ら30人近くが死亡、100人以上が負傷し、周辺地域の住民10万人以上が一時避難した。紛争激化を受け、カンボジアは同年4月、国際司法裁にプレアビヒア周辺の国境未画定地域の領有権に関する判断を求めた。
(newsclip「タイ・カンボジアの国境紛争、国際司法裁が11月11日に判決」2013/10/27 19:03 )
ただし、カンボジアのフン・セン首相は、タイのタクシン派との関係は良好。そのため、タクシン元首相の妹が率いるインラック政権は、プレアビヒアをめぐる問題でカンボジアとの対立を望んでいない。バンコク週報が、10月の外相会談の結果を次のように報じている。
両国の外相が10月28日、カンボジア・ポイペットで話し合いを行い、いかなる判決が出ようと両国が関係改善に向けて努力を続けることで意見が一致した。
(バンコク週報「カンボジアとの領有権問題、判決後も関係改善で一致」201310/29)
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