“ネコノミクス”がメディアを席巻 空前の猫ブーム到来のワケとは?
今、史上空前の“猫ブーム”だという。書店に行けば、ドラマ『オトナ女子』(フジテレビ系)に出演していた猫の“ちくわ”をはじめ、スター猫の写真集から猫の長生きする飼育方法まで、各種猫関係の書籍がずらっと陳列。映画も昨年は『猫侍 南の島へ行く』『先生と迷い猫』『4/猫 ねこぶんのよん』などが公開され、先月からは『猫なんかよんでもこない。』も上映中、さらにこの5月には『世界から猫が消えたなら』が佐藤健主演で全国公開されるなど、今や各メディアを猫が席巻する勢いなのだ。そして昨年末から報道されているように、今年は犬の飼育頭数を猫が逆転するのではないかと言われ、まさに猫は日本一のペットになろうとしている。なぜ、猫がこれほどのブームになっているのだろうか?
◆ネコノミクスの経済効果は1年間で2兆3162億円
近年、猫が登場する映画、ドラマ、CMが急増している。先述の一連の映画もそうだが、ドラマでも先月からBSジャパンで放送されている『猫とコワモテ』が話題だ。俳優・田中要次がひたすら猫と戯れるだけのドラマで、セリフもほとんどない。ただ猫の可愛さを観るだけのドラマと言ってもいいだろう。
CMでも、昨年話題になったY!mobileの「ふてネコ」シリーズや、YKK APの窓シリーズに出てくるマッサージする猫、今年のライザップの「でぶネコ」からYouTubeで流れるジャパンネット銀行の猫だらけのCMなど、猫好きにはたまらないCMが増え続け、ここ1年で猫のCMは1.5倍になっているという。実際、猫関係グッズの売上などの経済的影響もうなぎ昇りで、2月5日に関西大学名誉教授・宮本勝浩氏が発表したレポート「ネコノミクスの経済効果」の試算によると、2015年の1年間でその金額は2兆3162億円にものぼるというのである。
またコンテンツのみならず、最近ではテレビで猫を飼っていることを公言する芸能人も多く、猫好き芸能人第一人者の爆笑問題・田中裕二をはじめ、北川景子、ローラ、前田敦子、指原莉乃、TOKIO・長瀬智也、チュートリアル・徳井善実など、錚々たるメンツが猫への愛を語り、SNSで猫自慢を繰り広げている。
◆遂に王者の座に君臨か? 猫が国民的ペットに
“猫好き”の日本人がいきなり急増している感があるが、確かに近年はペットとしての犬の飼育頭数も減少しており、昨年の10月現在では、全国の犬の飼育頭数は約991万7000頭、猫は約987万4000頭(一般社団法人ペットフード協会調べ)と、“絶対王者”である犬に肉迫しており、猫が国民的ペットの座を奪う勢いなのである。
「10年ほど前の犬ブームのときは、団塊世代夫婦が定年を迎え、子どもも自立して寂しいから犬を飼う、といったわかりやすい図式がありました。ただ10年経てば飼い主も高齢化するし、犬だって歳をとって寿命を迎えます。ペットの犬が減るのは自然な流れなんです。愛犬の散歩にしても、当初はいい運動でも年齢とともに負担になる。一方の猫は散歩する必要はないし、実は犬よりトイレが上手でキレイ好き。世話も少なくてすむし、単身でも飼いやすいんですね。そういった点も今の猫ブームにつながってるのではないでしょうか」(ペット専門誌編集者)
そもそも日本人は昔から猫好きである。「猫かぶり」「猫かわいがり」「猫なで声」など、猫が付く言葉や表現は多数あり、江戸時代の浮世絵にも猫が登場している。「招き猫」は現代でも縁起物として親しまれているし、日本発の国民的マスコット、「ハローキティ」や「ドラえもん」もやはり猫なのである。
◆爆発的な猫ブームは現代日本社会の写し鏡?
昨年から大人気のスマートフォン向けゲームアプリ『ねこあつめ』は、ただただ集まってくる猫を眺めるだけのゲームだったが、「Google Playベストオブ2015」にもランクインし、日本のみならず海外でも大流行。さらに、洋服の袖に入り込む猫の写真を飼い主がこぞってインスタグラム等のSNSにアップするようになると、インスタグラム上では「そでねこ総選挙」までが開催され、写真集にもなるなど、“そでねこ”も今、旬な猫になっている。
「かつての“なべねこ”のように、ブログやSNSから発信された猫が人気となって写真集まで出るというのは、もはや定番です。猫は自分勝手で気まぐれ。飼い主に媚びないけど、ときどき甘えてくる。そしてまたツンとしてどっかへ行ってしまう…という小悪魔っぽさが人気の秘密。他の動物に比べて自立した様子も、“好きなときに好きなだけ”という現代人の思考にあってるのかもしれません。そういった意味では、SNSで自己発信している人たち、自分は人とはちょっと違うとアピールしている人たちと似てると言えなくもない(笑)。SNSと猫って親和性が高いんでしょうね」(前出・編集者)
やはり今の猫ブームの背景にはSNSの普及があるようだ。熱狂的な猫好きたちがSNSを通じて様々なコンテンツを発信し活動することが、結果的に猫ブームを牽引しているのである。また上記編集者も言うように、“好きなときに好きなものを好きなだけ”といったSNS社会に生きる現代人にとっては、猫の習性である自分勝手さ、気ままさ、自由奔放さは感覚的にもマッチするのかもしれない。そういう意味では、爆発的な猫ブームも現代日本社会の“写し鏡”のひとつなのかもしれない。
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