アメリカのユタ州で、銃殺刑が再び合法化された。
ユタ州では、他の31州と同じく薬物注射が第一の死刑執行方法だ。しかし必要な薬物を入手できない場合の第二の死刑執行方法として銃殺刑を認める法案に、ギャリー・ハーバート州知事(共和党)が署名した。
3月19日の記者会見でハーバート州知事は、「これは私たちの望む手段ではありませんが、代替案として必要なのです」と語ったとNBCニュースが報じている。
アメリカでは薬物による死刑が一般的だが、薬品の供給が減少しており、問題になっている。死刑廃止論が強いヨーロッパの大手製薬会社数社が、2010年頃から死刑執行に使われる場合には薬物を販売しない方針を打ち出したため、薬物の価格が急上昇しているのだ。
代わりに動物の安楽死に使われる麻酔薬などが使われた結果、薬殺刑がうまく執行されず、長時間苦しんで死ぬ例などが続いたり、訴訟を起こされたりしていることから、薬殺刑以外の死刑執行方の合法化を検討する州が増えている。
ユタ州以外では、オクラホマ州も銃殺刑を合法化しており、アーカンソー州でも2015年2月に銃殺刑を合法とする法案が起草されている。
なおオクラホマ州の議員らは、これまで使われたことのない新しいタイプのガス室の利用も検討している。
アメリカの州のうち、一部の犯罪に対して死刑を認めている州は32州にのぼる(ただし、12州は5年以上死刑を執行していない)。
アメリカのNPO「死刑情報センター」によれば、8つの州が予備の死刑執行方法として電気椅子の使用を認めているほか、4つの州がガス室、3つの州が絞首台を認めているという。
ユタ州は2010年にアメリカで最後に銃殺刑を執行した州だ。AP通信によると、知事室のスタッフが3月20日、最後に銃殺刑が執行されたロニー・リー・ガードナー死刑囚の兄弟のランディ・ガードナー氏に面会したところ、ガードナー氏は銃殺刑の復活に反対の意を示し、「弾痕だらけ」の兄弟の体を見たときの苦痛を思い出すと述べたという。
銃殺刑を合法化する法案はユタ州議会の両院を3月10日に通過したので、3月23日に法案に署名したハーバート州知事は約2週間にわたって熟考した上で決めたことになる。
知事のもとには、銃殺刑復活に反対するメールも多数送信されたと報道されているが、それに対して知事の広報担当マーティー・カーペンター氏は「この法案に反対した人々は、そもそも死刑全般に反対をしている人たちです。しかしユタ州では、死刑はすでに合法化されています」と述べている。
「残念ながら、凶悪な殺人を犯した者は誰であれ死刑に値します。そのような判決が言い渡された場合には、私たちはまずは第一の手段である薬物注射を選択します。しかし、陪審が決定を下し裁判官が署名した死刑執行令状の内容を、行政機関は実行する義務があります」
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:佐藤卓/ガリレオ]
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