イランの穏健派ロウハニ(ロハニ)大統領が8月3日、就任から1年を迎えた。強硬路線だったアフマディネジャド前大統領の方針を転換、譲歩を重ねる「ほほえみ外交」で国際的な制裁の緩和に道筋を付けた。政権が進める開放路線は、このまま進むのか。
ロウハニ師は対話外交を重視している。アメリカとはイラン革命(1979年)後に直接対話が途切れていたが、2013年9月にオバマ大統領との電話協議を実現させた。11月には核開発の縮小について米欧など6カ国との核交渉で暫定合意にこぎ着けた。一部制裁緩和を引き出し、欧米からの制裁で低迷してきた経済も上向きつつある。冷え込んでいた近隣の国々との関係も、改善されてきた。
経済制裁の全面解除後のイラン市場を狙う各国の動きが活発化し、イランへの対応が軟化した。シリア内戦で対立していたトルコは、経済協力を積極的に働きかけ、敵対していたイスラム教スンニ派国家サウジアラビアも5月末、「中東地域の安定に協力したい」とイランのザリフ外相の招待を表明した。ファラハピシェ(編註:アラメタバタバイ大)教授は「オマーン、クウェート、カタールも緊張緩和に向き始めた。サウジとイランの接近はイスラム世界の平和に貢献する」と期待する。
(毎日新聞『イラン大統領:「自由な社会」道半ば 国際的孤立は脱却』より 2014/08/04 01:34)
■「自由の拡大」、変化はまだ見えず
一方、イランでは、FacebookやTwitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)への接続規制が前政権から続いている。政府は表現の自由を厳しく制限し、体制への批判には警察や民兵が目を光らせてきた。ロウハニ師は、選挙戦で「自由の拡大」を公約に掲げたが、変化はまだ見えない。
5月、曲にあわせてダンスする動画をYoutubeに投稿した6人が逮捕された。6月には、ワールドカップを応援するビデオに出演した若者3人が逮捕された。地元の警察署長はこの動画を「下品」であるとし、こういった行動に参加しないよう若者に強く呼びかけた。
「すべての政治犯の釈放」も公約だが、2009年の反政府デモで中心となった改革派のムサビ元首相らは自宅軟禁のままだ。
イランの大統領は行政機関の長に過ぎず、上位には最高指導者のハメネイ師がいる。ロハニ氏は司法や宗教に関わる問題では、ハメネイ師との摩擦を避けているとみられる。その結果、両分野に関わる政策では、改革が停滞しているようだ。これには「上ばかり見て国民を見ていない」(イラン人記者)と批判もくすぶっている。
(朝日新聞デジタル『イラン、進まぬ「自由拡大」 73の公約、実現は6項目 ロハニ大統領、就任1年』より 2014/08/03 05:00)
NHKのテヘラン支局長は、6月16日の番組で「外国人も増えましたし、以前は制限されていた欧米のミュージカルも上映されるようになりました。また、我々、外国メディアも、取材活動の制限が少し緩やかになったと感じています。ただ、そうした変化が、市民の生活にまではまだ及んでいない状況です」と報告した。
■かつての核交渉責任者
コトバンクによると、ロウハニ師はイスラム教シーア派の聖職者。保守穏健派の重鎮ラフサンジャニ師の側近として知られる。テヘラン大学を卒業した後、イギリスのグラスゴー・カレドニアン大学に留学し、博士号を取得した。イラン国軍副司令官、国家安全保障最高評議会書記などを歴任。2003~2005年には、最高安全保障委員会事務局長として核交渉責任者を務めた。
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