女性が輝く社会、銀座から考える-- 坂東眞理子さんらトークイベント@銀座三越

仕事、子育て、女性がいきいきと輝く社会を銀座から考えよう――。銀座三越でトークイベントが15日に開かれ、同センター理事長の坂東眞理子さんらが出演した。
「仕事と子育て」カウンセリングセンター

仕事、子育て、女性がいきいきと輝く社会を銀座から考えよう――。NPO「仕事と子育て」カウンセリングセンターなどは4月15日、銀座三越で「日本版ワークライフバランス」をテーマにしたトークイベントを開いた。同センター理事長の坂東眞理子さんらが出演、「制度を作るだけではなくそれを活用するため、私たちの意識を変えていくことが大切」などとの議論が交わされた。

■出演者

  • 坂東眞理子さん(NPO法人「仕事と子育て」カウンセリングセンター理事長/昭和女子大学学長)
  • 山内英子さん(聖路加国際病院乳腺外科部長/ブレストセンター長)
  • 渡部満さん(銀座通連合会4丁目支部長/書店「教文館」社長)
  • 司会:岡山慶子さん(NPO法人「仕事と子育て」カウンセリングセンター副理事長)
  • 中野渉 ニュースエディター(ハフポスト日本版)

    以下、敬称略

■男性の協力、アメリカでは整っている

岡山慶子(NPO法人「仕事と子育て」カウンセリングセンター副理事長) 坂東理事長、まずワークライフバランスの先駆者としてお話し下さい。

坂東眞理子(NPO法人「仕事と子育て」カウンセリングセンター理事長/昭和女子大学学長) 私が(オーストラリアの)ブリスベンで総領事をしていた時、日本は1997年の通貨ショックの後でマイナス成長という不況だったのに、オーストラリアは4%成長だったんです。でもオーストラリアの人たちは夕食を家族と一緒に食べ、日曜日は家族と一緒にバーベキューをします。その用意も皿洗いも男性の役割です。それなのに、経済成長はオーストラリアの方がよかった。日本の男性たちは家庭のことなんか考えないで働いているのに、マイナス成長って何って、とてもびっくりしました。

80年代にアメリカの大学で勉強をしていた時は、アメリカの製造業はダメだなんて言われていたんです。でも、90年代になってインターネットを活用した新しいビジネスが生まれて来ました。アイパッドなど新しいアイデアが出て、経済を活性化させているんです。

岡山 山内先生、子育てをし、アメリカで臨床医をし、そして日本に戻られました。日本とアメリカのいいところをお話いただけますか。

山内英子(聖路加国際病院乳腺外科部長/ブレストセンター長) 私はアメリカに15年おりました。アメリカに渡った時1歳の息子を連れて行き、息子が高校1年生の時に日本に帰ってきました。子育てをしながら、研究や臨床医、外科医として仕事もしていた時もありますが、アメリカは女性が仕事をするということについてシステムがとても整っていると思いました。

ただ、女性が仕事をするためには男性にも手伝っていただかなければできません。今まで、日本は男性が一生懸命働いて、ワークライフバランスがなかった。その点、男性の協力がアメリカ社会ではとても整っていると思いました。

感性と適応性は、女性にとてもあると思います。男女それぞれいいところ、向いているところがあると思うので、それが上手くフュージョンした社会というものがいいと思っています。銀座の街がこんなに感性よくいろんなことを取り入れて変化していくのは、女性がたくさん訪れ、女性の感性に合わせて変わっていくからと思うんです。

■父親、子育てにもっと関わって

岡山 渡部さん、この中央区が首都圏の中で最も子育て世代の人口の増えている街なんです。銀座といいますと、大人の街と思っていました。

渡部満(銀座通連合会4丁目支部長/書店「教文館」社長) 16年くらいになりますけれども、店の中に1フロア、子供と本の店「ナルニア国」という児童書の部門を設けました。最近は、お父さんが、お母さんと子供と家族揃って来店されることが増えています。それが一つの大きな変化です。

銀座は大人の街というイメージが強かったのですが、いまは、湾岸部に住居を求めて来られた子育て世代の方たちが多く来られています。特に土日になると、銀座通りのお客様の中に、お子様を連れた若い家族の方が非常に増えています。昔の銀座とはまた違うイメージが出てきていると思うんです。

坂東 私は、父親が子育てにもっと関わるような社会になることに全面的に大賛成です。一人で子育てをしている専業のお母さんたちによる孤独な子育ては大変です。ちょっとアドバイスしてくれる人が絶対に必要で、昔はそれが大家族、あるいは地域共同体にいました。近所のおじさんやおばあさん、お兄さんやお姉さんが子供をちょっと見てくれたり、お母さんをサポートしていたりしたんです。今の東京ではそれがとても弱体化しているので、意識して作らなければならない。そして、お父さんが子育てに携わると、第二子にチャレンジする率が明確に高いんです。

トークイベントの参加者ら。左から、渡部さん、山内さん、坂東さんら=4月15日、銀座三越

■医療現場、メディア...変わりつつある環境

岡山 山内先生も中野さんも、仕事と子育てを両立させるのが難しい職場にいらっしゃる。山内先生、そのあたりはどうでしょうか?

