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2016年04月01日 15時52分 JST

ブラジルの政治が大変なことになっている。

Mario Tama via Getty Images
BRASILIA, BRAZIL - MARCH 21: Anti-government protestors chant outside the National Congress on March 21, 2016 in Brasilia, Brazil. Protestors rallied against Brazilian President Dilma Rousseff amidst a massive corruption scandal in the country. (Photo by Mario Tama/Getty Images)

ブラジル各地で3月13日、ジルマ・ルセフ大統領の退陣を求めるデモが行われた。政権汚職を非難する内容で、参加者は全土で約300万人に上った。

数日後、国民の怒りはルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ前大統領にも向けられた。ルセフ大統領が17日、汚職事件の渦中にあるシルヴァ氏を、官房長官として指名すると決めたためだ。

ブラジルでは今、何が起こっているのか。汚職をめぐる現状をまとめた。

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ルセフ大統領(左)とルーラ前大統領。2014年10月26日撮影(AP Photo/Eraldo Peres)

洗車作戦

ルーラ前大統領は、当局が「オペレーション・カーウォッシュ(洗車作戦)」と名付けた、過去最大の汚職捜査の真っ只中にいる。「洗車作戦」は、国営の大手石油会社ペトロブラスをめぐる巨大なマネーロンダリングや収賄の一掃に焦点を当てており、ブラジルのビジネスリーダーや政治家の多くが、このスキャンダルに巻き込まれている。

ルセフ大統領は、洗車作戦では罪に問われてはいない。しかし、彼女の所属する労働者党(PT)の多くの党員が罪に問われており、さらにルセフ大統領自身も政府が国の財政赤字を隠蔽した疑惑で、弾劾の対象になっている。

議論を呼んでいる録音

ルセフ大統領がルーラ前大統領を指名した数日後、洗車作戦を指揮しているパラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事が、ルーラ前大統領と数人の政治家の電話の録音音声を公表した。その中にはルセフ大統領との会話も含まれており、モロ氏は「明らかに、司法妨害を持ちかけている」と主張。ルセフ大統領が、ルーラ前大統領を起訴から守るためにポストを与えたと、この録音が暗に示していると述べた

ルーラ前大統領の何万人もの支持者が集会を開いた18日、連邦最高裁のジウマール・メンデス判事は、ルセフ大統領によるルーラ前大統領の官房長官任命を差し止める暫定令を出した。モロ氏の判断に同意する内容だ。メンデス裁判官は判決の中で、「この指名は、ペトロブラスの汚職捜査の最中に、ルセフ大統領が前任者であるルーラ前大統領に追訴免除の機会を与える明らかな策略だ」と述べた

2016年3月18日、サンパウロで、ルセフ大統領と、ルーラ・ダ・シルヴァ前大統領への支持を表す他のブラジル人たち

ルーラ前大統領が抱える法律上の悩みの種

サンパウロの検察当局は9日、マネーロンダリングとサンパウロ州グアルジャの高級リゾートの海に面したマンションを隠し持っていたとして、ルーラ前大統領を起訴した。もし有罪なら、懲役13年の刑が科される可能性があるが、内閣入りすれば最高裁判所が認めた場合のみ起訴される。

しかし、結局ルーラ前大統領は、最高裁判所でこの事態に直面することになるだろう。22日夜、 連邦最高裁のテオリ・ザヴァスキ判事は、パラナ州連邦地裁のモロ判事とペトロブラスの汚職スキャンダルに対する前大統領の関与の捜査を進めているチームに対し、全ての情報を最高裁に提出するよう要請した。

ザヴァスキ裁判官は、ルーラ前大統領の会話の録音を公表したモロ氏の決断に関しては、懸念を示している。ルセフ大統領も含めた政府高官を裁くことができるのは、連邦最高裁判所だけだからだ。ザヴァスキ裁判官が決断したことで、最高裁が正式な行動方針を決定するまで、モロ氏は間違いなく前大統領の捜査から退けられることになる。

汚職事件がブラジル経済の低迷と重なったこともあり、ルセフ政権への抗議はここ数カ月でエスカレートしている。ルセフ大統領は、広がりつつある党派間の溝を埋める架け橋とすべく、ルーラ前大統領を政権に引き入れようとしていたとしているが、彼女を批判する人たちは懐疑的だ。

リオデジャネイロのコパカバーナビーチでの抗議運動で、囚人服を着たルセフ大統領とルーラ前大統領が描かれたポスターを持つ抗議運動家。

弾劾か、クーデターか

モロ判事は、その粘り強い捜査で国民から高く評価された。しかし、ルーラ前大統領の会話の録音を公表したことで、批判も浴びている。法曹界の中には、これを違法だと考える人もいる。

リオデジャネイロ弁護士会の元会長でPTの議員であるワディー・ダモウス氏は、ルーラ前大統領の指名に対するモロ氏の対応について、「憤慨している」と、ハフポストブラジル版に語った。「大統領が閣僚を指名する権利が疑われる国は、ブラジルをおいて他にありません」。

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パラナ州連邦地裁のセルジオ・モロ判事 2016年3月9日(REUTERS/Rodolfo Buhrer)

ルーラ前大統領の閣僚の座をめぐる法的論争は、長引くことが予想される。ルセフ大統領には今後、今以上の苦難が待ち受けている。弾劾訴追は数カ月続く予定だ。19日の世論調査では、ブラジル人の68%がルセフ大統領の弾劾を支持すると回答。ルセフ大統領は、この弾劾訴追を、彼女の反対派による「クーデター」だと呼んだ。ブラジル国会の下院議会は4月末にルセフ大統領の答弁を聞いた後、この弾劾を進めるかどうかの採決を行う。下院の採決後には、上院が最終決定を行う。

ルセフ大統領への批判は、汚職スキャンダルの他にもある。ブラジルが1901年以来の最悪な不景気に陥ろうとしている事実にも立ち向かわなければならない。

この記事は最初にハフポストブラジル版に掲載され、その後ハフポストUS版に翻訳・掲載されたものを翻訳しました。