日本のミャンマー投資が過熱 いまだ軍部の影響力が強いとの指摘も

日本の官民が開発を支援するミャンマーのティラワ経済特区で先月30日、工業団地造成の起工式が開かれた。同特区は最大都市ヤンゴン近郊にあり、アパレルや自動車業界などの外国企業の進出拠点として2015年の開業を目指す。
EPA時事

過熱する日本のミャンマー投資 儲かるのは軍部? 海外紙の指摘とは

日本の官民が開発を支援するミャンマーのティラワ経済特区で先月30日、工業団地造成の起工式が開かれた。同特区は最大都市ヤンゴン近郊にあり、アパレルや自動車業界などの外国企業の進出拠点として2015年の開業を目指す。

面積約2400ヘクタールの同特区では、日本の三菱商事、丸紅、住友商事と、ミャンマー政府及び民間企業他が出資して設立した共同事業体が、工業団地造成を行う。

式典後、茂木敏充経済産業相は、ミャンマーのトゥラ・シュエ・マン下院議長と会合し、「2015年の発足に向け順調に進展していることをうれしく思う。この課題について緊密に連携したい」と述べた。

【ミャンマー軍政による強制的な土地掌握の歴史が暗雲】

ティラワ計画は、半世紀の孤立主義から脱却するためテイン・セイン大統領が計画した、一連の国際工業地帯で最重要地とされている。ただ、前軍政が強制的に土地を掌握した歴史の影響は大きいとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。

立ち退きを迫られた住民からは、「計画に反対しないが、政府はコミュニティーの権利を奪った」との反感が根強いという。

同紙によると、1997年、当時の軍政が強制的にティラワの土地を1エーカー当たり20ドルで購入。住民側は、テイン・セイン政権下の不動産ブームのおかげで、今では1エーカー当たり何千ドルもの価値があると主張しているという。また、新政府による補償条件(代替土地と6年分の収穫収入)に同意したのは、地元当局に脅されたためだという声もあるという。

ティラワ経済特区運営委員長を務めるセ・アウン中央銀行副総裁は、ミャンマーで初めての先駆的な取り組みであることから、当局が完璧な対応をできないとコメントしている。

日本貿易振興機構(JETRO)のヤンゴン事務所長は、「もし論争が起これば、日本の民間企業の評判に影響する可能性がある」と懸念。「うまく決着することを望む」と語ったという。

【いまだ軍部の影響は大きいと指摘】

ミャンマーは人口約6000万人で、1人当たりの国民総生産は1日2~3ドル。さらに道路、空港、電力網など基本的なインフラも不十分な状況だ。2011年、長年の軍政から、テイン・セイン政権のもとで民政移管をすすめている。

新政権は中心政策として、海外投資の促進を掲げ、法規制を緩和。衣料製造業者などが、安い賃金に魅せられ進出してきている。

しかし、こうした企業の地元パートナーのほとんどは、軍が経営する会社だと、ニューヨーク・タイムズ紙は社説で指摘した。政府支出の4分の1は軍に流れているともいう。同紙は、ミャンマーが軍の独裁から軍の“縁故資本主義”へと移行していることを、アメリカ、欧州、日本など主要投資国は認識すべきと示唆している。

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