韓国サムスン、「軍隊的」企業風土の改革に四苦八苦 スマホ不振も追い打ち

韓国サムスン電子はスマートフォン(スマホ)の販売不振に見舞われている上、経営陣の世代交代も控え、より革新的な企業への脱皮を迫られている。従来の強みを維持しながら企業文化を刷新することは、一筋縄では進みそうにない。
Reuters

[ソウル 7日 ロイター] - 韓国サムスン電子

サムスンが先月末に発表した第2・四半期決算は、スマホのシェア縮小が響いて予想外の大幅な減益となった。下向きの流れを反転させられるような牽引材料はまだ見えない。

そうした中、サムスンの主要生産拠点である水原工場ではこの夏、もっと労働者に優しく、もっと創造的な企業文化を育むための取り組みが始まった。週末は従業員の短パン着用を認め、労働時間を柔軟化し、女性従業員は職が脅かされる心配なしに産休を取れるようになった。

同社は不必要に会社で過ごす時間を減らす「ワーク・スマート」哲学にも力を入れる。韓国国民の価値観が変化しているのに対応し、酒を飲みながらの深夜会議を止めるなど、無駄の排除に努めている。

サムスンに18年間務める社員は「夕方以降の会社飲み会は『1─1─9』になった。つまり酒は1種類、店は1カ所、時間は9時までだ」と明かす。「若い職員が居残るよう強制されることはなくなったし、年上の職員は部下の気分を害すまいと気を使うようになるだろう」という。

李健熙(イ・ゴンヒ)会長は5月に心臓発作で入院したままだ。後継者と目されている息子の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が昇進すれば新風が吹きこむかもしれないが、この巨大企業を抜本改革することは至難の業だろう。

4月にサムスンを退社した元製品管理幹部は「企業文化を変えるという点で、サムスンはある種の板挟み状態にある。解放感、創造性、イノベーションを育む文化を何としてでも取り入れる必要がある。しかしそれを実行すれば、今ある最も素晴らしい文化的資産、つまり光の速度で事業展開し、競争を制することを可能にしてきた軍隊的階層制度が失われるだろう」と説明した。

<自分探し>

サムスンの企業風土は硬直的でトップダウン型とされ、そこから脱皮するには時間がかかるとの声がある。

「ソニーVSサムスン」の著書がある韓国科学技術院の張世進・教授は「サムスンは一種の自分探しの真っ只中にある。『私はだれなのか、次に何を成せばよいのか』と自問している」と語る。

「サムスンは長期的にグローバルでオープンな企業になる必要がある。社員にもっと決定権を持たせれば統制力は失われるかもしれないが、長い目で見ればグローバルな視点で事業を運営できる人材の育成につながり、利益をもたらすだろう」と教授は続けた。

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CLSAコリアのShaun Cochran氏は「韓国の核心にある壁は、高齢者を敬い年功序列に重きを置く儒教文化だ。上司に刃向いにくい環境においてイノベーションを起こすのは難しいだろう」と話した。

<変化の兆し>

サムスンはこうした問題に取り組み始めている。李相勲(イ・サンフン)最高財務責任者(CFO)は7月、新たに導入した社内掲示板を通じて対話を促進する「グランド・ディスカッション」に着手し、めまぐるしく変化するハイテク業界にどう対応していくかを社員に問いかけた。この結果、4221件の提案やコメントが寄せられた。

同社はロイター宛ての声明で「サムスンは才能あふれる従業員の創造性、多様性を誇りとしており、彼らに成長の機会をもたらす環境を創造できるよう、たゆまぬ努力を続けていく」と表明した。

また同社の「クリエーティブ・ラブ」プログラムでは、追求する価値のある課題とみなされれば従業員が1年をかけて個々に、あるいはチームを組んでアイデアを練り上げることができる。同社によると昨年はこうしたプログラムを通じて約1万4000件の構想が生まれた。

(Se Young Lee and Sohee Kim記者)

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