「テレビがうちにやって来る」
新しいテレビを買うと、嬉々として、自宅に届くのを待ちわびたものだろう。テレビが家族の中心だった時代、誰もがテレビを見ていた。
しかし、今や私たちはスマホ片手にYouTubeを楽しみ、Facebookでまわってきた動画を見てはシェアする毎日を送っている。「テレビ離れ」という単語も生まれるはずだ。
とはいえ、SNS上で盛り上がるのはスポーツイベントやドラマ、アニメなど、テレビ番組もいまだに多い。テレビのコンテンツはやっぱり面白いということだろう。 コンテンツが溢れる時代、自分が欲している番組と出会うための検索の手間は増している。そんな中、効率よく映像を楽しむための糸口として、キュレーションアプリが注目を集めている。
その代表格であるソニーの「TV SideView」を使用しながら、ネット中継の第一人者である、ヒマナイヌ代表の川井拓也さん、外資系ドキュメンタリー専門チャンネル、ディスカバリーチャンネルの平田正俊さん、ジャーナリストのまつもとあつしさん(以下敬称略)、3人の識者にこれからのテレビについて話を聞いた。
左:ディスカバリーチャンネルの平田正俊さん
中央:ジャーナリストのまつもとあつしさん
右:ヒマナイヌの川井拓也さん
ライフスタイルの多様化は加速し、情報はかつてないほどに溢れ、それに追随するかのごとくソリューションが生まれる今、テレビの視聴スタイルはどう変わっていくのだろうか?
「テレビ離れ」と言われるけれど…
まつもと:私にとって高い情報鮮度を持つテレビは、映像の確認ができるメディア、現場の空気感を伝えられるメディアという位置付けです。それは時代の変化問わず、今もそうですね。皆さんにとってテレビはどのような存在ですか。
川井:僕は70年代生まれなので、子どもの頃はテレビの全盛期でした。でも20代でネットが登場し、自分で情報を発信するする楽しさにのめり込んでいきました。映像発信の障壁が下がってきて、今はテレビとネットがハイブリッドされている感じ。テレビに限らず僕たちの映像の見方は大きく変わりましたよね。instagramやvineなど、たった数秒の動画を楽しむメディアが普及してきました。
平田:私もほぼ同じ世代です。かつては生活の中心、お茶の間の一番いい場所にテレビがあった。時代を経てライフスタイルは激変しましたが、テレビの価値はさほど変わっていないような気がします。録画視聴が当たり前になったので見る時間こそ人それぞれですが、結局みんなテレビの話をしている(笑)。
まつもと:そうですね。平田さんは番組の作り手としてネットを意識されますか。
ディスカバリーチャンネルでアドセールス部 Vice Presidentを務める平田正俊さん
平田:私は、テレビには2つのミッションがあると考えています。「速報性」と「(好きな時間に見る)時間軸の提供」。普通ドキュメンタリーは後者を意識して作ります。例えばダイオウイカの番組は、きっと今見ても価値がありますよね。でも、以前、ある曲芸師がビルの間を命綱なしで綱渡りするドキュメンタリーを生中継したら、Twitterでトレンド入りしたんです。番組によってはネットによって、新しい面白さが生まれる。
川井:それはネットの生中継に対する期待感と同じですね。放送事故が起こるのではないかという、緊迫感を共有する楽しさ(笑)。
テレビ離れ=家に鎮座する「デバイス」としてのテレビ離れ?
まつもと:次に、「テレビ離れ」がなぜ起きたのかを考えてみましょう。私が理由に思うのは尺の問題。テレビはカットされた結果、情報発信者の意図とは違うことが伝わってしまうことが多々あります。かつての視聴者はそれが分からなかったけれど、ネット中継など尺を越えた映像が出まわる時代。「切り取らざるをえない」テレビの信頼性が揺らいだような気がします。
平田:それはあるでしょうね。加えて、私はライフスタイルの変化も大きいと思います。かつてはお茶の間に家族がいて、ご飯を食べながら同じ番組を見ていました。学校に行けば友だちとテレビの話題で盛り上がりましたし。今、みんなスマホを見ていますからね。
川井:僕は息子が「妖怪ウォッチ」に夢中になっているのを見ると、テレビの求心力は依然として強いと思います。みんな録画して見てるんですけど(笑)。でもSNSの時代になって、みんなテレビと自分の距離の遠さを感じている。フォローしてるネットの有名人の発言は信頼できるけれど、テレビから流れる芸能人の発言はちょっと上から目線で嫌、みたいな。テレビは1つ上のレイヤー、遠い存在ですよね。
ライブメディアカンパニーとして、数多くのライブ配信を行う株式会社ヒマナイヌの代表取締役 川井拓也さん
まつもと:「テレビ離れ」の「離れる」は“感覚的な距離”の問題なのか、“「テレビを所有しないという物理的なもの”なのでしょうか。
川井:物理的に離れるのは、テレビがあることが普通だった昭和時代の感覚でしょうね。今の若者は、そもそもテレビというデバイス自体に馴染みがない。そもそも家にないから離れようがないという(笑)。
平田:確かに今の20代に「テレビ離れ」と言ってもピンとこないでしょう。コンテンツに魅力は感じても、デバイスとしてのテレビには興味がないのかもしれない。私たちだって家でテレビを見る時間は減り、BDレコーダーに録画した番組をスマホに持ち出して通勤時に見たりしていますから。
