『きょうは会社休みます。』が女性に支持された理由とは?【画像集】

恋愛経験ゼロの30歳“こじらせ女子”がヒロインとなり、イケメン俳優陣の出演と“壁ドン”など胸キュンシーンがちりばめられていることで、女性たちをざわつかせた『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)。スタート時こそ、その内容に違和感を覚える視聴者の声も多かったが、いつのまにか右肩上がりで視聴率は伸び続けた。
時事通信社

『きょうは会社休みます。』が女性に支持された理由 原作にはない奥手な女性の“リアル”

恋愛経験ゼロの30歳“こじらせ女子”がヒロインとなり、イケメン俳優陣の出演と“壁ドン”など胸キュンシーンがちりばめられていることで、女性たちをざわつかせた『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)。

スタート時こそ、その内容に違和感を覚える視聴者の声も多かったが、いつのまにか右肩上がりで視聴率は伸び続けた。そんな同作が女性に支持された理由を掘り下げてみると、原作にはなかったドラマオリジナルの“リアル”があったようだ。

◆“お仕事ドラマ”に近づいている

同作は、初回の視聴率が14.3%で、4話までは17%台をキープしたまま右肩上がり。その後はやや失速したが、最終回では16.9%を記録し、今期の女性をターゲットにしたドラマのなかでも上々の結果を残した。

もちろん、人気漫画が原作で、綾瀬のほか、福士蒼太、玉木宏といった人気の俳優陣が出演しているということ、流行りの“壁ドン”などを取り入れた胸キュンシーンがちりばめられていることが高視聴率に結びついたということは考えられる。

ただ、それ以外にも理由はある。当初はヒロインの設定が33歳から30歳に変わったことに違和感を覚える意見も多かったようだが、原作からうまくドラマ仕様に変えた部分が、視聴率が好調だった鍵になっているのではないだろうか。

原作と違うということで思い浮かぶのは、会社で過ごすシーンが増えていて“お仕事ドラマ”に近づいているところだ。日本テレビは、これまでにも綾瀬や篠原涼子を起用して『anego』や『ハケンの品格』、『ホタルノヒカリ』などの働く女性のためのドラマを水曜10時に放送してきた実績がある。その3部作とプロデューサーが同じということもあり、会社のシーンを増やしたことで、働く女性視聴者との距離を近づけることに成功しているのだろう。

また、綾瀬演じるヒロイン・花笑の後輩の大川瞳も、仲里依紗が演じると少しキャラクターが変わってくる。原作の瞳はゆるふわOLで、花笑に対してちょっとイジワルなところもあったが、ドラマの瞳は会議に出たりプロジェクトに関わったりとキャリア系サバサバOLに変化。一方、花笑も一般職から総合職への転向の誘いを上司から受ける。

原作では花笑はその誘いを断るが、ドラマでは引き受けることになる。また、福士蒼太演じる9歳年下の彼氏・田之倉の母親に挨拶をするときに、勘違いから花笑が「私が一生養います!」と高らかに宣言するシーンもあったりと、仕事にまつわる描き方の違いは大きい。

◆奥手な女性が生まれる条件としてリアル

さらに、花笑の同僚たちが繰り広げるサイドストーリーも付け加えられている。原作では5巻から登場して、ひっかきまわすだけひっかきまわす加々見のキャラクターは、千葉雄大が演じるドラマ版では“困ったちゃん”ではあるが実はいい奴というふうに書き変えられているし、原作には出てこないKAT-TUNの田口淳之介が演じる、お調子ものだけど実は頼りになる花笑の同期・大城のキャラに惹かれた視聴者も多いだろう。

原作には描かれていなかった、ヒロインと家族の関係性も興味深い。ヒロインの花笑が30歳まで彼氏がいなかったことは、単にこじらせていただけではない。ドラマのなかでは、花笑は家族とあまりにも仲が良く、いつも自室ではなくリビングで過ごしている。

だからこそ、恋愛のことを家庭に持ち込むのが照れくさく、なんとなく30歳まで彼氏がいなかったのだとわかるシーンがドラマには描かれている。こうした、家庭に色恋沙汰を持ち込めない感じは、奥手な女性が生まれる条件としてはリアルなのではないだろうか。

原作にはない妄想シーンもドラマの見どころのひとつだろう。例えば、あるときは田之倉がVシネマも真っ青なヤクザ男風になるシーンがあったり、あるときは時代劇風の妄想シーンがあったりと、毎回趣向がこらされている。こうしたシーンが浮いてみえないのは、ドラマ全体にどこかコミカルな味があるからだろう。妄想シーンが長すぎてイラっとするという意見もあったようだが、賛否両論は良い反応と見ていいだろう。

このように、ドラマ版の『きょうは会社休みます。』は、演じる俳優、女優のキャラクターに寄せた、原作とは一味違ったドラマになっているが、原作には原作の、ドラマにはドラマの良さがあったように思う。そして、その違いをチェックしながら観た視聴者もいて、それがドラマの盛り上がりに一役買ったのではないだろうか。

(文:西森路代)

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