中国株、止まらぬ下落 下支え策空振りで募る不信
中国株の下落が止まらない。中国政府が繰り出す株価下支え策は効果が見られず、8日は日本株を含むアジア各地の株も連鎖的に売られた。ギリシャ問題に続き、海外経済の不安定要因が表面化した。
8日、北京市内のある証券会社の営業店では、心配そうな顔の個人投資家らが、株価ボードを見守っていた。各銘柄の表示は、値下がりを示す緑一色。市内の会社員の張軍さん(50)は「政府の株価の下支え策が出たから月曜日に買ったら、またたく間に20万元(約400万円)近い損だ」とぼやいた。
この日、市場は異様な緊迫感で幕を開けた。4日以降、政府が次々と株価対策を打ち出したが、7日には上海株が早くも下落に転じた。8日は昼までに、証券当局が「目下の市場にはパニック心理がある」と異例の言及をし、政府機関は総出で下支え策を次々と発表した。中央銀行の中国人民銀行は「様々な手段で流動性を供給し、金融システム不安を抑える」と緊急声明を出した。国有企業の監督当局や保険当局は、市場の混乱が続く間は大手国有企業が持ち株を売りに出さないことを宣言。それでも、下落を食い止める決定打とはならなかった。
中国市場では「困ったら政府が何とかしてくれる」との心理がある。いま、その「信頼」は大きく傷つきつつある。止まらない株安の背景には、個人投資家の「狼狽(ろうばい)売り」がありそうだ。
中国の株式市場は昨年11月、人民銀が2年4カ月ぶりに利下げに踏み切ったことで急上昇を始めた。利下げで銀行の預金金利が下がるぶん、株式市場に投資することでもうけをねらう個人投資家が目立ち始めた。株式市場に新しく参加した人は約2千万人と見られ、その多くは借金をして株を買う「信用取引」にも手を出していた。
株価は、6月には1年前の約2・5倍にはね上がった。過熱感から当局が過度な信用取引を規制する姿勢を示すと、一転して下落に向かう。値上がりを見込んで借金をしていた個人投資家が返済しようと株の投げ売りを迫られ、値下がりが加速を続けている。
(朝日新聞デジタル 2015/07/09 05:04)
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