日本取引所グループ、東京証券取引所及び日本経済新聞社は2014年1月6日、新しい株価指数である「JPX日経インデックス400」の算出を開始した。
銘柄の選定基準に自己資本利益率(ROE)など投資家利益を意識した新しい項目が入っており、投資ファンドなどにおけるあらたなベンチマーク(運用成果を計る基準)になることが期待されている。だが過去に遡った値動きは従来の株価指数であるTOPIXと大差ないという見方もあり、標準的な指標として普及するのかは不透明な状況だ。
日本の証券市場には日経平均とTOPIXという二つの主要な指標が存在している。日経平均はもともと米国のダウ平均株価を参考に作られたもので、市場を代表する優良銘柄に対象を絞り、その株価を単純平均したものである(以前は日経ダウと呼ばれていた)。株式を分割などで見かけ上の株価が安くなった場合にはその部分を調整し、連続性を保てるように工夫されている。
一方TOPIXは上場しているすべての銘柄を対象とした平均株価となっている。すべての銘柄を同じ条件で平均してしまうと、時価総額の小さな会社の値動きが指数に過剰に反映されてしまうため、時価総額による調整が行われている。
日経平均は、市場を代表する銘柄の連続的な株価の動きを評価するのに最適な指標であり、一方でTOPIXは、今現在の市場全体の動きを見るのにふさわしい指標ということができる。両指標は基本的な考え方が異なっているため、役割分担が出来ていることになる。
今回算出を開始したJPX日経インデックス400は、基本的にTOPIXに近い考え方を採用している。ただし、複数市場の銘柄を組み合わせている点や、毎期の業績、流動性、ROE(株主資本利益率)、社外取締役の有無など、投資家にとってプラスとなる条件を満たした会社に対象を絞っている点がTOPIXと大きく異なっている。つまり、全市場を網羅した上で、投資家にとってメリットのある会社を選んでTOPIXを算出するとどうなるのかを示したのが新指標というわけである。
実際、新指標について過去に遡及して作成したチャートでは、2006年からの累積でTOPIXに比べて6%程度リターンが高くなっている。投資ファンドなどがこの指数を基準に運用を行えば、パフォーマンスの悪い銘柄は対象からはずされ、ファンドの成績が向上することが期待される。
実際、日本取引所などでは、年金ファンドがこの指標をベンチマークとして採用することを期待している。ただ過去7年の累積で6%というパフォーマンスの違いを大きいと見るか小さいと見るかは微妙なところである。スクリーニングの基準を厳しくして優良銘柄ばかりを集めれば、従来指標との乖離が大きくなりすぎる危険がある一方、甘くしすぎれば従来指標との違いが見えにくくなってしまう。
いずれにせよ新指標は、日経平均やTOPIXに取って代わるようなものではなく、投資ファンドのための新基準という意味合いが強い。資産運用の世界ではそれなりに普及するかもしれないが、大きな知名度を持つ重要な指標になる可能性は小さいだろう。
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