川井:もっと進めば、「スマホとBDレコーダーがあればそれで充分」な時代になるのかもしれません。僕も、使い勝手の面では今のテレビに要求したいことが沢山ある。スマホを使った新しいテレビとの向き合い方ができるなら、むしろそっちを選びたい。
テレビが「家」から飛び出す時代、その時テレビメーカーは
まつもと:テレビとの新しい向き合い方を考えたとき、ソニーが提供しているスマートフォンアプリ「TV SideView」は大きなヒントを与えてくれるかもしれません。これは番組検索&録画予約アプリです。見たい番組をすぐに検索でき、スマホでの録画予約ができる。例えば、SNSで気になる番組を偶然見つけたら、即座に録画予約が可能です。また外出先から録画番組や放送中の番組を見ることができます。私も使っているアプリの1つです。
左:「TV SideView」のリモコン機能/右:番組表
平田:私が一視聴者として気になるのは「みどころピックアップ」機能ですね。「予約ランキング」では録画予約されている人気のある番組がすぐわかるのに加え、自分の嗜好に合った番組がレコメンドされるのは非常に便利です。多チャンネル時代にあふれる番組の中から見るべき番組を探す手間を省けるのは、すごくありがたい。一方で番組の作り手としては、どうしたらレコメンドされるようになるのかが課題になるわけですが。
まつもと:「予約ランキング」では登録ユーザーの録画予約数が表示されます。これはユーザーの期待値を可視化しているとも言える。私たちはテレビ番組を後から見るためには「ハードディスクなどの記憶媒体のコスト」と「視聴のための時間のコスト」という2つの投資を行っているのですが、録画予約数を参考にすれば、他のユーザーの期待値を元に、投資コストの最適化が図れます。
平田:ブックマークや録画予約した番組履歴などから好みに合った番組をおすすめしてくれるレコメンド機能はありがたいですね。
まつもと:多チャンル化・多番組化がここまで進んだ現在、ユーザーが見るべき番組を見つけるのはますます困難になっています。今求められているのはアルゴリズムの精度。ユーザーの趣味嗜好だけを追求するのではなく、「新たな発見を促す」ためのレコメンド機能も重要です。それに加えて、「TV SideView」だとニュースアプリのようなシンプルなデザイン性で、わかりやすい。
平田:番組の作り手としては、「外からどこでも視聴」に驚きました。製作者の著作権がしっかり保護された上で、今までにない自由な視聴スタイルを実現している。画期的だと思いますね。
「TV SideView」のようなアプリによって、テレビはどう変わる?
研究と並行してITを切り口に電子出版やアニメビジネスに関する調査・研究・執筆を行うまつもとあつしさん
まつもと:「TV SideView」のようなアプリがユーザーのテレビに対する向き合い方を変えつつあるのは確かですね。作り手には影響を与えると思いますか?
平田:そうですね。僕たちは、世界中のどんな言語を使う人が見ても感動できるドキュメンタリーを作り、それをグローバルに展開してきました。良い映像を作る。それだけじゃない時代に突入したんだなと思いました。膨大なコンテンツの中に埋もれない「選んでもらえる」ようにしなくては、と。
まつもと:いい意味でのプレッシャーですね。かつて「街頭テレビ」と言われたように、テレビはみんなで見るものでした。今はテレビ側からの働きかけがないから、私たちもリビングにわざわざ集まってテレビを見る価値を見出せずにいる。でも「TV SideView」の「予約ランキング」は、家族が安心して番組を見るための指標の役割を果たしてくれそうです。先ほど言った2つのコストは巻き込む人が増えるほど、満たすハードルが高くなる。でも、指標があるとある程度保証になるというか。「TV SideView」は、みんなでテレビを楽しく見ることを再定義してくれそうです。
川井:テレビってやっぱり最強の映像宝庫なんですよね。
まつもと:リビングで60分拘束されるなら、その価値がほしいというのが視聴者の率直な感覚でしょう。コンテンツを見る拘束時間に、それを探す手間。こういったアプリはそれを補完しているように見えます。つまり「TV SideView」は、離れているテレビとネットの結節点として機能しているんです。
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ともすれば対立軸で語られがちなテレビとネットだが、ユーザーの立場からすれば、テレビもネットもエンタテイメントを楽しむためのウインドウなのだ。テレビしかなかった時代が終わり、それ以外の窓を開くことができるようになった。どの窓から自分が見たい景色を見られるのか? それを導いてくれるのが「TV SideView」のような存在なのだろう。アプリとBDレコーダーによって、テレビはまだまだ進化する。
(執筆:薄井テルオ)
※文中に出てきた「どこでも視聴」をご使用になるには、最新の「TV SideView」アプリのインストールおよび、初回のみ課金(Android:463円+税、iOS:556円+税)が必要です。
価格は2015年4月3日時点の情報です。予告なしに改訂される場合があります。
※BDレコーダー本体とインターネット接続、および対応端末とホームネットワークで接続する必要があります。