8月20日の軍事境界線付近での砲撃戦で緊張が高まっていた韓国と北朝鮮は25日、高官会談で合意に達した。さらなる軍事衝突はひとまず回避された。
会談は22日午後6時30分から始まり、断続的に中断をはさんで25日午前0時55分に終了した。会談はなぜ、異例の長時間にわたったのか。
1. 出発点が違った
韓国と北朝鮮は現状認識が異なる。韓国は8月4日の、非武装地帯(DMZ)での地雷爆発を北朝鮮軍の仕業と断定したが、北朝鮮はこれを否定していた。
また、北朝鮮は8月20日の砲撃も認めていなかった。韓国の基本的な立場は「地雷爆発と砲撃を認めて謝罪せよ」だった。しかし、対立が発生した原因の認識自体が違い、会談は当初から難航した。
2. 準備不足だった
北朝鮮は準戦時状態を宣言し、韓国はすでに米韓合同軍事演習(乙支フリーダム・ガーディアン)を始めていた。南北の緊張が高まり、北朝鮮は22日午後5時までに北朝鮮向け宣伝放送を中断するよう最後通告した。南北高官会談の実施が発表されたのは、通告の期限を数時間後に控えた状況だった。
24日、韓国の軍事境界線に近い坡州(パジュ)市を警戒する韓国軍
3. 軍事的緊張は続いた
会談進行中も軍事対立は続いた。韓国軍当局は22日、北朝鮮軍の潜水艦約50隻が基地を出航し、最前線で射撃準備態勢を整えた北朝鮮軍の砲兵戦力が倍増したと明らかにした。会談で韓国を圧迫するためと推測される。
会談直前の22日、米韓連合空軍も軍事力を誇示するためデモ飛行をした。聯合ニュースによると、合同参謀本部関係者は「韓国の安全保障を脅かすどんな挑発行為も容認しないという、米韓同盟の断固たる意志を示すデモンストレーション」と述べ、「北朝鮮が十分に脅威と認識できる経路で飛行した」と明らかにした。
4. 議題が多かった
南北は23日の会談中断後、「最近の事態の解決策と、今後の南北関係の発展方法について幅広く協議した」と明らかにした。地雷爆発、砲撃だけでなく、金剛山観光の再開や離散家族の再会などにも議題が拡大する可能性を示唆した。
韓国政府関係者は「南北首脳会談」を除くほとんどの懸案が議題に上ったと話した。安全保障筋の関係者は「今回の会談で、あらゆる問題がすべて話し合われたと聞いている」と語った。
北朝鮮は地雷爆発、砲撃のほか「離散家族再会事業の再開」を取り上げたという。韓国の朴槿恵大統領は、2014年に続いて2015年の光復節の演説でも、これに関する提案をしている。
(朝鮮日報より 2015/08/24 03:00)
5. 権限がなかった
韓国側は金寛鎮(キム・グァンジン)大統領府国家安保室長と洪容杓(ホン・ヨンピョ)統一相、北朝鮮側は黄炳瑞(ファン・ビョンソ)朝鮮人民軍総政治局長と金養建(キム・ヤンゴン)統一戦線部長がハイレベルの会談を続けた。しかし、当然だが最終決定は、朴槿恵大統領と金正恩第1書記が下す。
韓国の情報機関・国家情報院に26年勤務し、400回以上の南北当局者会談に関わったユ・ソンオク国家安保戦略研究院長は、朝鮮日報の取材に対し、以下のように内幕を話している。
会談場に座った南北の代表は、裁量権を持っていない。平壌やソウルで訓令(指針)を受けてから来る。小さな合意も、上層部の裁可なしにはできない。会談の場面は、ソウルと平壌の政権中枢にテレビ中継されている。これをモニターしながら、その時々で指示が与えられる。
――今回の高官会談も、朴槿恵大統領と金正恩第1書記が、すべてリアルタイムで見ているということか?
もちろん。公開されていないが、韓国は大統領府、国家情報院、統一部の担当部署が、そして北朝鮮は、金正恩氏と朝鮮労働党総政治局、統一戦線部がウォッチしている。このような場合、会談出席者は、あらかじめ決められた方針と違う発言ができない。実際、南北関係がこじれた場合ほど、裏方の当局者間の対話ルートが必要なのだ。
(朝鮮日報より 2015/08/24 03:00)
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。
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