ビンラディンの潜伏先は、「突然やってきた」パキスタンの情報機関の男がアメリカに知らせた?ーー2011年5月2日、国際テロ組織「アルカイダ」の指導者ウサマ・ビンラディン容疑者が潜伏していたパキスタンで殺害された時、居場所を追跡していたアメリカの情報機関職員がパキスタンの情報機関職員から内部情報を入手した可能性がある。そのパキスタンの情報機関の男は、「突然やってきた」という。これが真実だとすれば、当時、ビンラディン容疑者を殺害した急襲作戦はアメリカ軍が単独で行ってたというホワイトハウスの主張と矛盾することになる。
NBCによると、情報機関の複数の情報筋が、アメリカ中央情報局(CIA)が2010年にパキスタン軍統合情報局(ISI)職員から情報を得たと語ったという。さらに、ISIはビンラディン容疑者の隠れ家を知っていたという。
NBCのレポートは、10日に発表されたジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏の記事の一部を裏づけるものだ。ハーシュ氏の記事によると、ビンラディン容疑者の急襲についてアメリカ政府高官が発表した内容は真実ではないという。また、パキスタンの情報機関職員も急襲を事前に知っていたという。しかしNBCのレポートによると、そのパキスタンの職員は、アメリカの政府高官がパキスタン政府に作戦を伝えたことに関して懐疑的で、ISIの上級職員がビンラディンの居場所を知っていたかどうかは確信が持てないと伝えている。
また、NBCは、CIAの主張に疑問を呈している。映画「ゼロ・ダーク・サーティー」で世に広まった定説では、拷問からビンラディンの隠れ家を特定するに至ったとされている。この主張には、2014年12月のアメリカ上院が行った拷問に関する報告でも異議が出た。
NBCのレポートは、ワシントンで上級高官に情報源を持つアドレア・ミッチェル氏との共同取材で行われた。この記事のニュースソースは「元諜報機関の高官」で、ミッチェル氏をはじめとする取材記者は配慮して元CIA長官や内閣級高官といった表現を控えている。
11日、アメリカ政府の高官はハーシュ氏の記事を否定した。ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は、NBCのレポートが「まちがいだらけ、まったくの嘘だらけだ」と語った。国家安全保障会議のネッド・プライス報道官も、「この話には多くの誤りがあり、根拠のない主張だ。たった一つの匿名情報源の主張に基づいているのは明らかだ。一つ一つの事実を確認すべきだ」と述べた。マイケル・モレル元CIA副長官も報道は「全て間違っている」として非難した。
ISIがビンラディンの行方をを知っていたと報じたのは、ハーシュ氏が初めてではない。ニューヨーク・タイムズのシャーロット・ガル特派員は2014年3月、情報機関がビンラディンの居場所を知っていて、彼を軟禁していたと報じた。
急襲作戦にパキスタンが関係していたのではないかという疑問は、オバマ大統領が殺害を公表して以来、パキスタンで大きな問題となっていた。アメリカ側の説明によって、パキスタンはアメリカ軍の急襲作戦で主権が損なわれ、自国の軍部が無能で二枚舌だったことが明るみになったとされ、国内の政情不安を引き起こした。その余波として、両国の関係は9・11以前の状態にまで悪化している。
ベン・ローズ大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は12日、ミッチェル氏から記事についてのコメントを求められたが、一切拒否した。「私は詳細について情報も記憶もない」と、ミッチェル氏が出演したMSNBCの番組で述べた。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。