山内 医療、特に私がいる外科というのは、元々男性の比率が多かったんです。今は、外科の学会でも女性の外科医を支えるセッションだとか、いろんなものが起こってはきています。

日本社会の中でシステムの構築が少しずつでき始めているので、そこについてくる気持ちを整えていくことがとても重要だと思います。男性も声を上げて、ライフワークバランスとか、自分も子供といる時間が欲しいんだということを言っていいと思います。また、お互いに思いやりを持ったものを作り上げていく時期が来ているんじゃないかなと思います。

岡山 中野さん、メディアというのは夜遅くまで働いている職場のイメージがつきまといますが、どうでしょうか。

中野渉(ハフポスト日本版ニュースエディター) 今、私がいるハフィントンポストは理解があるところだと思います。ちなみに昨日、3歳の娘が39度の熱を出して、私は急に休ませてもらいました。なんとか代わってくれる人がいました。じゃあ新聞社はどうかというと、なかなかまだまだ古いところがあるんじゃないかというのが正直なところです。徐々には変わってきているとは思うんですけどね。

坂東 私も山内先生に伺いたいです。娘が医者なんですが、外科ではなくても大変なのに、ましてや外科の方たちはどうしていらっしゃるんだろうと。

また、私たちから見ると女性教員は、一時休業制度はあるし夏休みはあるし、いろいろな面でワークライフバランスがとれている職業だと思うんです。しかし、職場では、同じ仕事をしていても、男性の方が高く評価される。お母さんたちが男性の先生の方が好きだとか、そういった言いがたい女性に対する偏見というのは一朝一夕では消えていかない。制度を作るだけではなく、制度を活用できるようにする。そして私たちの意識を変えていく。これはすぐにはできないことです。皆があきらめないでやり続けないといけないんだなというのを実感しています。

山内 医療現場はもちろん患者さんの命がかかっていますから、穴を空けたりするわけにはいきません。日本では、患者さんに何かあった時に24時間必ずいつでもご自身を見ている先生が来てくださると皆さん思ってらっしゃると思うんです。ですが、その先生にも人生も家族もあります。その点、アメリカではきちんとシフト制をとっています。何かあったら誰かが見てくれる体制です。

■コミュニケーション能力を磨くことが重要

岡山 銀座はとても古くから海外に開かれていました。(書店)教文館さんは設立130年ですか。これからも海外のお客様が増えると思うんですが、その点はどう考えていらっしゃるのでしょうか。

渡部 銀座は明治以降、大きく発展した街なんです。その理由は、築地に外国人の居住地があって、いわば外国人の商店街だったんです。ですから、日本的なお店もある一方、近代化のショーケースみたいな場所でもあるんです。例えば時計屋さんや、パン屋さん、レコードもそうです。そういう近代になってから生まれたものを販売するようなことが中心になったんです。外国的なものに親和性のある街なんですが、特に最近は、中国や東南アジアからのお客様がとても増えています。

坂東 日本のいいところを発信したいと思います。日本にはいいところも悪いところもあって、女性たちが自分の能力を発揮していない点はあまりよくないのですが、いい点は、例えばとても清潔であるとか、とても安全であるとか、技術が進んでいて便利なものがたくさんあるとかがあります。それらを最前線の基地として銀座から発信していただきたいと思います。

また、女性たちは自分で使えるサブマネーを持っていてほしいと思います。男性はサブタイム、つまり自分のタイミングで使える時間を持ってほしいですね。子供のために使える時間も必要です。会社に全部吸い取られるんじゃなくて、時間を持っていることがとても大事だと思います。

渡部 私は経営者でもあるのですが、コミュニケーション能力というか、男も女もお互いに意見を通じ合わせるということ、基本的にそれがきちんとできていないと社会を作っていく力にならないと感じます。外国の方がお客様として来られる時も、コミュニケーション能力というのが問われます。コミュニケーション能力を磨かないと、21世紀の社会を作っていく力にならないと思います。

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